見極めの時
>「人いっぱいだな、すっげー楽しみだぜ!」
>「ちょっと、アポロあんまり恥ずかしいことしないでよ!」
「ほら、二人とも騒がない。笑われるよ」
もうすっかり仲直りは済んでいるようだ。二人は他愛無く言い争っているものの、互いに遺恨なく今この状況を楽しめている。
>「おれ、前のほうがいい。
後ろじゃ見えないし!」>「子供みたいなこと言わないの。
私も見えないけど......」
「なら前の方へ行こう。席が空いてなければ演奏の間、二人とも担いでいてあげるから」
そう言って空いてない席を探すと、観客の中にヴェンさんを見つけた。そういえば、一緒に行動していたはずのアポロがチケットを持っていたわけだから、納得だ。
まあ、アポロの二枚目は無駄になってしまったわけだけど。
>「あ、ヴェンだ!」
アポロも気づいた様子だった。私もそちらへ手を振って、前の方へ移動する。
***
さて。
ぐるりと会場を見回してみて、罠らしいもの、仕掛けなどがないらしいとは判断してみた。とすれば後は、その演奏を見て判断するしかあるまい。
>「今日は......俺たちのステージに来てくれて嬉しい。
俺たちは......その、そうだな......」
あれがリーダーだろうか。喋りなれないのだろうか、少し喋り方がたどたどしい。
>「だー、もう、ヴォイスはそういうの向いてないんだから、オレに任せな。
観客席にいるガールからレディ、マダムまでみんな。
――愛してるぜ」
うわあ。やっぱりいるんだ。
ひとまずアレは置いておいて、アイリはやっぱりぽわんとしている。
アポロの反応が少し気になって、こっそり顔をのぞき込んでみた。
>「今日は俺たちの......この街での最初のステージだ。
俺たちのことをあんたたちがどこまで知っているかは知らない。
あんたたちが俺たちをどこまで受け入れてくれるかもわからない。
それでも......俺たちは伝え続けるつもりだ。
真の魂を音に乗せて、だから聞いてくれ......!」
「......」
演奏が始まった。
力の漲るような演奏が。
PL
前の席に移動します。
23:31:23 キャスパー@ティキ 見識 2d Dice:2D6[2,6]=8