【A-2-5】調子に乗った末路
......ヴィクトリアにホの字やねん。
だからカプリに彼女との取次を頼んだグレイであったが。
彼の野望は残念ながら。
>「えっとねぇ」
>「ダメー」
思いっきり第一段階で粉砕された。
「にゃ、にゃんでや!」
正直断られるとは思ってなかったのであろう。
猫の鳴き声と訛りが中途半端に混じった言葉がグレイの口から出てきた。
ついでに体がガクッとよろめいている。
>「だってねこ、えっちいでしょ。
> ダメだよ。女の子にそういうことするのは、わるいことなんだよ」
グレイの答えに対する回答はこうだ。
カプリは得意げに腰に手を当てながら胸を張っている。
「そんな殺生なこと言わんといてや。
しゃあないやん、ああいうのはな、男の性やで」
椅子の上に佇む彼は急に元気がなくなったようにいじけている。
そんな部屋の中に入ってきたのが画材を持ってきたヴィクトリアである。
カプリは彼女から木炭と紙を受け取って。
>「よーし、じゃあ、おえかきで勝負ね!」
いじけた様子の猫を描き始めた。
「うふふ、受けて立ちますわ」
ヴィクトリアはカプリに優しく微笑んでから。
紙の上で筆を走らせて猫の姿を写し取っていく。
* * *
カプリにお願いを拒否され、ずっといじけていたグレイであったが......。
ヴィクトリアとカプリたちからモデルにされていることがだんだんと楽しくなってきたようだ。
丸まってみたり。
宙で手を遊ばせてみたり。
威嚇するような格好をしてみたり。
無駄につぶらな瞳を強調してきたり。
初めはまだ猫らしいポーズであったが。
椅子の背を使って立ち上がってみたり。
豪快に股を開いてみたり。
セクシーなポーズをとってみたり。
段々と様子がおかしくなっていく。
「私、知りませんでしたわ。
猫というものはここまで器用な生き物でしたのね」
それでもまだヴィクトリアはこれが猫だと信じているようだ。
ちなみに彼女の絵を見れば、それなりの教養があるからか......。
まるで教科書のようになかなかに上手であった。
――そして、事件は起こった。
グレイが次のポーズを取ろうとした時。
足を滑らせて椅子から落っこちてしまったのだ。
「ぐぉ......あいたたた......。
――あ」
つい人の言葉を話してしまったグレイが見上げると。
驚きで紙を地面に落としてしまったヴィクトリアの顔がそこにあった。
「あ、あなたは......ただの猫じゃなかったのですわね......!
いったい何が目的なんですの......?」
一歩、また一歩ヴィクトリアは後ずさる。
グレイは彼女を捕まえようとするかのように肉球のある手を伸ばす。
「ち、違うで。
俺は決して悪い猫とちゃうんや。
お願いや、し、信じてくれや?
な、なあカプリちゃん......頼むわ。
何でもするさかい、俺を助けてくれへんか......」
猫のようにまんまるとした目で見つめながら......グレイはカプリに助けを求めた。
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あんみつ@GMより
カプリルート進行です。
お断りされてグレイは絶望的な表情をしていました。
ただヴィクトリアたちからモデルにされていることで調子に乗って自爆したようです。
カプリは好きなように行動をどうぞ。