油断と代償
時折背後を振り返りながら、足跡を追跡していく。
内心、フィンやフレールがエクセターのことほめてくれたのが嬉しかった。
だからこそ、これでミスをする訳にはいかない。
気を引き締めて追跡を続けていくと、どんどんその痕跡が最近の物になり...そして。
「いるな、ちょうど五匹だ」
「まだこっちには気がついていないようですね」
ついに見つけ出すことが出来た、数は5体。情報通りだ。
「隠れながらうまくやれば先手を打てるかもしれないな」
フレールの視線に、行動で答えるため奇襲の準備を整える。
「みんなはここで待機して、エクセターが横まで回って攻撃を仕掛けるから
そのタイミングでフレールが突撃、ミリューはフレールの死角の支援を。
エクセターは陽動攻撃の後に前進して挟撃、弱ってるやつから潰す」
ボディランゲージを交えて、仲間たちに手短に指示を飛ばす。
そうであると信じる人は少ないけど、これでも元小隊長、30人以上の部下を抱えていたのだ。
戦況の分析・指示はお手の物、それが指揮官型の強み。
が、そこまで考えたところでフィンになんと指示を出せばいいのかがわからなくなる。
よくよく考えて見れば受け持った部下の中に、純粋な魔術師というのは居なかった。
つまり、なんと命令すればいいのか全くわからない。ノウハウがないのだ。
ちょっと困ったような表情を浮かべながら、多少申し訳無さそうにフィンに告げる。
「フィンは...フィンは臨機応変に!」
そうとだけ告げて、そそくさと草むらに隠れつつ位置へと移動を始めた。
大した距離じゃないけど、これなら挟み撃ちとは行かなくても二方向から攻撃ができる。
射撃位置へと移動を完了し、SMLEのサイトを覗く。
サイト越しに、リーダーと思わしき狼の姿が直線上に浮かぶ。
「戦いの基本...奇襲の時は...」
今まで教わったことを、口に出して復唱する。
「奇襲の時は...まず...頭を潰す。
指揮系統を混乱させて、後はかたっぱしから始末する」
これが基本。
合理的な理論を合理的な結果と変えるため、引き金を引いた。
乾いた発砲音が響いた、それと同時に首筋から血を吹き出してリーダーがばたりと倒れる。
それが戦闘の合図だ。
フレールが突撃したのを確認してから茂みから飛び出して、迅速に次の目標を狙い撃つ。
次の目標はフレールの攻撃によってすでに負傷していた狼だ、動きは早いがはっきり言って外すような目標じゃない。
再び発砲音が響くと、ドサリと狼が倒れる。これで残るは3体。
「残り3!」
そのセリフを言った直後にはもう2体倒れていた。
つまりはもう残りは1体。勝利が確定した。
そう思ってしまったから、心に油断があったのかもしれない。
もっと早く気がつくべきだったのだ、リーダーの死体が見当たらなかったことに。
首からドバドバと血を流す狼が、フィンに向かって突撃していく。
しまった、仕留め損ねた。そんな後悔を感じるのと体が動くのはほぼ同時だった。
「がっ...あぐぅ!大丈夫...?フィン?」
痛みに表情を歪ませながらも、背後の仲間の無事を確認する。
かばうように回り込み突き出した右腕からは、ドシャドシャと血が噴き出している。
跳びかかった狼の口に、敢えて右腕をあてがうことで噛みつかせ攻撃に割り込んだのだ。
だが、突き刺すような痛みが右腕に広がってゆく。
狼は血走った目で、今すぐお前の腕を引きちぎってやるとでも言うほどに睨みつけている。
このままでは本当に、フレームごと引きちぎられてしまうかもしれない。
「くっ!離れろ!
こいつ噛みちぎる気だ...!」
空いた左手でダガーを取り出し狼の顔に何度も刃を突き立てる。
だが、いくら攻撃を行っても全く怯む様子がないどころかその牙の破壊力は徐々に増してゆく。
みちみちと、繊維が少しずつ引きちぎられる音がした。
駄目だ、このままじゃ本当に腕を引きちぎられる!
