籠ひとつ

 シィノヴィア(紫乃) [2016/06/28 21:22:28] 
 

あっという間に時は過ぎ、次が最後のようだ。
だが、無事に終わるというわけにはいかなかった。

ヴォイス殿のフードが落ち、客席がざわめく。
外へ出ていった者もいるが、街の上層の者には蛮族であることの話を通していたはずなので、
そういう方面での大ごとにはならないだろう。

さて、どうするのだろうか。
ステージの5人と、隣のネージャ嬢を見守る。

>「聞いてくれ......これが俺たちの魂だ!」

最後の曲が始まった。

 ―*―*―*―

音がぶつかってくる。
今回のステージの、どの曲よりも激しく、荒々しい。
ともすれば、飲み込まれてしまいそうなほどの。
むき出しの生命のような音だった。

>「これが俺たちの音楽だ。
> 機会があれば......またこのステージで歌いたい。
> いや......歌ってみせる。
> どんな壁が俺たちの前にあろうとも挑み続けていく。
> また、あんたたちに会えることを楽しみにしてる」

ステージの端に消える5人に、大きな拍手を。

>「なんとか......無事に終えられました。
> 私も一安心です。
> これから少しは大変かもしれませんが......私も彼らには負けてはいられません。
> 諦めず挑み続けていかねばなりませんね」

「信頼を得るには時間がかかるものです。
 大丈夫。"情"が、人族社会の甘さであり、強さだから。
 内に同じ心をかかえているのなら、きっと、共鳴する。
 だから、奏で続けてください」

足もとに置いていた花籠を出して、ネージャ嬢へさし出す。

「ささやかですが、祝いです。
 今夜はお誘いいただき、ありがとうございました」

シィノが選んだ花を詰めてもらった花籠は、とてもにぎやかなものになった。

澄んだ空色の花。
大輪の黄色い花。
華やかな白い花。
凛とした青い花。
艶やかな赤い花。
かわいらしいオレンジの花。

普通見かける花束のような調和など一切ないけれど、互いの色を映しながら
ますます鮮やかに咲く姿からは、花そのものの命の強さを感じられ、悪くないと思う。


――――PL――――
21:21:16 紫乃@シィノ ≫ 剣の欠片 2d6 <Dice:2D6[3,1]=4>