【A-3-2】幼心は気持ちに素直
ヴェンデルベルトは今日の運勢を占った。
果たして彼を導くのはいったいどのようなものか。
カードをめくり、結果を導き出そうと試みた。
だが、結果は残念ながらやや曖昧なものだった。
白か灰か......色味が薄いものがいいのかとなんとなく感じるくらいである。
* * *
そんなヴェンデルベルトとティキがコンチェルティアの公園で出会ったのは。
アポロという少年とアイリという少女である。
アイリは怒っている様子で向こうへ走ってしまい。
公園の真ん中でアポロはうなだれているというところだ。
>「アポロ君、ですよね。こんにちは。
> お元気そうで何より、と言いたい所ですが何かお困りのようですね?探し物ですか?
> 良かったら、話してみませんか」
まずヴェンデルベルトがアポロに話しかけた。
「おれのこと知ってるってことは――やっぱどっかで見たことあったんだ。
もしかしてフィンと知り合い?」
ヴェンデルベルトの方へ力なくアポロは顔を向ける。
どうやら彼はフィンのことはよく覚えているらしい。
こんなことを尋ねるのはヴェンデルベルトと彼が同族であるからだろう。
そういえばフィンはあの場所にもいた。
前回の際にそれなりに関わっているのかもしれない。
>「紫紺の竜の背に乗っていた者だよ。―ヴェンさん、これ任せます」
一方のティキは荷物をヴェンデルベルトに預け、この場を去っていく。
どうやらアイリを追いかけてみるつもりなようだ。
――そういうわけで公園に残されたのはアポロとヴェンデルベルトである。
「な、なあ......」
走っていくティキの姿をぼんやりと見つめていたアポロだったが。
今度はヴェンデルベルトの方に視線を戻し、ぼそっと話しだした。
「話、聞いてくれるの?」
顔を上げたアポロの目は若干泣きそうであった。
下を向いたりバツが悪そうにしているのも恥ずかしいと思っているからであろう。
「さっき走っていったの......アイリって言うんだけど。
おれの隣に住んでて仲良くしてたつもりなんだ。
――もう嫌われちったかもしんないけどさ」
アポロとアイリはこの5番街のお隣さんなようだ。
彼の言葉からすると、本来は仲がいい二人であるようだが。
どうして今回のようにこじれてしまったのか聞いてみると。
「アイリ、白い鳥を籠に入れて飼ってたんだ。
よくおれと遊んでるときもその鳥の話しててさ、大事にしてるんだなーって思ってんだ。
でも、今日の朝おれがアイリの家に行った時......ちょっと事故で籠の扉を開けちゃったんだ。
そしたらアイリの鳥がびっくりするくらい勢いよく飛んでって......。
それをアイリが見てておれに言ったんだ。
おれが逃がした......最悪で大嫌いだってさ。
――おれ、そんなことするつもりなかったのに」
どうやらアポロがアイリの飼っていた小鳥を誤って逃がしたのが原因らしい。
大切に育てていた相手が逃げ出してしまったアイリの気持ちを察するのも容易だが。
アポロはアポロで自分がやってしまったことに深く傷ついているように見えた。
「おれさ、アイリに見つけるから許してって言ったんだ。
でも見つかるはずないよな。
だって鳥なんて空を飛べちゃうんだから。
......おれ、もうアイリに許してもらえないのかな」
またアポロは俯いてしまう。
どこからどう見ても泣きそうだ。
* * *
一方アイリを追いかけていったティキは5番街を少し抜けたところでその姿を発見できる。
劇場やホールらしき建物の姿が散見される。
4番街の方へと到着したのだ。
彼女は何かの姿を探すかのように空を見上げ。
途中で思い出したかのように地面の様子を伺い。
がっかりしながらまた空を見上げる。
そんなプロセスを何回か繰り返した後。
大きくため息をついてアイリはある劇場傍のベンチに腰掛ける。
「まあ、見つかるわけないよね。
かわいかったのになあ......わたしのシュガー」
ベンチに座りながらアイリは足をぶらぶらとさせる。
たぶん気持ちが収まらないのであろう。
「はあ......本当信じられない馬鹿アポロ!
なんてことしてくれるのよ。
わたしが大事にしてるって知ってたはずなのに。
ああ、もう絶対一緒に遊んであげないんだから......!」
そしてぷりぷりと頬を膨らまなせながらアポロに対しての不満を口に出している。
「でも......ちょっとかわいそうなことしたかなあ。
なんか泣きそうになってたし......」
ただ、一瞬だけ後ろめたそうな顔になる。
どちらかというと彼女は優しいタイプなんだろう。
「ううん、違うわ。
全部アポロが悪いんじゃない。
もうあんなわんぱく馬鹿なんて知らないわ!」
アイリは特にティキに対して、気を留めないようだ。
まあアポロとは違ってアイリに対しては全く面識がないのだから仕方がないか。
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あんみつ@GMより
ヴェンデルベルトとティキそれぞれのルート進行です。
ミスティックは自分を占う場合は-4のペナルティを受けるため、
【幸運の星の導きを知る】の達成値は9になり、ぎりぎりわからないんですよね。
ただせっかくなので、色味が薄いものがおすすめらしいよ、とおまけでなんとなくわかることにします。
ヴェンデルベルトはアポロに対して、
ティキはアイリに対してアクションを起こすことができます。
どうするかは基本的にお好きにどうぞ。
ただアポロは若干ヴェンデルベルトの顔を覚えていたのに対し、
アイリはまったくティキのことは知りません、というところですね。