ねこのてとあそびにいく
とおい昔、わたしに楽器のえんそうを教えてくれた人が、わたしの髪と肌の色をまいおちる雪にたとえてくれた。
旅芸人としてはよくあるように、それをきっかけにわたしは雪の精というすじがきで、一座のかたすみで楽器をならしてわらっていた。
「白雪の花が萌ゆる頃に」というしめ口上も、その人が考えてくれたものだ。
それからわたしは、雪のふる冬がとてもとてもすきになった。だから、旅にでるなら冬がいい。
冬の空気はとうめいで、香りもしんしんとしずかになる鈴の音のように心をおちつかせる。
そして季節は足をとめることなくうつりゆき、こくたんによる単色の下書きにすこしずつ油絵の具を乗せはじめるように、草花が顔をだしてあたたかくなった空気がそれらの香りをやわらかな風に乗せてはこび、動物たちもひとりまたひとりとおもてに顔をだしはじめる。
そうして鳥たちが歌声をひびかせるようになると、人々もまた太陽のめぐみにかんしゃし、活発に動きはじめる。
エルフが詩をうたい、ドワーフが彫像をこしらえ、人間は舞台で喜劇をえんじる。わたしはそんな人族がだいすきだ。
みんながせわしなく動きはじめると、わたしもそわそわして走りまわりたくなってくる。
それはお祭りのふんいきに似ている。春はそれだけでお祭りみたいなものなのだ。
だから、春の空気も冬のそれとはまた違って、すきだ。
わたしはてばさきに戻る前にコンチェルティアによった。
路銀はほとんどつかっちゃったから、コンチェルティアで満足するまで歌って飲んでわらってすごし、またおしごとをしにてばさきへと帰るつもりだった。
いちばん演奏がしやすいばしょで荷をおろし、わたしはヴィバーチェを両の手にかかえた。
演奏をはじめる前にいちど弦を弾く。ととのえられた音がなるのをたしかめ、あたまの上の友人を指でなでてわらう。
春は、あかるくてたのしい歌がいい。
コモド、コンアグレッツァ、エスプレッシーヴォ。
ヴィバーチェをぞんぶんに歌わせ、草花の香りといっしょに風にのるように、たからかに喉をふるわせる。
"この世界は全て舞台"
だからわたしは、コンチェルティアの空気もまた、すきなんだ。
* * * * *
> 「あら、あなたは......」
「ぬー?」
気がすむまで歌って、酒場をさがしに移動しようとしたところで声をかけられた。
きれいなドレスを着た、じょうひんなおんなのひと。
「こんにちは、おねえさん! なにかごようでしょうか?」
にっとわらってあいさつをし、しまうまえのヴィバーチェをてろんとならす。
足をとめてくるりとふりかえって向きあい、ぺこりとあたまをさげる。
> 「えっと、確か......お聞きしたところ、カプリさんだったかしら。
> ヴィクトリア・キャピレットです......覚えていらっしゃいますか?
> とても懐かしい――あの丘の件依頼ですわね」
「うん、カプリはカプリだよ。
ヴィクトリアさん、ヴィクトリアさんー」
ぬーとうなり、またヴィバーチェをてろんとならす。
前にコンチェルティアに来たのはたしか二年ちょっと前。
その時はグラさんとあそんで、それから丘でカプリッチオーソが、あーあの子が。あー。
「あー、あー」
あちゃーとにがい顔をして、あたまをぶんぶんと左右にふる。
「そのせつは、まことにごめいわくをおかけしまして」
そしてぺこりとふたたびあたまをさげる。
人生、いろいろとしがらみがあるのだ。
> 「私は少し4番街の様子を見つつ、ちょっとした用事を済ませたところですけど。
> カプリさんはどういう理由でこちらにいらしたの?」
「ようじはないの。カプリは行きたいと思ったから来ただけ。
ずっとずっとそうだよ。これまでも。これからも」
ね? とあたまのうえのパストラに言う。
それを見ていたのか、ヴィクトリアさんはなにか考えごとをはじめた。
> 「......ああ、そうだわ!
> カプリさんって冒険者でしたわよね。
> 冒険者でしたら動物と関わることも多いんじゃないかしら」
> 「カプリさん、もしお暇でしたら私の家までいらしていただけませんかしら?
> 勿論しっかりとおもてなしもさせていただきますわ。
> ......その、少しご相談したいことがありまして。
> 実は昨夜庭で倒れていたのです、そう......猫が一匹。
> 私たちは猫はおろかどの動物も育てたことがなく、困っておりますの」
「ねこ!」
ほうほうとうなり、ヴィバーチェをしまった。
そういえば、ねこの絵がかかれた本を持っているみたい。
「行く! ねこさんのおせわする!」
手をあげてこたえた。
ねこのおせわはべつに得意じゃないどころかしたこともないけど、するのだ。
==============================
PL@一葉より:
とりあえずまずは初手を。
あんみつGM、紫乃さん、柑橘さん、キャスパーさんよろしくお願いいたします。
文章が読みづらいのは仕様なのでご容赦下さい。
まずは好き勝手に過ごしながら、ヴィクトリアさんにお呼ばれしていく方向で!
まあね、ちょっとね、昔にね。
ヴィクトリアさんの恋人のカイル君をね、ころころしようとした経緯がありまして(未遂)。
ちょっと謝っておこうかと思いましてね。。。
こんな感じになりました。
でもすぐに戻るこどもてんしょん。