これからも、いつまでも

 フィン(雪虫) [2016/06/05 22:19:43] 
 

 >「あ、ああ......わかった」

 なぜかどもるジルの小指をつかまえて、僕たちは指きりをした。指きりをしたんだから、これで約束成立だ。

 >「あらら、そんなものがあったなんて知らなかったわ。
   ねえ......二ェストルさん。
   よかったらその日記貰えないかしら?
   まずは内容を読まなければ、それ以上の愛を受け取れたかわからないもの。
   今フィンくんと約束したし問題ないわよね......ジル?」

 
 ジルはなんだかしょんぼりしている。たけだけしくたくわえた青いひげにも、こう、覇気がかんじられない。
 いっぽう、スールさんの堂々とした笑顔に僕はちょっと気おされていた。 

 >「あんな顔してる時のスールは割とマジでやばいからな。
   ジルもこれから大変だろうぜ。
   ......とりあえず、俺も何か書き残すときは注意するか」

 フレールさんがぼそっと言った。よくわからないけど、これからひと波乱おきそうな気配だ。僕のひげの先がその空気をかんじてふるえる。
 そのとき、頭のなかに声がひびいた。

 >『物語は......綴られた。
   役割を全うせしものには......証が送られることであろう』

 あ、と思う間もなく、世界は真っ白な光につつまれていく。
 なにか言いたいことがあったような気がして、まぶしいのをがまんして目を見開く。けれど、光の中にはもう誰の姿も見えなかった。

※ ※ ※ 

 >「上手くいったかな?
   君たちの思い描く物語は出来ているといいんだけど」

 僕たちは名前を書きしるしたときとまったく変わらず、エリックさんの書斎に立っていた。

 >「愛っていうものは人を弱くもするし強くもする。
   だからきっと大切な瞬間に迷わないように......。
   その気持ちとしっかり向き合っていく必要があるんだろうね」

 僕はうなずいた。ジルとスールさんのあいだだけじゃなくて、フレールさん、ミリューさんとスールさんのあいだの愛情や思いやりも、とてもふかくておおきいものだった。

 >「......あとは、そうだね。 
   いろいろと書き残すものとしては、ちょっと肝が冷えるところもあったかな」

 「えと、ジルの日記のことでしたら、その、ちょっとはずかしかったけど、いいと思います。素直に想いをつづれるのって、素敵だと......。これからは、スールさんへもっともっと熱烈な想いを語る約束をしましたし、あの日記があってよかったと思います」

 エリックさんの複雑なほほ笑みを見ながら、僕は正直にそう言った。

  
 カレンさんが、思いだしたように僕たちに声をかけた。

 >「そう言えば、皆さんは栞は何色でした?
   わたしはピンクだったのですけど」

 「あ、僕のは黄色でした。笑いの物語を紡げ、って書いてあって......」

 いつのまにか左手ににぎっていた栞をみんなに見せる。笑いの物語......僕は、紡げたのかな。
 栞をひっくり返してみると、やっぱり笑顔のモチーフが5つ並んでいた。見ていると、なんだか心があたたかくなる。
 馬にのせてもらって、ミリューさんといろんな話をしたっけ。兄さんの話もしたように思う。あのときミリューさんはたしかに笑ってくれた。

 フレールさんに、スールさん。それからジルも。もう会えないのかもしれない。そう思うとちょっとさみしいな。
 でも、みんな、あの世界の中で生きている。これからも。これからも、ずっと、そう、

 「『どうぞ、お幸せに』」

 僕は【七色の童話集】にむかって、そうささやきかけた。

※ ※ ※

 夜、手羽先亭の部屋にもどって、寝る前にライティングビューローの前にすわる。僕の日記帳は、無理して買ったすこしだけいい白紙の本だ。
 冒険をかさねるなかで買った、これもちょっとだけいい羽ペンをインク壷にひたし、なにも書かれていないページに思うまま走らせる。
 今回の冒険のこと、出会ったひとたちのこと、だれがどんなことをして、僕はなにをして、どう思ったか。
 
 ふと、透明な視線をかんじて顔をあげる。机の天板に置いた止まり木のうえから、ポチがしずかに僕と日記帳を見ていた。 

 「......み、見ないでよ」

 こそこそと本を立てて、ポチからページを隠す。ポチはまるい目をしばたたかせ、またきょろりと見開いた。

 ふと、僕は思う。ああ、そうか。もしかして、僕はジルにとんでもなく悪いことをしてしまったんじゃないかな。
 素敵な愛の言葉だと思った。そのあふれんばかりのひとへの想いを忘れないでいてほしくて言ったけど、ううん......。日記の中身、ばらしちゃったのはよくなかったな。
 しかたない。スールさんとの愛情がよりふかまったみたいだったから、結果的によしとしてもらおう。

 思うところがあって、今日のぶんを書き終えたあと、しばらく僕は日記帳をめくっていた。過去にむかって。
 僕、なにかはずかしいこと、書きのこしてないよね。

――PL(雪虫)より―――

ハッピーエンドとなりました!
あんみつGM、みなさま、どうもありがとうございました。

下記のとおり、報酬を受領いたします。

【受領報酬】
報酬ガメル 1000G
名誉点 未使用名誉点31点(剣のかけら7個ぶん)+コネクションに使用済み名誉点5点+特殊称号に使用済み名誉点10点*2("コメディ・オーサー"および"青髭の登場人物")=総計56点
コネクション エリック・ジュベと顔見知り(名誉点5点)
特殊称号 "コメディ・オーサー"(名誉点10点)"青髭の登場人物"(名誉点10点)
メモリーアイテム 黄色の栞
PT名誉点 ヘオース・ヴォンヴィクスに50点