目には目を。歯には歯を。パンにはパンを。
>「地獄か......あながち間違っていないかもしれないな。
実は街の中で誰かが死ぬと、いつの間にか死体が消えちまってるんだ」
まあ、夢だしな。その辺はあんまし重要じゃない。
>「異物っていうのは、かつての文明の遺産。
正確に言えばゴーレムの類だな。
昔は魔法文明の王国があったとかいう噂だぜ。
今となっちゃ魔法なんて何もない、ただの灰色の砂漠だけどな。
ちょっとだけ便利な遺物が砂漠にあったりはするもんだが」
ゴーレムか...
よく知らねーが、生き物じゃないなら食えねーことには変わりないな。
まあ、それもそれほど重要じゃない。
むしろ最も重要なのは...
>「ここは常に熱くも寒くもねえんだ、まるで空気っていうものが死んじまったみたいに止まっている。
だから暖のために炎を使うことはないし、食料がないから料理に使うこともねえ。
水も貴重だから風呂を沸かしたりもしねえし......正直火なんて使ってる奴は滅多にいねえ」
だと思ったよチクショー!!!
なんつーデタラメな世界だ!
できないとわかると、尚更パンを焼きたくてしょうがなくなってきた。
>「ただ炎を燃やす遺物が幾つか残っているらしくてさ、使う奴はそれを使っているみたいだ」
「...! そいつはどこにある!?」
それこそが最も重要だ!
泉までの道程は、拍子抜けするほどあっさり到達した。これといった障害もなく...つーか本当に文字通り何もない道程はむしろ精神を消耗させた。
なんなんだこの世界は!?
暑くも寒くもなく、危険な動物も山賊も話に聞いたゴーレムすら出ない。
「お前らなんでこんなとこに住んでんだよ...」
夢だとわかってもその理不尽に突っ込まざるを得ない。
とにかく、早く水を汲んでこんなとこはさっさとおさらばしよう。
たとえ怪しい街でも、目に優しくない灰色一色世界よりはましだ。
>「......それ、昔の文明の遺物じゃねえか?」
「...お?」
ベーグルに言われて足元を見れば、何やら紋様の入った箱が落ちていた。
>「やったな、デニッシュ。
たぶんそいつも持っていけばいいパンと交換して貰えるぜ!」
確かにこいつはなかなかの価値がありそうだ。用途はさっぱりわかんねーけどな。
>「んじゃ、いいみっけもんもしたし。
とりあえず街に帰るか!
あー、早く上手いパン食いてえなあ」
「同感だ。これでまともなパンが食えなけりゃ暴れるぞ...」
というか、俺のフラストレーションはそろそろ限界だ。
①まともなパンが食えない。
②パンが作れない。
③拳を叩き込む敵がいない。
①食欲と②創作意欲と③破壊衝動。
俺にとっての三大欲求が満たせないこの状況は、まさしく俺にとっての悪夢そのものだ。
この遺物で、パンよりも火を手に入れる方向で考えた方がいいかもな。
もしくは力ずくで火を手に入れるか?
そうすれば奇しくも①②③をまとめて満たせるな。
思考が段々物騒な方向へ進んでいる俺は、無意識に指をボキボキと鳴らしていた。
「そういや、結局パンの借りは返してなかったよなぁ?」
敵とも出会わなかったし、俺のやったことといえば、ベーグルと一緒に泉の水を汲みに行っただけだ。
クソ不味いパンとはいえ、他に食うものが無い世界での生命線を分けて貰った対価としては割に合ってない。
なら俺はベーグルに何をしてやるべきなのか?
考えるまでもない。パンの借りはパンで返す。
たとえそのパンがクソ不味かったとしてもだ。
――――――――PL
パン作りが好きなのに、日々の糧を得る手段として迷わず『冒険者』という道を選んだデニッシュは決して温厚な性格ではありません。
気に入らない奴を拳で粉砕することは、パン作りの次に大好きです(笑)
泉の水は《冒険者セット》にある水袋で汲んで、とりあえず街に着いたら美味いパンと交換してから、遺物と引き換えで火を探す方向で行動します。
「どうせ夢だから」とかなり大胆になっているので、気に入らない態度の相手には無言でグーパンを叩き込む勢いで聞き込みをします。
22:01:13 ヨ太郎@デニッシュ 宝物鑑定判定 2d+6 Dice:2D6[5,5]+6=16
22:01:46 ヨ太郎@デニッシュ 遺物の価値が分かった!