【C-2-1】襲われる工房
>「...悪りぃ、ちと野暮用ができたわ」
デニッシュは見つけた。
工房の奥へと入り込んだ黒い影を。
見つけると同時に駆け出した。
持っていたパンの残りはベーグルに託しながら。
「おい、デニッシュ!
どこ行くんだよ!」
ベーグルの言葉に耳を傾けず、デニッシュは一目散に走り出した。
カウンターの中にいた職員たちから非難の声が上がる。
だが今のデニッシュにとっては瑣末なことかもしれない。
彼にとって大事なのは目の前で浮かんでいる黒い影だ。
少年の形をしたそれは、不敵に微笑んでいる。
デニッシュはそんな影に向けて拳を一発。
交わすことなく確実に命中したはずだが、感触がない。
「ハハハ、いいねえ......ゾクゾクするぜ。
怪しい奴がいたらまずは攻撃する躊躇いのなさ、無鉄砲さ。
オレが実は悪い奴じゃなかったらどうするつもりだったんだ?
まあオレはお前みたいのじゃ触れることさえできない影、つまり悪い奴だからいいんだけどなあ!」
この存在は見た目の通り闇のような存在で。
殴るどころか触れることすらままならない。
「......にしても、お前を見てりゃよくわかるよ。
心があるから、敵を作るし暴れたくなる。
そんなんじゃ全てと繋がることなんてできやしない。
あの白い奴が願ってることなんて夢のまた夢さ、ホント馬鹿みてえだ」
黒い影は余裕そうに宙を飛び回りながら喋る。
どうやら彼の姿も声もデニッシュ以外には届いていないらしい。
「だからさ、オレが壊してやるわけ。
心を壊せば全てが一つになれる。
なんてったって、邪魔なものが何にもねえんだからな!
だからさ......」
黒い影は空中のある一点で立ち止まる。
そこで大きく手を広げた。
「壊してやるよ、お前の心も。
ここはお前の心の世界。
正確に言や、オレが幾らか歪めてやった世界だがな。
世界が崩れれば心も壊れる。
オレが世界ごと壊してやるよ、死より生まれた穢れた力でな!」
ドカンと大きな音がする。
聞こえてきたのは、工房の奥の方。
より詳細には、少し下の方か。
「オレはこの世界からパンすら消し去ってやるよ。
お前は残ったパンでも侘しく食べてればいいさ!」
無駄に嫌らしく高笑いを上げて、黒い影は闇に溶け、そして消えた。
代わりに駆け込んできたのはベーグルだ。
「急に飛び出してどうしたってんだよ!
てか何事だ、スッゲー音聞こえてきたけど」
周囲の様子は非常に慌ただしい。
なにやら動力室がどうたらという話も聞こえてくる。
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あんみつ@GMより
デニッシュルート進行です。
シーンの進行に伴いカテゴリを変更いたしました。
ヨ太郎さんはこちらのカテゴリにご投稿ください。
達成値的には命中するでしょうが、ダメージはありません。
データ的には「○通常武器無効」を持っているというところです。
明確な戦闘ではないので、練技分のMPは演出で使用していないことにしても構いません。
勿論使用しているままでも構いません。
【NPC:男性】に【黒の心】を登録しておきます。
次の行動についてはお好きにどうぞ。
音のした方を目指しても誰かに話しかけても大人しくパンを食べても構いません。
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