【D-1-2】バルバロス・フィナーレ
リズムのビートが鼓動を鳴らし。
スラップの弦がサポートする。
プレイヤの鍵盤は軽やかに弾け。
ソリッドの楽器は力強く音を揺らす。
四人の演奏に合わせて弦を鳴らしながら。
歌い叫ぶのは、ヴォイス。
彼らの奏でる音楽は強い怒りのようで。
激しい悲しみのようで。
燃え上がる情動のようで。
確固たる意志のようでもあった。
それはヴォイスの乗せる言葉からも感じられることだ。
――奏でられること数曲。
あと一つラストナンバーを残したところで事件は起きた。
それは偶然であったか、運命であったかはわからない。
最後の演奏に入る前。
しっかりと被っていたはずのヴォイスのフードがズレ落ちたのだ。
そして、蛮族......ドレイクである証の角が顕になる。
「あ、角だ」
ティキとヴェンデルベルトの傍でアポロが言う。
アイリは少し驚いているようだ。
動じない者は動じることはない。
他地方からやってきた者たちは彼らの素性を既に知っているのだ。
一方で動じる者も当然いる。
後ずさりする者。
小さく悲鳴を上げる者。
冒険者らしき、身構える者。
様々な反応をする観客を見て、ヴォイスは首を振って。
「仕方ないか......。
いいよな......?」
角をもはや隠すことなくヴォイスは仲間たちを振り返る。
彼らはそれぞれに頷いて見せた。
ソリッドは瓶をひとつ取り出し、他の仲間たちも各々動く。
* * *
一瞬のブラックアウト。
その中で強く赤く光るものがあった。
瞳だ......それはスラップの瞳だった。
再びの明転の中。
彼らの姿は大きく変わっていた。
リズムは大きな帽子を取り払ったことで、立派な角が表に出る。
プレイヤの足は蛇の尻尾へと変わり。
ソリッドの姿は青年から青い毛並みの狼へと変貌していた。
ヴォイスも含め、彼らの本当の姿である。
「これが俺たちの本当の姿だ。
あんたたちが恐れ......嫌う蛮族っていう奴だ。
俺たちはあんたたちの敵になるつもりはない。
だが......この姿で幾ら言葉にしても簡単には伝わらないとわかっている。
言葉なんて......幾らでも嘘を吐ける」
ドレイクとしての姿を隠すことなく、ヴォイスは静かに語る。
客席からは逃げ出すかのように去っていく者もいる。
戦える者たちの目もまた鋭い。
「だから俺たちが言葉じゃなくて、音で伝える。
音楽は嘘を吐かない。
俺たちの真の気持ちを届けられる......そう信じている。
すぐに届かなくとも俺たちは奏で続ける。
届くまで......倒れるまで......。
あんたたちが俺たちをどう思っているか知らないし、知る必要もない。
ただ聞いて欲しい、俺たちの魂の音楽を......!」
ヴォイスが弦を弾き、魔法の音が高く鳴る。
「つうわけだ、オレたちからの愛の詰まった最後の一曲、聞いて行ってくれよな!
......しょうがねえから野郎共にもサービスしてやるよ。
愛は入ってないけどな!」
「うん、最後なんだし全力で盛り上げていくよ!
邪魔な帽子もなくて動きやすいしさ」
「あんまり暑苦しいのは......面倒臭いんだけど......。
仕方ないから付き合ってあげる」
「よーし。
オレ様も燃えてきたぜ!
行くぞ、うおおおおおおおおおおおおおおお!」
仲間たちも声を上げる。
ついでにソリッドは獣のように吠える。
「聞いてくれ......これが俺たちの魂だ!」
* * *
最後の一曲は今までのどれよりも熱く激しかった。
それは確かに蛮族故の暴力性や激情、闘争心として捉えられなくもない。
彼らはそれを否定はしない。
蛮族でありながらも伝えられることを探しているのだ。
「これが俺たちの音楽だ。
機会があれば......またこのステージで歌いたい。
いや......歌ってみせる。
どんな壁が俺たちの前にあろうとも挑み続けていく。
また、あんたたちに会えることを楽しみにしてる」
楽器を元の形状に戻し、彼らは一礼する。
それぞれのパフォーマンスを取りながらステージを後にした。
劇場は完全なる拍手喝采とは当然行かなかった。
だが、拍手の音は決して小さくもなかった。
* * *
「なんとか......無事に終えられました。
私も一安心です。
これから少しは大変かもしれませんが......私も彼らには負けてはいられません。
諦めず挑み続けていかねばなりませんね」
シィノヴィアの隣でネージャは語る。
まるで母のように彼女はステージから去る面々を見守っていた。
* * *
「教科書みたいな演奏ばっかりだと飽きるから。
たまにはこんな暴力的なのも悪くないわね」
デイジーは拍手こそしないが、それなりに満足そうであった。
「それにしても、また一つ面白そうなものが出てきたわね。
蛮族の楽団......いったいこの街でどうなっていくのかしら」
ふふ、と楽しそうに口角を上げながら。
デイジーは去っていこうとする。
もちろんカプリが追随しても阻みはしないだろうが。
* * *
「あの人蛮族だったんですね。
ちょっとショック。
でも、やっぱりかっこよかったな」
最後の演奏を聞き終えた後、アイリは拍手しながら感想を漏らす。
当の本人は去り際に手を振って、ウィンクして、投げキッスしてのサービス三昧。
かっこいいかについては、なんとも言い難いところである。
「フードの兄ちゃんも角隠してたんだな。
でも、兄ちゃん蛮族だけどいいやつだったぞ。
な、ヴェン?」
アポロは拍手し終えた後、ヴェンデルベルトの方へ振り向いた。
* * *
かくしてトゥルー・ソウルズの初回公演は幕を閉じる。
冒険者たちはそれぞれ、各々の場所を目指すことだろう。
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あんみつ@GMより
進行ですー!
とりあえずステージが終わるところまで。
演奏についてはハードでヘヴィでロックでメタルな感じです、たぶん。
次回進行において、エンディングを投稿しようと思っております。
その際やっておきたいこと、行っておきたい場所などございましたら、
どうぞ今まで通り行動予定として明記しておいてくださいませ。
もしなければ、完全私個人のチョイスでエンディング投稿を行わせていただきます。
また、エンディングに向けて名誉点の処理を先に済ませておこうと思います。
シィノヴィア、カプリは剣のかけら二つ分相当、2D6のダイスをお振りください。
ティキとヴェンデルベルトで二つ分相当、合計2D6のダイスを二人で振り分けてください。
その結果が今回獲得できる名誉点となります。
ティキとヴェンデルベルトの結果は合算します。
他にもし何かございましたら、どうぞ!