マイドリーム
「ちゃんと追ってきたな。
飛び出してすぐ、手の届かない空にいた。暗い雲に溶け込んでいるけど、わずかな動きと嫌な雰囲気のおかげで、輪郭が見える
ここからだと見やすいだろう。
あの集落が暴力によってなぎ倒されるところがさ」
「集落...?」
乾いた音がした後に、上からドカンと響いた!吹き出す炎の向こう側、さらにてっぺんのほうで影かわらわら出てきて、そのまますごい速さでずり落ちてる
一目で危ない感じがする。しかも、わたしたちに似た臭いもある
「知ってるか、本来人の心には穢れがねえんだ。
お前みたいな呪われた存在なら多少例外があるが......所詮多少だ。
それ以上の穢れはな、オレが持ち込むんだ。
世界の心を歪めて、その歪みから穢れをばら撒くのさ」
「なに?どういう意味?
難しすぎてわかんないよ!!」
「穢れをばら撒いたら、あとは心の世界が壊れるのを眺めるだけ。 オレはまさに高みの見物ってやつさ。 最初の標的は妖精たちだ。 ちょうどいいだろう、お前ら呪われた人種じゃわかりあえないんだからな。 逆に清々するってもんだろうぜ......ハハハ!」
聞き終わる少し前に、直感が足を全力で動かす。カバンは途中で外して、脇に投げた
道中で他にできることがない頭が、徐々に整理されてく
あいつが色々呼び出せるすごい力を持っていて、面白半分に壊すことを楽しんでるのはなんとなくわかった。しかも、自分自身では何も成そうとしない悪だ!
直接戦闘に参加しないのはありがたいことかもしれないけど、複雑な気分。メティシエ教団の、趣味が悪い幹部みたいで腹が立つ
そして今、遠くから来る敵に、妖精の集落が狙われている。スミスさんが言ってたのは、あの燃えてるところなんだろう
そんなの許せない! なんでだろ
...きっと、わたしの目標だからだ。憧れだから
穢れをすごく嫌がるらしい妖精と、ナイトメアを白い目で見る人たちが重なる。本当はまだ直接話したことはないんだけど、理不尽な怒りを、同じようにぶつけられるんじゃないかなあ
まるで妖精の存在が、彼らの代表みたいでさ。簡単には、なかよくできないと思う
だけど不可能じゃない。リナリアさんはできたし、神様も言ってる
長い時間と大きな困難を越える必要がありそうだけど、いつか必ずその日がくる。それまでは努力を続けるんだ
もし、もしも妖精がわたしを認めてくれるなら、突き放してくる人も同じように認めてくれるはずだ。その確信が持てる
そうしたら、お父さんとお母さんは正しかったことになる。他のナイトメアだって認めてもらえて、みんなで楽しくすごせるはずだ
ここにたどり着くのがわたしの夢だ!生きる意味なんだッ!
それじゃあやっぱり、助けに行かないとね。まだ顔も合わせてないのにメチャクチャにされたら、できることもできなくなる
...とっさに鎧を置いて来ちゃったけど、返り討ちにされたらどうしよう。いや、戻ってたら間に合いそうもないし、敵が強かったら接近戦は厳しいから、あってたのかな?
もっと冷静になれ!"工夫せよ。思考せよ。蛮勇は勝利を遠ざける"
......もし敵が穢れを持っているなら、"グレンダール様"の力が有効のはずだ。どっちにしても、これにかけるしかない
まずはちゃんと見える程度、魔法の射程内に入るまで接近しよう!
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PL玉鋼より
この世界は、タタラの無意識を表しているような気がしてきました。誰もいなくて暗い火山とか、懐かしい工房とか、上のほうにいる妖精とか、スミスの台詞とか!(バーナム効果)
蛮族の先頭から33mの距離まで接敵します!