【B-4-2】手渡されたチケット
>「妖精はね、基本的に自分から人を襲ったりしないよ。......いたずらはするけど。それにこのエコーは、とても恥ずかしがりで大人しいから大丈夫」
>「だいじょうぶー」
>「だって。ね?」
>「ねー」
ティキとエコーが妖精の安全性を語ると、アイリはくすっと微笑んだ。
「じゃあわたし、ティキさんとエコーちゃんを信じますね。
ただ......街の東側に行く時はなるべく外に出すのは控えたほうがいいと思います。
4番街や6番街は変わった格好をしてる人ばかりですし。
5番街はわたしみたいに普通の人が住んでるのでごまかせるかと思いますけど。
向こう側はそうもいかないですし......何より余計なトラブルはいらないですよね?」
アイリは二人の言葉を信じてくれたようだが。
街の人すべてがそうだとも限らないのが現実だ。
特に重要な施設が存在する1番街や貴族たちの暮らす2番街は尚更だ。
冒険者たちが集う3番街でも気に留められるかもしれない。
* * *
ひとまず4番街にあるという美術館を目指して歩いていたティキとアイリだったが。
道中、ティキはエルフの男性に声をかけられる。
一緒に踊りたいと誘っているようだ。
>「私?......仕方ないな。エコー、ちょっと出ていて」
ティキは一旦エコーを放して、彼の誘いに乗ることにしたようだ。
>「あなたのかみは茶色なのね」
一人放されて所在無さげにしていたエコーはぼそりつぶやいた。
耳のそばでつぶやかれたアイリが聞き逃すはずもなく。
「うん、お母さんと同じ色なんです」
自慢げに自分の髪をなでていた。
――さて踊りに付き合ってみたティキはというと。
>「む......」
なんとか相手の踊りや音楽のテンポに合わせることができているという感じだ。
少なくとも見れないというほどではない。
むしろスタイルのいい二人の組み合わせであるから、見た目は華やかだ。
しばらくして音楽が成り止むと。
見ていた観客たちから拍手が沸く。
エルフの男性はティキの手を取って、丁寧にお辞儀をしてからそっと手を離す。
「素敵でしたよ、ティキさん。
冒険者なので踊りは本業じゃないとは思いますが。
つい見とれちゃいました、ティキさん綺麗ですからね」
アイリはティキのもとに駆け寄ってから感想を漏らした。
その瞳はとてもキラキラとしている。
「ああ、本当に良かった。
オレも一目で君に夢中になってしまうくらいにね」
けれど、ティキに声をかけたのはアイリだけではなかった。
先ほど一緒に踊ったエルフではない。
彼は違う音楽に合わせて次の踊りに入っている。
振り向けば......そこにいたのは長い銀髪をした人物。
細い体付きをしていることもあり一瞬女性かとも思えるが。
先ほどの声や話し方を聞く限り、男性であろう。
ちょっと不健康そうな青白い肌をしているようだ。
「あのさ、ちょっとオレと遊ばない?
天国......見せてあげるからさ」
そう言ってティキに向けて手を差し伸べようとする彼であったが。
「あ、え、そ、その......ティキさんはわたしとデート中なんです......!」
二人の真ん中にアイリが入ってくる。
ひょこっと現れた彼女にちょっと驚いた様子を見せた彼だったが。
すぐにアイリと視線が並ぶくらいまでしゃがんで、その頭を撫でる。
「ひゅう、君もなかなか可愛いじゃん。
あと五年後に期待しちゃうぜ。
そうしたらまたオレと会って遊ぼうか。
――勿論大人の遊び方でな?」
優しく撫でられてそんな言葉をかけられたアイリは真っ赤になっている。
照れてもいるし、嬉しくもあるようだ。
「じゃあ、デートついでに時間があったら来てくれないか。
オレたちのかっこいいところ見せてやるからさ。
――きっと君はオレのこと忘れられなくなるぜ」
アイリの頭から手を離した彼は代わりに二枚の紙を差し出した。
「これは......?
トゥルー・ソウルズ?」
どうやらそれは公演のチケットであるらしい。
演者はトゥルー・ソウルズと言われる集団のようだ。
「――真の魂たち。
穢れだとか敵対なんて関係ない。
ただ音楽を奏でたい奴らの集まりさ」
アイリの言葉に応えた彼の表情と言葉は、この時だけ畏まって見えた。
「まあ、そんなつまんねえことはどうでもいいさ。
とにかく君たちにオレのかっこいいところを見て欲しいだけ。
――じゃあ、他の子が呼んでるから......またな?」
そう言って別れの投げキッスをした後。
手を振りながら彼は向こう側へと去っていく。
アイリはぼんやりとその後ろ姿を見つめていた。
「かっこいい......」
ぼそっとつぶやいた言葉はティキの耳にも届いたはずだ。
どうやらおませな彼女は悪い大人に憧れるお年頃らしい。
「な、なんでもないです!
美術館はもうすぐですよ。
さ、さあいきましょう!」
恥ずかしい気持ちを隠しきれずに、アイリはティキを急かした。
少し歩いていけば、美術館が見えてくることだろう。
―――――――――――――――――――――――――――――――
あんみつ@GMより
ティキルート進行です。
一番最初のアイリからの言葉は割と本物です。
あまり街中で魔法の行使をすることは推奨されませんしね。
ただ4番街や6番街あたりなら紛れるのは難しくないです。
アイリとティキの2枚分のチケットを受け取れます。
【分類:組織】に【トゥルー・ソウルズ】を登録しておきます。
見識判定が可能です。目標値は17と高めですが。
また、男性に対して真偽判定を行うことも可能です。目標値は14。
成功すれば、彼が本当は人族ではなく蛮族であることを察します。
あとはお好きにどうぞ。
何事もなければ美術館へ移動します。