出会えた
>「全速力で飛ばしていくぜ!
落っこちたりするんじゃねえぞ、エクセター!」
そう叫ぶと、フレールさんは馬の腹をけった。ふたりを乗せた馬は矢のように走りだす。
>「まったく......兄さんは相変わらずですね」
ミリューさんはため息をつくと、僕に声をかけた。
>「まあ、仕方ありませんね。
僕も置いていかれないよう飛ばしていきます。
申し訳ありませんが、フィンさんも気をつけてくださいね」
「は、はい」
僕はできるだけ背中をぴったりとミリューさんにくっついて、鞍につかまった。
物語がどこまで動いているのか、今の僕にはわからない。
カレンさん、スールさん、無事でいて......。
耳元でひょうっと風が鳴る。規則的な駆け足の音と、振動。振りおとされないように僕は必死だ。
>「あれが目的の城だ!
スール、今行くからな」>「あそこにフィンさんたちのお仲間もいらっしゃるのでしたか?
でしたら、そちらもようやくお会いできますね」
「はっ、はい、ようや、く」
僕は返事としてうなずいたけど、馬の振動にあわせてがくん、と首が上下しただけにみえたかもしれない。
※ ※ ※
>「ねぇ!フィン!アレろせ」
>「おぉい、エクセター! それにフィンじゃないか!!」
「あ、あわ!?ろ、ろせ」
ロセウスさん、とは発音できなかった。やっとのことで大声の聴こえたほうを見る。鎧につつまれたおおきな体が、ぶぅんと斧をふりまわしているのが見えた。
そのうしろに、ロセウスさんよりはいくぶんほっそりした影も。きっとネスさんだ。
よかった、ふたりとも無事に出会えた。
けれど、そこに仲間がいることをミリューさんに告げるまもなく、僕たちの乗る馬はフレールさんの馬のあとをついて駆けていく。手くらいは振りかえしたかった、でも手をはなすのがこわい。
鞍のでっぱりを両手でつかみながら、なんとか顔だけはそっちにむける。僕が気づいたと、わかってもらえただろうか。エクシーが手を振っているからだいじょうぶかな。
>「よし、到着したぞ」
僕がきょろきょろしたせいで目を回していたら、すぐにフレールさんのそんな声が聞こえた。
ミリューさんも手綱をひいて馬をとめる。
到着......。どこにだっけ。そうだ、お屋敷だ。僕は建物を見あげる。「お屋敷」というよりは、ほとんど「お城」だ。
青い瓦に灰色の壁。すこしだけ陰鬱な雰囲気をかんじる。ポチの視界で見たとおりの外観がそこにあった。
そうだ、ポチ。
(ポチ、もどっておいで)
そう呼びかけると、ポチはかるい羽ばたきの音とともに木々のあいだから姿をあらわし、僕の左手にとまった。
「ありがと、ポチ。おつかれさま」
右手でポチの頭から背中をなでる。ポチはくるんとまるい目を見開いて僕を見ている。
わずかな時間だったけど、その目を見ていたらふしぎと気持ちがおちついた。
肩ごしに顔をあげてミリューさんを見る。
「ミリューさん、お城のカレンさんのほか、あとふたり、僕たちの仲間が来ているみたいです。さっきの、すごい声で僕らを呼んだひとたち...」
僕はなんとか最低限のことをミリューさんに伝えた。
※ ※ ※
>「おや、あれは......」
ミリューさんがそう言っていかめしい門のほうへと顔をむけた。
>「フレール兄さん、ミリュー兄さん!
早いうちにこっちまで来れたのね!」>「ああ、この二人のおかげでな」
兄弟とおなじ、栗色の髪をした女のひとが、重たそうな扉をひらいて駆けだしてきた。
はつらつとした印象のひとだった。このひとがスールさん。青ひげの花嫁にちがいなかった。
>「あら、あなたたちは......?」
「あ、はい」
僕がことばにつまっていたら、エクシーがぴょこんと進みでてあいさつをした。
>「こんにちは!えっと、エクセターはフレールとミリューと一緒に狼を退治したよ!
