【D-1-1】奏でる魔動機

 GM(あんみつ) [2016/06/21 23:53:12] 
 

――開始数分前。
4番街のある劇場には多くの人が集まっていた。

会場となった劇場はさほど大きくはないが......。
だからこそ後方でもリアルな音楽を感じられるとも言える。

集まっている客の姿を伺えば、比較的若者の姿が多く見えた。
観光客だろうか、他地方の装いをしている者もいれば。
冒険者らしく鎧を身に纏った者もいる。

そんな人の集った劇場の中に。
一人、また一人と姿を現す者たちがいる。

   *   *   *

シィノヴィアは一人、この聴衆の群れに飛び込んだ。

彼女の場所は前の方だろうか。
それとも中心だろうか。
もしかすれば後方かもしれない。

シィノヴィアがふとステージの方に目をやれば。
こっそり裾から顔を出して様子を伺っていたスラップと目が合う。
ひらひらと揺れる手......彼の後ろから襲いかかる拳の一撃。
まともに直撃されたスラップは頭を抱えながら引っ込んでいく。
おそらくリズムがやったのだろう。

「シィノヴィアさん、こちらにいらしたんですね」

いつの間にか傍にはネージャの姿があった。
彼女は客席から見るのだろうか。

「いつもはこちらから見ることはないんですけどね。
 彼らの最初のステージですから。
 是非とも正面から見たいと思ったのです。
 ......お隣、ご一緒してもよろしいですか?」

   *   *   *

「なかなかに大盛況ね。
 早めに買っておいてよかったわ」

カプリとデイジーは二人でホールの中へと至る。
デイジーは緩やかに人並みを避けて進んでいく。
カプリにも同じ芸当はできるだろう。

踊り子並みにカプリが動けるのか。
冒険者並みにデイジーが動けるのか、果たして。

「私たちの場所はあそこの方かしら?」

二人が向かうのは前の方だろうか。
それとも中心だろうか。
もしかすれば後方かもしれない。

   *   *   *

「人いっぱいだな、すっげー楽しみだぜ!」

「ちょっと、アポロあんまり恥ずかしいことしないでよ!」

入った瞬間から元気なアポロとアイリと共にティキは入ってくる。

「おれ、前のほうがいい。
 後ろじゃ見えないし!」

「子供みたいなこと言わないの。
 私も見えないけど......」

そんな感じで話している二人から一瞬目を離すと、ティキはヴェンデルベルトを見つける。
彼もチケットを入手して来たのだろう。

「あ、ヴェンだ!」

ヴェンデルベルトもアポロやティキたちの姿を捉えることができるだろう。
同じ場所に集まってステージを楽しむこともできるはずだ。

   *   *   *

開演の時間。
ステージの幕が上がり姿を現したのは五人の男女。

最初に姿を見せたのは赤髪の気だるげな女性。
その後ろから歩いてくるのは小柄な青髪の少年。

続いて入ってきたのは帽子をかぶった元気な少女。
そして手を振りながらやってくる銀髪の青年。

最後に姿を現したのは、白いフードを被った男性だった。

――冒険者たちにはそれぞれ見覚えがあったりなかったりするだろう。

「今日は......俺たちのステージに来てくれて嬉しい。
 俺たちは......その、そうだな......」

最初に口を開いたのは白いフードの男性だった。
ただ少し何を言おうか考えているようだ。
緊張しているというよりは彼はそういう性格なのだろう。

「だー、もう、ヴォイスはそういうの向いてないんだから、オレに任せな。
 観客席にいるガールからレディ、マダムまでみんな。
 ――愛してるぜ」

そんな彼の言葉を遮ったのは銀髪の青年だった。
彼は大きな身振りをしつつ言葉を紡ぎ、最後にステージ上から客席に投げキッス。
嫌いな人は嫌いだが、好きな人は好きなタイプである。
客席の中から黄色い声が上がる場所もあった。
......ちなみにアイリはぽわっとさせた側である。

「どうでもいいけど......早く始めない?」

「そうそう、スラップのナンパショーじゃないんだし」

「お願いできますか、ヴォイスさん」

三人に急かされて再度主導権はヴォイスと呼ばれたフードの男性に移る。
彼は数歩前に出て、顔を上げる。

「今日は俺たちの......この街での最初のステージだ。
 俺たちのことをあんたたちがどこまで知っているかは知らない。
 あんたたちが俺たちをどこまで受け入れてくれるかもわからない。
 それでも......俺たちは伝え続けるつもりだ。
 真の魂を音に乗せて、だから聞いてくれ......!」

彼の声を合図にそれぞれのメンバーは何かを取り出す。
それは小型の球型の魔動機。
魔動機に触れれば、魔動機は変形し本物の姿を現に顕す。

一つはまるで鍵盤楽器のようで。
一つはまるで複雑な太鼓のようで。
そして弦楽器のような魔動機が三つ姿を現した。

知識のあるものならば、かつて魔動機文明時代に流行した楽器であるとわかるだろう。
マナを使い音を歪ませたり強くしたりできるのだ。
彼らは今の時代に残されたそれらの楽器で音を作り出すようだ。

「行くぞ......!」

最初の曲の前奏が始まる。
それは、とても力強く、勢いよく。


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あんみつ@GMより

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