【C-1-1】砂の上での空腹感
デニッシュは漆黒の中にいた。
夜の闇というよりは何もない無の色だ。
無いといえば今デニッシュの足元にも何もない。
落ちているのだ。
何もない場所へ落下速度はゆっくりと。
「......える......かい?」
声が聞こえた。
それは耳からではなく心に響く声。
言語という概念には囚われないが、意味を知ることのできるもの。
「......聞こえるかい?
ボクは白の心。
心と心を繋ぐ魔剣の半身さ」
声がはっきりすると同時に無の中に光が生まれる。
白く発光するそれは、ぼんやりと人の姿をとっていた。
形状的には人間の少年のものであろうか。
「ボクの役目は心を作ること。
そんなボクはふとあることに気がついたんだ。
簡潔に言うと、キミの心は狙われている。
ボクと同じ魔剣の半身である黒の心によって」
白の心が話している間もデニッシュは下へ下へと落ちていく。
緩やかに、でも確実に。
「だから、ボクはキミをキミの心へと誘うことにした。
ボクは信じて見守ることしかできない。
黒の心の脅威に打ち勝つことができるのは、強き心の持ち主だけさ。
ボクはキミたちがそうであると信じている」
どこまでも落下していたはずのデニッシュであったが。
ある段階で足が何かに触れ、止まるのを感じる。
「キミが触れたのはキミの心の世界の一つ。
キミの力だったり想いだったりの一片が形となった世界。
その世界こそが黒の心、穢れや神の摂理から外れた者たちの標的さ。
だけど諦めないで、怯えないで。
信じていれば......心と心はきっと触れ合うから」
白の心が最後の言葉を紡げば。
デニッシュを包む無の黒に閉ざされた世界は光によって包まれていき。
――その姿をデニッシュの目に映す。
* * *
砂、砂、そして砂。
それがデニッシュが初めて見ることのできた景色だ。
しかも砂といってもその色は灰に近く。
この砂漠からはほとんど命の営みを感じられない。
一匹の虫すらおらず、一本の草すら周囲には生えていない。
ただ砂漠の先に石造りの街らしきものが見えてはいる。
これまた砂漠と同じ灰色で、誰か住んでいるのかすらわからない。
――いや、少なくとも人は住んでいるようだ。
街の方角からデニッシュに向かい、歩いてくる人影があった。
どうやら人間の男性のようだ。
短めのスポーティな黒髪で色黒の肌。
背中には弓を背負っている。
彼はそのままデニッシュの傍までやって来て。
「こんなところで何やってるんだ?
戦えそうな格好だし、あんたも泉が目当てかい?
んなら、オレと一緒だな」
気さくな態度で話しかけてきた。
どうやら彼は泉を目指しているとのことらしい。
ちょうど彼に話しかけられたときのことだった。
デニッシュの腹が音を鳴らす。
この時に自覚することだろう、なんだかデニッシュはお腹がすいているのだ。
「なんだ、腹減りなわけ?
しょうがないな、オレのやつをちょっと分けてやるよ。
ほら、食いな?」
男は自らの袋をごそごそと探し出し。
デニッシュに差し出したのは一個のプレーンな丸いパンだった。
あまり形も良くないし、素材も良くなさそうだ。
デニッシュの方がいいパンを焼けるだろうか。
「パンの代わりに一個お願いがあるんだけど、聞いてくんない?
オレ、今から泉を目指すところでさ。
ほら、泉の周囲ってたまに過去の遺物とか動いてんじゃん?
だから、あんたみたいに戦える相手が一緒だと心強いなって。
ま、無理にとは言わねーし、パン食っても返せって言わないから安心しな」
弓を持った男は泉に行く際の仲間を探しているようだ。
パンを食べた場合も無理に連れて行くつもりはなさそうだが。
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あんみつ@GMより
それではセッションを開始させていただきます(*´∀`*)
こちらデニッシュのカテゴリです。
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本文前半部は心の世界まで至るシーン。
【NPC:男性】に【白の心】を登録しておきます。
心を繋ぐ魔剣について見識判定が可能です。
目標値は秘密です。試してみたいならダイスをお振りください。
本文後半部は心の世界に至ったシーンです。
【分類:地名】に【ブレッド・デザート】を登録しておきます。
デニッシュは次の行動を選択してください。
具体的なものは以下の2つです。
・弓の男に協力する意思を示す
・弓の男に協力しない意思を示す
他にも何かあればご自由に行動ください(*´∀`*)
パンについては食べても食べなくても構いません。
ただ、お腹はすいてます。
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