この世界は全て舞台

 カプリ(一葉_3) [2016/06/24 01:01:42] 
 

> 「私はデイジー・セレナディア。
>  あなたのことは知ってるわ。
>  チケットなかなか売れたみたいね。
>  おかげで、この街の状況がひとつ変わった。
>  良い方に向いたか悪くなったかはわからない......でも面白くなった気はするの」

「面白くなったなら、それが一番よ。きっとね」

 少なくとも私にとってはそうだ。
 退屈ほど唾棄すべきものはない。

> 「なんて、長話をしていたらせっかくの舞台を見逃しちゃうわね。
>  行きましょう、荒々しい彼らの歌を聞きに」

「ご随意に、スィニョリーナ」


 * * * * *


> 「なかなかに大盛況ね。
>  早めに買っておいてよかったわ」
> 「私たちの場所はあそこの方かしら?」

「そうみたいね」

 鬱陶しい人混みを縫うように進みながら、紙切れをちらと見やる。
 位置はステージから近くもなく、遠くもなく。
 私の背丈ではステージはあまり見えないけれど、構わない。
 私は彼らの音楽を聴きに来たのだから。

 椅子に深く腰掛けると、目を閉じてそっと手を組んだ。

> 「今日は......俺たちのステージに来てくれて嬉しい。
>  俺たちは......その、そうだな......」

 ステージの方から声が聞こえる。
 目を閉じたままくすりと笑い、誰に言うでもなく私は小声で呟いた。

「"この世界は全て舞台"
 "されば人間悉く役者に過ぎぬ"
 "世間という舞台の袖を忙しく往来し"
 "唯各々の役割を演じているだけに過ぎぬ"」

> 「行くぞ......!」

 ステージから音が溢れ出す。
 それはまるで、楽器に封じ込められた力が、鎖を引きちぎって放たれるように――


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PL@一葉より:
 たまには暴れないでもいいかなって(''*