ないしょ話
いったいどこに行ってきたのか、なにを見てきたのかとたずねた僕に、ロセウスさんはこう答えた。
>「俺達が行ったのはここではない場所だ。
......すでにジャンヌは死んでいる。そして神に召し上げられ、魂を導く仕事をしている。
俺達はジャンヌから一つの依頼を受けた。
――ジルの救済だ」>「救済の方法は問わん、最悪――肉体からの救済でも構わんそうだ」
僕はかるく息をのむ。
カレンさんもいくぶん慎重な口調で問いかけた。
>「救済、ですか‥。つまり、柵(しがらみ)から解き放って欲しい、ということですよね。
ジャンヌさんがどういったつもりでいらっしゃるのかは解りませんけど、ジャンヌさん自身は、ジルさんに対しての気持ちはどうだったのでしょう?」
ロセウスさんはすこし困ったようすでこう言った。
>「......あー、非常に言いにくいがな。
ジャンヌに確認したところ、かつても今も、ジルに対してそういう感情はないそうだ」
「そ、そうですか......」
片想い。きっとそういうことも、あるだろう。気の毒だけど、それはしかたないんじゃないかな。
でも、この日記......。これをふまえてしまうと、『気の毒だなぁ』の色あいが変わってくる気がする。
>「まあ、カレンと俺やネスみたいな関係だったのだろう。
......フィンはちょっと違う気がするのはなんでだ?」
なんでだろう。僕は首をかしげた。ともかく、ジャンヌにとってジルはカレンさんとロセウスさんやネスさんとおなじような関係の相手、ということで僕は納得した。
>「私たちが立ち寄った、というか迷い込んだ場所を離れる事が彼女のお役目上
できないらしくてねぇ ジャンヌの望む形に完遂できるのか分からない。という
条件付きで引き受けてきたんだよ」
ジルの救済、か......。ジルが救われなければならないような何ごとか...たぶんよくないことが、きっと起きているんだ。
考えこむ僕にむかって、ロセウスさんがつけたした。ジャンヌなら一緒に来ているぞ、って。
「ええっ!?ど、どこですか!?」
むやみにきょろきょろしてしまう。でも、もちろんそれらしき人影は見あたらない。
そんなやりとりを経て、僕はネスさんに日記をかえした。
>「ここにはみんないるのだから、きみ一人で抱え込まなくてもいいんだよ」
僕はあまりよくない顔をしていたみたい。ネスさんはそう言って、おだやかな手つきで僕の頭をなでた。
>『フィンどうしたのー』
『おなかすいたのかー』
『お歌うたう?歌う??』
『ネスも元気だせー』
ムリアン達も元気づけようとしてくれる。僕はほほえんだ。
カードをあやつるムリアン達に、エクシーが興奮しているみたいだ。
>「すごい!ねぇ!フィンー!みてっ!ロセウスー!ロセウスー!カレンでもいいけど!
ほらっ!ほら動いてる!動いてるよ!ネスもエクセターも触ってないのに!」
あ、そっか。ちがうんだ。エクシーにはムリアン達の...妖精たちの姿が見えないんだった。
ふふ、エクシー、びっくりしてる。僕はその様子をにこにこしながら見まもった。
※ ※ ※
>「はぁ、疲れたぜ。
着いたら休めるかと思ってたんだけどな」
自分で運んだ椅子にどかっと腰かけて、フレールさんがため息をつく。
>「もう、そんなこと言わないでよ、兄さん。
兄さんの好きな料理足しておいてあげるから」
反射的にすみません、と言いそうになった僕よりはやく、スールさんがそう言ってくれた。
ミリューさんも運んできた椅子でくつろぎながらふふっと笑いをもらしている。
仲のいい兄妹なんだな。ぽつりとそんなことを思う。
>「それにしても......ロセウスだっけ?
でっかくて頑丈そうな体してんな。
鎧もごっついしさ。
ロセウスももしかして戦争帰りか?」
ロセウスも、っていうことは、フレールさんも戦争帰りなのかな?もしかしたらミリューさんも?
僕は興味をひかれて彼らの会話に集中していた。
しばらくたって、カレンさんがこそっと手まねきしているのに気づいた。エクシーがするするとそちらに近づいていく。
僕も静かに立ちあがって、そうっとカレンさんのところまで歩みよった。
>「スールさんが、気になる扉があるんですって。さっき言った扉。
それで、わたしたちでこっそり行きませんか?という提案をされたのですけど‥。お二人はどうです?気乗りしないなら無理にとは言いませんけど‥」
カレンさんがひとりでいたときに、当たりをつけたという『例の扉』だ。スールさんがどうしても「今」開けたいというのは......物語が動きだしたことの証?
「僕、ついて行きます。その扉の中になにがあるのか、たしかめたいと思っていたんです。ただ...僕たち4人だけで行動するのは......。スールさんはそうしたいでしょうけど、すこし危ないと思います。ロセウスさんとネスさんにも、このことを知らせましょう。僕がポチをつかって合図をするので、後ろからついてきてもらえるよう、頼んできます」
ポチはくるりと首をかしげた。
「カレンさん、その扉が見えたら、僕に教えてください。スールさんには、ばれないほうがいいので...。僕の耳をさわって合図してください。そしたらポチがロセウスさんとネスさんに合図しますから」
そんな会話をしていると、ロセウスさんがこちらに声をかけた。
>「その時に新品の少尉殿がいてな。
おいカレン、お前さんあの少尉殿となんかあったんじゃないのか?」
カレンさんはとびあがった。
>「ひゃいっ!?ななな、何もないですよあるわけないじゃないですか何言ってるんですか少尉さんもお忙しい方ですしちょっと行って来る、なんて距離でもないですし!」
少尉さん。ええと、ちらっと聞いたことが、あるような。ええとその、カレンさんと、いいかんじ、に、なっているような、そんなことないような、でも。
カレンさんのようすを見ていると僕もなんだか顔があつくなってくる。
と、とりあえずスールさんやミリューさんの興味がそちらへ向いているうちに、と僕はできるだけささっとネスさんに近寄り、念のために妖精語で耳打ちをした。
『例の扉を、スールさんがお兄さんたちにないしょで開けるそうです。カレンさんとエクシーと僕が同行します。扉の近くに行ったらポチが合図をするので、ロセウスさんといっしょに追いかけてきてください。そのときは、お兄さんたちもいっしょでかまわないと思います』
できるだけすばやく、最低限のことを。そしてポチをネスさんの肩にあずけた。
ネスさんとはポチを介したやりとりを何度かしている。きっと、今度もうまくいく。
ネスさんは「わかった」というようすを見せてくれた。
>「...失礼、話を戻そう
スールさんが嫁いだ前後、何か気になる事はなかったかな?」
僕はすっとそこから離れて、エクシーのそばに寄った。
――PL(雪虫)より―――
それぞれが談笑するなか、もさもさと、とろくさく暗躍するタビットです。
ロセウスさんのひと言によりカレンさんが動揺している...たぶんみんなの耳目がそちらに行っているので、その隙にネスさんにプランを耳打ち、ポチをあずけます。
そのあとはエクシーのそばに待機。お声がかかったらすぐに動きます。
【予備ダイス】
22:06:00 雪虫@フィン ≫ 予備ダイス1 2d6 <Dice:2D6[6,5]=11>
22:06:13 雪虫@フィン ≫ 予備ダイス2 2d6 <Dice:2D6[5,5]=10>
22:06:21 雪虫@フィン ≫ 予備ダイス3 2d6 <Dice:2D6[5,5]=10>
予備ダイスなのにやけに出目がいい...。 なんか不安!