探索開始

 ヴェンデルベルト(柑橘) [2016/05/19 12:54:39] 
 

「アイリの家は、こっちな。
 そっちはおれの家だから」

「なるほど。良いお家ですね」

公園からほど近い場所に、その家はあった。素敵な家だ。庭の木々も生き生きとしている。
名の知れた建築家に住宅街をまとめて依頼したのであろうか。
どこか統一された雰囲気をもつその家は私の目に好ましく映った。


アイリ嬢の母君であるらしい女性が顔を出し、アポロ少年と言葉を交わす。
どうやら彼女は怒ってはいないらしい。愛鳥を逃がしたのだから立腹しているかと思ったが、余裕のある方たちらしかった。

「一緒に......?
 あなたはもしかして......フィンさんかしら?」
「ううん、違うよ。
 こいつはヴェン......なんとかっていうんだ」

「初めまして、ご婦人。ヴェンデルベルト・S・ライゼトラウムと申します。
 アポロ君のお手伝いをしております。ヴェン、で結構ですよ」

アポロ少年の言葉に続いて自己紹介をし、ぺこりと頭を下げた。

「あら、そうなんですの。
 すみません、人違いをしてしまったみたいで。
 私はアイリの母のイリアと申します。
 アポロが探すのを手伝っていただいているんですね。
 ありがたいことですが、もしかしてアイリ共々ご迷惑をおかけしていないかしら?
 私たちでできることがあればもちろん手伝わせていただきますよ」

「ありがとうございます。いえいえ、迷惑なんてとんでもない。
 では、よろしければ小鳥がいつも食べていた餌を頂けますか?
 それから、いつもの餌の時間と言うのを教えていただけますか?」

好意には遠慮なく。ご婦人から鳥の餌を頂いて、さぁ、迷子の小鳥を探しに行こうか。



ご近所さんに小鳥見ませんでしたか?と尋ねながら飛んでった方向へ進んでみましょうー。