反撃を、反撃をしなければ。
しかしダガーの威力じゃダメだ、右手に持っているSMLEは今は使えない。
拳銃で撃ちぬくか?いや、まだ温存したい。これは切り札になる。
仲間に助けてもらうか?いや間に合わない、その時にはもう腕がずたずたにされている。
だったら...!
ほんの瞬間に、様々な行動パターンを予測する。
私はお互いに頭突きが出来そうなほど近い狼の先、その先の樹に目をつけた。
もっと言えば、木から突き出た鋭利な樹の枝に。
左手を腰の位置までダラリと落とす。
傍目には、私が力を失って諦めてしまったと思われるかもしれない。
だが、その逆だ。私はこの瞬間という瞬間に闘争本能を燃やしている。
それはこんなところで死んでたまるかという、生存本能でも有ったのだろう。
カチリ、左手でダイヤルを回した後、ベルトのボタンを押す。
その瞬間、私は...私と狼は宙を舞っていた。
これはチキンベルトの効果だ。
その効果により私は、私の腕をガッチリと噛んだ狼は前方20mへと吹き飛んでいる。
そして飛んだ先には待ち構えるように樹が、天然の針のように尖った樹の枝が待っている。
「喰らえぇぇぇぇ!」
体をグルンと捻るようにして、右腕を狼ごとスイングする。
そして着地、いや衝突と同時にスイングした狼の胴体が鋭利な樹の枝に串刺しとなった。
流石にこの一撃は堪えたのか、圧力が緩んだところでとっさに顎をこじ開けてぬけ出した。
狼はそびえ立つ樹の枝に、まつで百舌鳥の早贄のように串刺しになっている。
恐ろしいことにまだその目は闘志を失っていなかった。
しかし、それは私も同じこと。
コートの上からでも深い傷になっているのが分かる右腕に、
再び力を込めてSMLEを構え...そして引き金を引いた。
狼の眼差しは頭部ごと弾丸によって砕け散る。
もう、狼が動くことはないだろう。
「戦いの基本...奇襲は頭を潰す。
ちょっと意味合いは違うけど、まぁ正解だったね」
右腕の傷を抑えながら振り返り、
きっと残りの狼を問題なく撃破しているだろう仲間の元へと歩み始める。
「みんなー!大丈夫?」
あまり心配をかけないように、努めて笑顔で帰還した。
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PL・フリーダムに動かせていただきましたァン!
・ダイス・
エクセター
隠密判定 2d6+8 Dice:2D6[3,1]+8=12 成功 平均に+1
戦闘結果ダイス 1d6 Dice:1D6[2]=2
フィン
雪虫@フィン ≫ 隠密判定(レンジャー) 2d6+2 <Dice:2D6[1,2]+2=5>
雪虫@フィン ≫ シチュエーション戦闘ダイス 1d6 <Dice:1D6[1]=1>
結果、戦闘ダイスは「3」
あまとう@エクセター HPダメージ 2d6 Dice:2D6[4,6]=10
弾丸消費 1d6-2 Dice:1D6[5]-2=3
雪虫@フィン ≫ MPダメージ 3d6 <Dice:3D6[4,4,1]=9>
一瞬の油断ということで仕留め損ねたリーダー狼がフィンに襲いかかる
と、その瞬間にエクセターがかばいに入って負傷(HP10ダメージを全て受ける)
MPの消費は最初の1発と負傷した狼を狙った2発、最期のトドメの射撃で3発目。
それぞれクリティカルバレットを3発で消費MPは3(MP軽減)、弾丸も3消費。
リザルト「エクセター」
HP23/33 MP12/16 残弾数20/24
このような感じになりました。
MPはフィンが活躍できるように、6ポイントほど残しておきますね!