自らの選択
立て続けの攻撃を受け綻び始めたレドルグの体は、ロセウスの両断により完全に霧散する。
「ば、馬鹿な......!
まだ......この男の......最上級の絶望を味わっていないというのに......!
うぐ......ぐわあああああ!」
その断末魔は、反響をそのままに肉体とともに徐々に薄れていった。
戦いは終わった、一瞬の出来事だった。
銃をおろし、仲間たちに歩み寄る。
「ロセウス!フィン!...ありがとう。
エクセターボーっとしちゃってた...やな夢を見てたのかも...。
あっ、これは気にしなくてもいいよ。勝手に出てきたけど止まったから」
若干慌てて、顔の鼻血をハンカチで拭う。
原因は分からないが、もう大丈夫だろうという実感は有った。
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敵は排除することは出来た、けど、この物語はまだ問題を抱えているみたい。
それは、青髭...ジルとスールの問題。
私は少し悩むような、そんな素振りをした後ゆっくりと項垂れるジルの元まで歩み寄った。
「...例え抗うことの出来ない命令に従っただけであったり。
心を操られていたために起こしてしまった事であったとしても。
それは紛れも無く自分がやった事だと、エクセターはそう思うよ」
残酷に現実をつきつけるような冷淡な声。
だけど、それが目の前に感じる壁の正体で、立ち向かう必要のあるものだと思うから。
あえてそれを告げる、心を決めるために。
「血に汚れた手を罪と呼ぶなら、それを償わないといけない。
逃げることは出来ない...逃げちゃいけない。向き合わないといけない。
...でも罪を犯した人は二度と幸せになれないのかな...?」
昔の自分なら、こんなことは考えなかっただろう。
正しいとか悪いとか、そんな難しいことは他の誰かに任せればいい。
自分は何も考えずに、目の前の敵を倒すことだけ考えてればよかった。
何も考えずに命令に従っているだけでよかった、考えなければ苦しまないから。
楽しいことだけ見て、嫌なことから逃げてれば幸せだった。
けど、それじゃダメだって気がついたから。
エクセターは自分で考えて、それでジルに手を伸ばしたんだ。
「都合の悪い過去をなかったことには出来ないし、都合の良い未来だけつかみとることも出来ない。けど、今を努力して少なくとも後悔が残らないよう頑張ることは出来ると思う」
「何をどうするか、それは自分で決めないといけない。
大変だけど...エクセターは自分で決めたよ、後悔しないように。
貴方も自分で決めなよ、やるべきことを」
自分に言い聞かせるような強い決意とともに、ジルの手を掴み力任せに起き上がらせる。
もう私から何かを言うことはない、後は本人たちの問題だと思う。
手助けはできるけど、結局解決するのは問題を抱えた当人でしかない。
私はゆっくりと足取りでその場から少し離れた場所まで移動し、
体育座りで座り込んで空を眺めることにした。
頑張って、それで幸せになれる保証なんてどこにもない。
もしかしたら頑張っても全部無駄で、無意味なことになるかもしれない。
「...けど、努力することに意味がある」
ポツリと、誰にも聞こえないような、懐かしいフレーズを口ずさむ。
「ヨークはこの言葉好きだったよね、エクセターは理解できなかったけど。
今なら、ヨークが考えてたこと、少しだけ分かるかもしれない...」
エクセターも、ちょっとずつ強くなってきたかな...?
そうだったら...いいな。
空は何も答えない。それで良いのだと思う。
答えは自分が歩いた先できっと見つかるはずだから。
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PL・エクセターもエクセターなりにいろいろ考えてるようです
というわけで、ジルを助け起こして「自分で後悔しないよう決めろ」
という感じのことを言ったのち、そのあたりで座り込んでぼーっと空を眺めてます。