【A-1-2】人形師の娘
心を繋ぐ魔剣についてアリサは少し聞き覚えがあった。
一つはどこかで聞いた古い昔話の中で。
人は皆心の中に世界を持っており、その世界と世界を紡ぐ剣があることを。
そして更にもう少し、思い出したことがある。
魔剣は二対の剣になっている。
片方は心を作る白い剣、もう片方は心を壊す黒い剣。
白い剣の世界には本来であれば穢れたものはなく。
穢れや歪んだ理を齎すのは黒い剣であるそうだ。
* * *
玩具の街は人間が歩いてはいけないらしい。
兵士の格好をした人形がアリサに向けて言い放った。
>「取り敢えズ、話出来ソーなのハ地下にいんノナー。
> マズはソッチ行くカー。」
そこでアリサとリリは人形たちの忠告の通り地下へ降りることとした。
中心にいる一体の女性の人形はゴージャスな衣装を身に纏い、王冠を頭に乗せている。
そんな彼女もまたアリサが地上をうろついていることについては渋い顔をしていた。
>「ジャーナー。」
リリで手を振ってみようとも反応はほぼない。
むしろ数体の人形は追い払うかのような手の動かし方をするくらいだった。
* * *
地下へと降りられる道を行けば。
そこは地下街になっていた。
地下街と言ってもそれなりに明るい。
どうやら多数の魔法の明かりで照らされているようだ。
それに周囲の建物は綺麗に整えられている。
地下といっても不潔な感じはせず、むしろ整然とした感じだ。
だが、向こう側に行けば行くほど若干綻びが見え出してくる。
「あなた、上から来たのね?
あまり見ない顔だけどもしかして他所からきた人かしら?」
アリサとリリが降りてきたところを、ひとりの女性が話しかけてきた。
金色の緩やかなウェーブがかかった髪をして。
白いワンピースを身につけた女性である。
「地上は特権階級の人形族しか留まることができないのよ。
少しでもとどまる権利を持っているのは人形師の者だけ。
一般人は上に出ることすら本来は許されないわ」
そう話す彼女の手には籠があり。
更にその籠の中には布や生地が入っている。
大きさ的に人のものではなく人形用のものだろう。
「それにしてもあなたの持ってるその人形。
一人じゃ動けない......廃棄品なのね。
あまり人に見せびらかさないほうがいいと思うわよ。
一般人にとっては絶好の八つ当たり先だから」
ついでに彼女からアリサにもう一つ忠告。
この世界では自ら動くことのできない人形は最も低い階級――廃棄品であるらしい。
だからあまり表立ってみせたりするべきではないとのことだ。
「少なくともあなたも人形についての知識はあるんでしょう?
だったら普通にさえしてれば悪いことにはされないと思うわ。
ねえ、そういえばあなたの名前はなんていうの?
わたしはバーバラ......一応人形師よ。
何かあったら頼ってくれて構わないから」
バーバラ、彼女はやはり人形師の階級であるらしい。
アリサに話しかけたのは彼女なりの気遣いもあるだろうが。
バーバラから見てアリサも近い立場だと見抜いたこと、
そして彼女の現状から感じられる余裕があってこそだろう。
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あんみつ@GMより
アリサとリリルート進行です。
とりあえず情報を一旦整理しようの巻。
見識判定の結果上記のことがわかります。
また女性の人形については描写のとおりです。
【分類:その他】に【人形族】【人形師】【一般人】【廃棄品】を登録しておきます。
概ねアリサは【人形師】、リリは【廃棄品】相当の扱いを受けます。
また【NPC:女性】に【バーバラ】を登録しておきます。
他の部分についてはお好きにどうぞ。