言葉よりも強く
ノックに答えてくれたのは、ラルヴァの青年。確かスラップと言っただろうか。
「ん、ふさふさなのは同じだけど、ネージャじゃねえな。
誰だ、お前?」
ネージャと言うのは誰だろうか。彼らの仲間であることは間違いなさそうであるが。
「こんばんは。私はヴェンデルベルト・S・ライゼトラウム。どうぞヴェンとお呼びください」
人違いであっても扉を開けて貰えたのは幸いであった。礼儀を持って挨拶をしていると、その後ろからまた人影が見えた。
「あ、さっきお会いした方ですね。
もしかして見ててくれたんですか?」
「はい、先ほどぶりですね。おかげ様で小鳥を見つける事が出来ました。有難うございます。
えぇ、勿論拝見させていただきました」
友好的に接して貰えるのは嬉しいものだ。あんな事があった後であるから、少しは警戒されるかと思ったのだが。
格たる信念を持っていれば揺るがないと言う事なのだろう。
「......部屋に入れたらいいんじゃないか」
そう言ってくれたのはドレイクのヴォイス殿。あぁ、彼はステージ上で見せた姿そのままらしい。
お言葉に甘えて部屋に入らせて貰うことにする。
「来てくれたんだな。
......嬉しい。
実際のところ、どうだった?
あんまり人の耳に合う音だとは......思ってないが」
なんと。あんな情熱的な音を奏でておいて、彼は自信がないらしい。
では僭越ながら、この老体が少しばかり感想を述べるとしよう。
「公演開催おめでとうございます。まずはこれを受け取っていただけますか」
ヴォイス殿が白かったので、短絡的に白にしてしまった花束。けれど彼らの心根には合っているような気もする。
「私はあまり音楽について詳しくありません。けれど、あなた方が音を楽しみ、情熱的に奏で、なにがしかの信念を持ってここにいる、と言う事は分かりました。
あの音を、私はこれまでに聞いたことがない。おそらく、あなた方にしか出せない音なのではないかと思います。
優劣を語るのであれば、万人に受け入れられるものではないかもしれない。
けれど、見ましたか。講演が終わった後の会場を。熱狂じみた瞳をしていた人がいたのを。
あなた方の正体を知って、それでも構わないと惜しみない拍手をステージに向かってしていた人の姿が、見えましたか」
ヴォイス殿を見上げる。フードを被っておらず。ドレイクの角が見える。彼が本気を出せば、私など赤子の手をひねるよりたやすく殺せるであろう、その手を取って、私の左胸へ当てる。
「分かりますか。あなた方の音を聞いてからずっと、この心臓は高鳴っている。
それがどういうことか、あなた方には分かりますか?」
◇ ◇ ◇
「ちょっと来るの遅くない?
あたしは結構なる早で来て欲しかったつもりなんだけど。
何のために妖精に呼んでもらったと思っているのよ」
緑の森の奥で、テンペストは相変わらず暇そうにしていた。暇であるから私達が呼ばれたのであるが。
「待たせたってことは当然覚悟してるんでしょ?
ちゃんと満足させてくれないと憂さ晴らしに使っちゃうからね。
タビットなんかぴゅうと吹けば飛んじゃいそうだし」
流石大精霊。怖い事を簡単に言ってくれるものである。
ティキの話を先にして貰い、次に私の話をすることになった。
とは言え、蛇足になりそうであるが。
公演が終わった後にして貰ったサインと、古代の楽器。それから。
さて、私達の話に満足して貰えるだろうか。
PL柑橘より
お疲れ様でした!
サイン貰ったヤッター!古代の楽器も見せて触らせてもらったヤッター!角とか鱗も触らせてもらったぜヤッター!パンフレットもゲットしましょうねヤッター!