ちから
神官の女性は、シィノの問いに6番街だと答えた。
隣の区画。
>「5番街から6番街まではすぐですから、迷うことはないかと思いますが。
> せっかくですし、ご案内させていただきますね。
> ちょうど軽い散歩にでも出ようかと思っていた頃ですので」
「ありがとうございます」
―*―*―*―
>「その格好からして、冒険者でいらっしゃるんでしょう?
> 先程あのような質問をされたからにはこの街の方ではないと思いますが。
> どのようなご用事でいらっしゃったのですか?」
「今はルキスラにいます。今回は、護衛の仕事でこの街に」
依頼人に差しさわりのない程度で答える。
世間話というものは苦手だ。
何を話したらいいのかわからない。
ただ、彼女が言葉をつないでくれるおかげで、会話らしいものになっていた。
静かな口調が耳に心地いい。
>「シーン様を信仰されていらっしゃるのですね。
> 私も両親を幼い頃に戦で失い彷徨い歩いていたところを拾われて以来......。
> あの神殿で全てを捧げて生きています」
「信仰と言えるほどかどうか。
ただ、シーン様に顔向けできなくなるような生き方はしたくないだけです」
だから時々、月光のもとで、あるいはシーン様の像の前で、己を顧みる。
――後悔はしていないか? やり残していることはないか?
シィノと形は違うのかもしれないけれど、彼女にとってもシーン様は指標なのだろう。
>「私は人はそれぞれ全てを捧げる対象があると思います。
> それが力であったり、知恵であったり、富や名誉であったりするのでしょう。
> 私にとってはシーン様の教えが全てです。
> あなたにもきっと全てを捧げられるものがありませんか?
> もし今はなくともきっと導かれることでしょう。
> それは誰かであったり、あなた自身であったりに......」
何も言わず、うなずいた。
シィノがシィノの全てを捧げるもの。
あるかもしれない。ないのかもしれない。
ただ、彼女の言うように、いつかわかるのだろうとなんとなく感じた。
>「ここから先が6番街になっています。
> では、私はここまで。
> またいつか神殿によっていただけると嬉しいです」
「コンチェルティアを訪れたときには、必ず。
案内、ありがとうございました」
―*―*―*―
6番街を表す言葉を、シィノは知らない。
色。人。音。におい。
あらゆるものが調和など無視し、それぞれの存在を主張している。
まともな絵なのか落書きなのかわからない。
あれは声か、歌か。
お洒落なのか、仮装なのか。
目が回りそうだ。
そして、とてもエネルギーにあふれている。
これらがすべて、人の頭の中から生まれ出たものとは。
>「まあ、プレイヤさんの感性も結構独特ですからね。
> というかはっきり言いますと、僕とネージャさん以外は変ですから、みんな」
>「そんなこと言ってるけど......。
> ソリッドもヤバイ時は怖いくらいにヤバイじゃない」
街の様子に気をとられていた。
知っている単語が聞こえてこなければ、見逃していたかもしれない。
「失礼します。シィノはシィノヴィア。
ネージャ嬢に頼まれて、あなた方を探していました」
――――PL――――
最後の2人はっけーん!
声をかけて、ネージャ嬢のとこへ行くように言います。