一瞬の油断

 フィン(雪虫) [2016/05/03 21:55:46] 
 

 エクシーの先導でしばらく進むと。

 >「いるな、ちょうど五匹だ」

 >「まだこっちには気がついていないようですね」

 遠目からでも、5匹の狼の群れが確認できた。さいわいなことに僕たちは彼らの風下に立っている。

 「......普通の狼が3頭、ひとまわり大きい灰色の狼は奴らよりすばしっこいので気をつけてください。大きいのがリーダーですね。群れを統率してます」

 僕は分かるかぎりのことをすばやく3人に伝えた。

 >「隠れながらうまくやれば先手を打てるかもしれないな」

 フレールさんがエクシーに視線を流す。それを受けとめたエクシーは、まぎれもない指揮官の顔をしていた。

 >「みんなはここで待機して、エクセターが横まで回って攻撃を仕掛けるから
   そのタイミングでフレールが突撃、ミリューはフレールの死角の支援を。
   エクセターは陽動攻撃の後に前進して挟撃、弱ってるやつから潰す」

 そこまで言って、一瞬はっとした表情になる。

 >「フィンは...フィンは臨機応変に!」

 「わかった」

 なんとなく感じられた。きっと、彼女の蓄積してきた戦術プランに「僕」を組みこむパターンが存在しなかったんだ。
 僕はできるだけ落ちついた表情になるように気をつけて、うなずいた。

 エクシーは草むらに身を隠しながらすべるように群れの横手にまわりこんでいく。
 フレールさんとミリューさんもそれぞれの武器をかまえた。

 僕はハーフマントのすそを払った。右手を一度ぎゅっとにぎってから、目の高さにかざす。
 こちらにはこれだけの戦力がそろっている。先手もとった。なら僕にできることは。

 風が止まった。

 エクシーのガンの発砲音とともに、ひときわ体の大きな狼が頸から血を吹き上げながらどさりと倒れる。

 フレールさんが馬を駆り、群れへと突っ込んでいく。ミリューさんはその動きを見ながら弓に矢をつがえた。

 僕は右手首の腕輪を通してマナを集中させ、空に魔法文字を描くと同時に発声をした。
 第三階位の衰、「麻痺」の魔法。これを、同時に2匹の狼に向けてはなつ。
 狙いはたがわず、灰色の狼と、群れの下っ端らしい狼の1頭を魔法の影響下におくことができた。
 こいつらを足止めできたら、十分なはず。 

 間合いにはいったフレールさんの剣が脚のにぶった灰色の狼を薙ぐ。間髪いれずに発砲音がふたたび響き、茂みから飛びだしていたエクシーが奴にとどめを刺したことを僕は知った。

 >「残り3!」

 エクシーの声が響く。

 あとは「麻痺」でろくに動けない狼1頭と、唐突にリーダーと仲間を失って混乱する狼2頭。
 ミリューさんの矢が飛んだ。フレールさんが剣をふるう。

 統率を失ってうろたえる狼2頭があっというまに倒れた。のこる1頭は自由にならない足であがいている。

 勝った。僕はその様子を見てそう思った。だから反応できなかった、大きな狼が、エクシーに狙撃されたはずの群れのリーダーが、首から血を流しながら僕めがけて突っ込んでくることに。
 目が合った。そこにあるのは純粋な殺意。

 ひゅ、とのどが鳴るのと、目の前に赤がひるがえるのは同時だった。

 >「がっ...あぐぅ!大丈夫...?フィン?」

 「っ...!エクシー!」

 僕はただ、彼女の名を叫ぶ。狼の顎にその右腕をみずから喰いこませ、勢いを殺して僕を救ってくれた。
 エクシーの右腕からは大量の血が噴き出している。

 狼をエクシーからもぎはなさなければ。僕は第四階位の「稲妻」の動作に入ろうとした。けれど、その向こうにこちらに駆けよるフレールさんの姿が見えた。このまま雷撃を放てば、彼を射線に巻き込んでしまう。
 だったら、第五階位「絶掌」......。僕は右手にマナを集中させ、エクシーに駆よろうとした。その数歩がひどく遠い。

 >「くっ!離れろ!
   こいつ噛みちぎる気だ...!」

 苦しげなエクシーが叫んだ。その声に打たれて僕は立ちすくむ。

 エクシーはダガーをいくども狼の顔に突き立てた。狼はひるむどころかますます牙を深く喰いこませていく。
 みちみち、ぶちぶちと嫌な音が聴こえた。

 「エクっ......」

 その瞬間、エクシーと狼の身体が宙にはじけ飛んだ。

 >「喰らえぇぇぇぇ!」

 起こったことを理解するよりはやく、叫びとともに中空でエクシーが体をひねり、前方の樹の幹に狼を叩きつけたのが見えた。
 彼女はそのまま着地したけれど、狼の体は樹の幹に磔になっている。大きな体から、とがった枝がまがまがしく突きだしていた。

 ぼろぼろの右腕にも構わず、エクシーは銃をふたたび構え......狼の頭部が乾いた音とともにはじけた。

 しばらくその様子を見届けていた彼女が、右腕をおさえながらふり向いた。

 >「みんなー!大丈夫?」

 「エクシー!腕は!?」
 
 ごめんね、ありがとう、僕が油断したせいで、そんな大けが、だいじょうぶなの、ごめん、痛いよね

 言葉たちは胸のなかで渦をまいて、うまく出てきてくれない。 
 僕はただ、彼女に走りよると、背負い袋からヒーリングポーションをとりだし、栓をあけてその右腕の傷にふりかけた。
 傷はあっというまにふさがっていく。でも、彼女が受けた痛みは消えたわけじゃない。

 「......ありがとう、エクシー。ごめんね。痛かったよね。それに......コート、いたんじゃったね」

 こんなときなのに間抜けなことしか言えない。

――PL(雪虫)より―――

あまとうさんの戦闘描写についていこうという努力のみ見ていただければ!(すみません......) 

フィンは戦闘突入直後、グレイウルフ、ウルフ(1体のみ)に対して、数拡大2倍の真語魔法3レベル「パラライズ」を使用します(消費MP3*2=6)。

【戦闘後フィンのリザルト】
HP35/35 MP34/40

戦闘終了後、エクシーにヒーリングポーションを1本使用します。
 
【判定結果】

雪虫@フィン ≫ エクシーにヒーリングポーション r20+5 <Dice:R20[4,5:7]+5=12>

回復量12なので、エクシーは全快です!かばってくれてありがとう!