【B-1-3】力強いビート
シィノヴィアは大通りを経由して広場を通りながら3番街を目指す。
道中、多数の観光客と出会ったが......。
どうにもネージャやヴォイスの仲間で有りそうな人物は見つからなかった。
――そしてたどり着いたのは3番街。
元々は宿場街であったのだが、次第に冒険者たちが集いだしたことで。
冒険者たちの街と呼ばれるようになった場所だ。
そしてその中でも一番大きな冒険者の店こそが七色の調べ亭である。
エリックが部屋をとってくれているのもこの宿だ。
シィノヴィアはブラブラと歩いているうちにここまでたどり着いていたらしい。
綺麗な木の香り漂う店の前になんだか人だかりができているようだ。
中心にあるのは一つの鉄製のテーブル。
それを挟み込むようにひと組の男女が対峙していた。
一人は筋骨逞しいやや大柄な男性だ。
頭には角がある事からおそらくナイトメアであろう。
晒していられるのもここが冒険者の区画だからであろうが。
もしかしたらそれなりに優秀である人物かもしれない。
もう一人の女性は一際目立つ黄色い大きなつばのある帽子を被っている。
よく見れば黄色い花飾りがついているようだ。
女性にしてはしっかりと筋肉がついているが。
無駄なところはなくスタイルはなかなかのものだ。
そしてそのよく張った胸部を強調するような服装をしている。
さて、この男女はただテーブルについて睦まじく話しているというわけでなく。
よく見れば、どうやら力比べをしているようではないか。
いわゆる腕相撲、というやつである。
状況は意外にも女性の方が優勢のようである。
ただ彼女がミノタウロスの血を引くのであれば......あながちわからなくもないかもしれない。
「へ、女のくせになかなかやるじゃねえか」
「当然だって、舐められたら困るっての」
二人の短い会話のあと。
――ついに決着の時が来る。
テーブルの上に先に触れたのは男の方の腕だった。
つまり、勝者は派手な帽子の彼女だ。
「よっしゃ、あたしの勝ちだな!
でも、芸術の街だって聞いたからひょろいのばっかだと思ってたけど。
あんた相当骨があったよ、思ってたよりやばかったかも」
彼女は再度、ナイトメアの男の方へ手を伸ばす。
今度は戦いのポーズではない。
握手......友好のポーズだ。
「ったく、力に関しては少しは自信あったんだけどな。
そっちこそ相当なもんだぜ。
俺は七色の調べ亭所属の冒険者グラディウス。
名前、そっちはなんていうんだ?」
男の方もがしっと力を込めてその手を握る。
彼はグラディウスというコンチェルティアの冒険者らしい。
そして他方の彼女はというと。
「あたしはリズム。
んー、うまく説明するのは難しいけど。
旅の演奏家......みたいなもん?」
彼女の名前はリズムというらしい。
その外観的特徴も踏まえ、まず間違いなくネージャの探している相手だろう。
握手を終えた後、軽く挨拶をしてからグラディウスは建物の中へ戻っていく。
一人残されたリズムは周りにいる人たちの姿を眺めた後、高らかに言った。
「よーし、他にあたしと勝負したい奴はいない?
今なら一個だけそっちの言うこと聞いてやるよ。
――まあ、物によっては拒否るけど。
あと、頭使う勝負はなしだから」
今のところオーディエンスの中に勝負に乗る相手はいないようだ。
声を上げたり、手を伸ばせばきっと目立つはずだ。
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あんみつ@GMより
シィノヴィアのルート進行です。
【NPC:男性】に【グラディウス・ボーグ】を、
【NPC:女性】に【リズム・ハードビート】を登録しておきます。
リズムは勝負相手を求めているようです。
もし勝負したければ、好きな内容で挑んでも構いません。
勿論普通に話しかけても構いません。