付き合い
《テンペストが?》
《そう。ヒマなんだと》
鑿の手を止めたのは、以前会った大妖精の名を聞いたからだ。
私の問いに答えたのはサラマンダー。蜥蜴の姿をした火妖精だ。私の家の土間で、腹を地面にぺったりとくっつけて休んでいる。
私は上がり框に腰かけて、指物づくりに勤しんでいた。
《彼女は基本的に暇なんじゃなかったかな。どこで聞いた?》
《この前、イフリートから。イフリートは遺跡の同族から、その同族は別の妖精から。大元は知らない。―ところで》
サラマンダーはだるそうに体を伸ばし、そばに置いてある木材を見て言う。
《燃やしていい?》
《駄目。そのまま寝そべっててくれ》
不服そうにさらに脱力して、平べったい頭も床につけた。それでも目を離さない木材は、この間の大雨で湿気てしまっていたものだ。彼の体から発する熱気は、乾かすのに丁度いい。"燃やしたがり"な種族の性が面倒だが。
「久しぶりだが、会いに行ってみるか。最近、私も暇を持て余していたからな......あの時一緒にいた面子にも声かけてみよう」
仕事道具を片して立ち上がり、木くずをまとめてかまどへ放り込む。サラマンダーは待ってましたとばかりに景気よく火の息を吹きかけ、それらをみんな消し炭にしてしまった。
* * *
「とりあえず荷物を置きたいですね。武器と鎧と、大きめの荷物位は。あと着替えたい」
コンチェルティアの五番街。まだ人通りはあまりなく、澄んだ空気に満ちている。街を抜けようと歩いていくと、向こうから男の子に追いかけられて、女の子がかけてくる。
その言い争いを聞く限り、どうやらアポロというらしい男の子が、このアイリという子を怒らせてしまったらしい。
>「悪いと思っているならわたしの邪魔しないで!
わたし、本当に怒ってるんだからね......!
アポロは一人で遊んでなさいよ、それじゃあバイバイ!」
言いたいことを言うと、きびすを返して向うへ走って行った。取り残されたアポロは、うなだれてぶつぶつと不満を漏らし、それからこちらに気づいた。
>「どっかで見たことあるよーな......ま、いっか。
はあ......どうしたら許してくれるのかなあ」
この顔、私の方にも見覚えがあった。前回この街に飛ばされて来たとき、会ったような気がする。名前はお互い名乗ってすらいない。むしろ、よく顔だけでも覚えていたものだ。
何にせよこの時点で、私はどうするか決めた。諦めるのでなければ、力くらい貸してもやろう。ヴェンさんも、そのように思ったのだろうか。近寄って、声をかけていた。
>「アポロ君、ですよね。こんにちは。
お元気そうで何より、と言いたい所ですが何かお困りのようですね?探し物ですか?
良かったら、話してみませんか」
私もそれにならい、声をかける。
「聞いてきてやろうか?」
アイリはどんどん遠くへ走って行く。私の足なら追い付けるだろうが、自己紹介している暇はないだろう。どこで会ったか、これだけいえばわかるだろうか。
「紫紺の竜の背に乗っていた者だよ。―ヴェンさん、これ任せます」
赤の槍―「ビーク・バーガンディ」。それから土産などの入った大袋を地面に置いた。
こつこつとつま先を地面にぶつけ、肩をぐっと伸ばす。
ごく軽く体をほぐしたのち、全速力で駆けだした。
PL
まずはGMあんみつさん、それにPLの皆様、よろしくお願いします。一葉さんはセッションでご一緒するのは今回初めてなので、その点もとても楽しみにしています!
私の行動は、アイリを追いかける を選択します。
土産を持ってきているのでエンディングでテンペストにちょっとだけでも会いたいですね。