【A-2-4】灰猫の懇願
>「そうしたら、しんでんとかけいびの人たちとか、そういうところに言ってみようよ。
> ねえ、お絵かきしよう! ふたりでねこの絵をかいて、じょうずなほうを持っていくの!」
まずはどんな猫か調べたいと語っているヴィクトリアにカプリは提案する。
絵に描いて誰か見たものがいないか尋ねてみるのだ。
「なるほど、確かに効率的な話ですわね。
ただ、今日はもうそろそろ準備しなければならないことがありますので......。
一緒に探しに行くのは難しいかもしれませんわ。
......そうですわね、絵だけは今のうちに描いてしまいましょうか。
紙と道具を持ってきますので、少々お待ちになっていただけるかしら?」
ヴィクトリアは今日にちょっとだけやらねばならない用事があるようだが。
絵だけは今のうちに描くつもりになったようだ。
そこでヴィクトリアは紙と道具を取りにこの部屋から姿を消す。
――これはカプリにとって思い通りなことであった。
* * *
部屋に残されたのはカプリと灰色の猫が一匹。
それ以外何もいなくなってからカプリは速やかに動き出す。
外に音が漏れないよう扉を閉め、タルトから果実だけを持って猫の方に近づいたのだ。
――カプリは話しかける。
>「ねえ、なにがしたいの?」
灰色の猫は素知らぬ顔でにゃあ、とひと泣き。
だがカプリが気がついているのかとついに観念したのか......。
がくっと頭をうなだれてから、もう一度果実を見てから、カプリを見上げる。
「いやあ、ただの可愛い子かと思っとったけだ。
嬢ちゃん、結構鋭いんやなあ」
猫はおかしな訛りが入った感じではあるものの。
少なくとも人の言葉――交易共通語を話した。
それはこの猫がただの動物の猫ではないという証だ。
「俺はグレイっちゅうねん......よろしゅう頼むわ。
んで、俺はミアキスって種族でな。
今みたいに猫の形になれんねん。
こうして猫の格好しとんのは別にやましい考えがあってとかじゃないで。
単純に過ごしやすいだけや。
どこでも寝れるし、今回みたいに餌くれたりする人もおるしな」
灰色の猫だからだろうか。
名前はグレイというらしい。
グレイは猫の姿に化けられる人族の一種――ミアキスであるとのことだ。
彼がこの格好をしているのは単純に過ごしやすいからであるからだそうだ。
少なくともグレイの言葉では、だ。
「ただまあ昨日はどうにもめぐり合わせが悪くてな。
ほんまにお腹空かせてここの庭に倒れとったんや。
そこをこの家の嬢ちゃんが拾い上げて餌食わせてくれたっちゅうわけやな。
冗談抜きで命の恩人やで、可愛いしな」
そして昨日庭で倒れていた理由についてはどうやら本当に空腹だったかららしい。
これもグレイの言葉が本当ならであるが......。
あまり嘘をついているようには見えない。
「そこでや、嬢ちゃんはおそらく冒険者なんやろ?
嬢ちゃんを立派な大人の冒険者と見込んで話があんねん。
俺をやな......確かヴィクトリアいうたか。
この家の嬢ちゃんに取り次いで欲しいねん。
恥ずかしながら、俺はあの嬢ちゃんにほんまにホの字でな。
ただなぁ、いきなり話しだしたらビビられてまうかもしれんやろ?
そうなったら俺はもう生きてられへん。
だから冒険者の嬢ちゃんに頼みたいんや。
助けてくれたお返しがしたいねん......あかんやろか?」
カプリの聞く何がしたいかに該当する答えはこれだ。
グレイはどうやらヴィクトリアに惚れてしまったらしく。
だから、恩返しという名目で仲良くなりたいという腹なのだろう。
* * *
少しすれば、コツコツと足音が聞こえてくるかもしれない。
ヴィクトリアが戻ってきたようだ。
あと少しで扉を開けて帰ってくることであろう。
「ほんじゃ、頼むで......嬢ちゃん」
最後に念押しをしてから。
グレイは再度椅子の上に飛び乗って丸まっていった。
――そして部屋の扉はゆっくりと開く。
お嬢様らしく小さな動作も優雅だ。
「お待たせいたしましたわ。
とりあえずこれで十分でしょうか?」
部屋に入ったヴィクトリアはその手に素描用の木炭と紙を持っている。
そんなヴィクトリアをカプリ越しにグレイはうっとりと眺めていた。
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あんみつ@GMより
カプリルート進行です。
ヴィクトリアは部屋から出ていきます。
その後カプリが猫に話しかければ招待を明かしてくれます。
【NPC:男性】に【グレイ・トムキャット】を登録しておきます。
シーンの最後にヴィクトリアが帰ってきていますが。
それまでにやっておきたいことがあればご自由にどうぞ。
大抵のことでしたら融通をきかせます。
またヴィクトリアが帰ってきたあとにやりたいことがあれば、
そちらもお好きにどうぞ(*´∀`*)