それでえっと、ここにカレンが居るって聞いたから会いに来たの!」
元気にそこまで言ってから、エクシーはふと不安げなようすで僕に小声で話しかける。
>「ね、ねぇ。ご挨拶って、こんな感じでよかったのかな...?
...最初は、はじめましてって言う方が良かったかなぁ?」
「そ、そうだね、どうしたら...いいんだろうね」
『ルキスラ【火竜の手羽先亭】所属、【暁の繭】のフィン・ティモシーといいます』
この自己紹介がなんの意味ももたないことに今になって思いいたって、僕はあわてた。
ここは童話のなかなんだ、ええと、たしか僕とエクシーとカレンさんは「遠くからふしぎな光にとばされてここに来て、帰り道がわからない」ということになってたはず。
それは嘘じゃない。帰り方、のほうなら、なんとなくわかるんだけれど。
「あっ...あの、はじめまして。フィン・ティモシーといいます」
僕はミリューさんに馬からおろしてもらってからというもの、ふわふわと雲をふんでいるような足もとによろめきながらもおじぎをした。
「僕たち、ちょっとその、迷って...しまって。遠くからここにとばされてきて、帰り道がわからなくて、その...。フレールさんとミリューさんのお手伝いをしてから、いっしょにお城まで連れてきてもらったんです。僕たちの仲間が、きっとここにいると思って。カレンさんっていうひとなんですけど...」
しどろもどろ。僕は困ってスールさんを見あげた。と、そのうしろに水晶色の影がみえた。
「カレンさん!よかった、」
無事ですか!?そう叫びたいのをぐっとこらえる。青ひげの城で花嫁といっしょにいたのだろうカレンさんは、それでも一見したところかわった様子はなかった。
そんなふうに話していたら、金属鎧の音がちかづいてきた。
こんどこそ僕はちゃんと手をふって、ここだと合図する。
「ロセウスさーん、ネスさーん」
そしてみんなのほうへ向きなおる。
「ふたりも、僕たちとおなじくここへ迷いこんだんです。僕たちは仲間で、いっしょに、えと、ひとびとの困りごとを解決する仕事をしています」
とりあえず、僕らはみんな、無事だ。ほんとうによかった。
ここから物語がどう展開するのか、まだわからないけれど。
ともかく、再開をよろこんだあと、僕は兄弟ふたりをみんなに紹介した。
「こちらがお兄さんのフレール・オルドルさん、こちらが弟さんのミリュー・オルドルさんです。こちらのお城のご主人の花嫁スールさんの、お兄さんたち、です。ふもとの街に住む騎士様で、今も狼退治の任務をこなしてから、こちらへやってきました」
ちょっとぎくしゃくした紹介にこめた僕の想いを、みんながどうか察してくれますように。
そう、このふたりは「花嫁のふたりの兄」。
物語のクライマックスで青ひげを殺す、重要な人物だ。
台本のままに物語はころがっていくのか、それともぜんぜん違う道すじをたどるのか。
もういちど、空へそびえるお城を見あげた。
――PL(雪虫)より―――
合流成功!
このおふたりはとってもいいかんじのお兄さんたちですがいちおう物語の配役としては......。
というお話をさきにPTメンバーと共有します。
フィンとしては、ともに戦った戦友でもあるし、信頼して話合えるひとたちだと思っているので敵対したら悲しいです。
いろいろと、今後の展開しだいですね!
>飛龍頭さん
占瞳ですが、知力を+できるもののほうがありがたいという気がします。城内の探索もだいじになりそうですし...。
なにより、きっとだれかが「あの扉」を開けなきゃいけないような気がするので。開けちゃったら、すこしでも状況を詳しく知る必要があると思うので...。