伝えるということ、たずねるということ

 フィン(雪虫) [2016/06/01 20:49:54] 
 

 >「ば、馬鹿な......!
   まだ......この男の......最上級の絶望を味わっていないというのに......!
   うぐ......ぐわあああああ!」

 霧の魔神は、ちいさな血だまりだけを残して、消滅した。

※ ※ ※

 >「わ、私は......一体......」

 >「あんなこと......そうか。
   私は、私の手は......妻たちの命を奪っていたのだな。
   ――そして」

 そう。スールさんまでも、手にかけていただろう。霧の魔神のあやつり人形として。
 みずからのしていたことをようやく悟ったジルは、呆然とスールさんを見つめている。

  >「操られていただけのあんたに罪は本当はないかもしれない。
   だが、それでも俺はあんたのことを信用できない。
   だからスールは連れて帰る。
   あんたには文句は言わせない」

 静かに宣告するフレールさんの背後で、スールさんもすこし呆けた表情でジルを見つめていた。

 >「もう動けそう?
   だったら、僕らと行こう」

 手をさしのべるミリューさんに、スールさんはとまどっている。

 >「兄さん......。
   わ、わたしは.....」

 カレンさんが、やわらかくミリューさんに制止の声をかけた。

 >「‥ミリューさん。これは、わたしたち外野が決めて良いことだとは思いません。
   一晩でも結構です。スールさんご自身に、考えて頂いて決めて頂きましょう?

   意見を押し付けるのは簡単でしょう。血の繋がったご兄弟ですし、スールさんご自身もお兄さんたちを慕っていらっしゃる様ですし。強く意見を言えばきっとスールさんはお兄さんたちに従うでしょう。

   ですが、それはスールさんの‥心からの想いとは違うかも知れません。
   心からの絆。それが正しい形であるならば、わたしはそれを見守りたいのです」

 ネスさんもつづける。

 >「フレール、ミリュー 妹御を連れて行くのは少しだけ
   待ってもらえないだろうか。
   二人はまだ...お互いに【答え】を出していないからね」

 >「特にジル...、君がスールに説明をしなけれならない事があるだろう?」

 僕もすこしためらったけど、フレールさんとミリューさんに向けてこう言った。

 「ちょっとだけ...。ちょっとだけ、待ってください。これからどうするにせよ、おたがいに言っておかなくちゃいけないことが、あると思うんです」

※ ※ ※

 ロセウスさんがシンプルに問いかけた。

 >「時にジル。
   一つ確認させてもらいたいんだが――いや今この瞬間でなければ意味のない確認だ」

 >「お前さん結局、これまでの妻たちとそれからスールを、ちゃんと愛していたのか?」

 かつて愛したジャンヌを呼びもどす贄としてではなく、彼女たちをひととして、きちんと愛していたのか。
 この問いには、ジルは答える必要があるだろう。スールさんのために。そして、ジルを信じて妹をたくした、ふたりの兄のために。
 僕はなにも言わず、しずかに青いひげの男を見た。

 エクシーがジルにほそい手をさしのべる。

 >「都合の悪い過去をなかったことには出来ないし、都合の良い未来だけつかみとることも出来ない。けど、今を努力して少なくとも後悔が残らないよう頑張ることは出来ると思う」

 >「何をどうするか、それは自分で決めないといけない。
   大変だけど...エクセターは自分で決めたよ、後悔しないように。
   貴方も自分で決めなよ、やるべきことを

 魔神の影響から解き放たれて、ジルは今苦しんでいると思う。操られたとはいえ、みずからのやったこと、そこへ駆りたてた想い、そういうもの全部と今、向きあっているんだ。

 僕は、「自分で自分のしたことに責任をもつ」って、そんなに簡単なことじゃないと思うんだ。
 「心を強くもって、やればできる」なんてものじゃないと思う。
 どんなに注意をはらったって、自分の言ったこと、したことでひとが傷つくことがある。伝え方を間違うし、失敗だってする。

 だけど、それと同時に、どんなにむずかしくても、「やらなくちゃいけないこと」なんだ。
 それを放りだしてしまったら、そして、甘やかしてしまったら。きっとひととの関係は、そこまでなんだろう。
 そういうあり方もあっていいとも思う。世のだれもと色濃い関係をむすぶなんてことはとうていできないから。
 けれどふたりは...ジルとスールさんは。

 ジルは、これからもスールさんと心をつないでいくことを、望んでいるのか。
 スールさんは、これからもジルとともに歩んでいくことを、望んでいるのか。

 「......これから、どうしたいですか?...そのために、言わなくちゃいけないことありませんか?」

 僕はジルにそれだけをそっとたずねた。それからふり返ってスールさんにちかづく。

 「スールさんも、これからどうしたいですか?答えを迷われているなら、今すぐでなくてもいいと思います。でも、できれば、スールさんの言いたいこと、たずねたいことだけでも、言ってしまったらいかがでしょうか」 

――PL(雪虫)より―――

まずは妹を連れ帰ろうとするお兄さんたちを引きとめます。

ジルに対しては、PLの言いたいことはみなさんが言ってくださっているので...。フィンからは「これからどうしたい?」とふたりにたずねます。
ジルはスールさんとこれからを共にしたいならジャンヌのことにはじまる一連のことを説明したほうがいいでしょうし、スールさんはどう決断するにせよ、一連のこと、ジャンヌのことについて説明を求めてもいいと思います。
スールさんが落ちつくまで時間がかかるのであれば、お兄さんといっしょに時間をかけてでも、ジルに真意を聞いたほうがいいでしょう。
(スールさん、このまま実家に帰っちゃったら、ものすごく当事者なのに蚊帳の外というか、けっきょく何がなんだったのかわからないままお別れになってしまいますよ!とPLは思います)