【C-3-2】黄金の海が続く世界
戦いには問題なく勝利したデニッシュであったが。
彼が負った傷は決して浅くはなかった。
一度はベーグルの薬品で治癒されたものの、まだ痛みは残る。
>「...悪い、頼むわ」
「任せな、ちゃちゃっと治してやるぜ」
デニッシュは万全の状態で備えるべく。
残った痛みもベーグルの薬師の技術で癒してもらうこととした。
――すっかり痛みも引いたデニッシュが見つけたのは紙束。
そこに書いてあったのはこの窯の、そして世界の真実。
>「くそったれが...!!」
気がついてしまったデニッシュはもはやその拳を――抑えられなかった。
>「おいベーグル、どけ」
「っちょ、どうしたんだよ?」
デニッシュはベーグルをぐいっと押しのけ。
窯の前へと向かう。
目の前の窯は今もパンを焼く準備ができているのだろう。
世界のエネルギーを犠牲にしながらも。
この世界の命を繋ぐパンを作る装置は。
この世界の人たちをパンで縛る装置でもあった。
生も死も犠牲にしてパンを作り続ける魔法の窯。
デニッシュは見過ごすことはできなかった。
例えベーグルが彼のことを止めようとも構わずに。
>「オラァアアアアア!!!!」
デニッシュが両手を叩き込めば、その衝撃で何かが壊れる音がする。
それと同時に釜の脆い部分がボロボロと溢れ出した。
「おい、デニッシュ!
......何やってんだよ!
お前、自分が何やったか理解してんのか!?
この装置が壊れたら俺たち全員飢え死になんだぞ......!」
ベーグルはわけもわからない様子でデニッシュに掴みかかろうとする。
その時の衝撃か。
はたまた避けた時の偶然だったか。
二人の動きの影響で、像が抱えていた輝く球が床へと転がり落ちて。
割れた。
「うわっ」
球の割れ目から光が飛び交う。
赤・青・緑・茶色。
どことなく暖かい色味を帯びた光が周囲を包み、広がっていく。
最初の異変は二人の足元だった。
柔らかい感触。
気がつけば足元には青々と草が茂り、ところどころには花が咲いている。
「え、なんだ......どういうことだ?
草に花――まさか......本物なのか?
......うお、地震だ!」
すぐそこに突如咲いた花を調べようとしゃがみこんだベーグルはそのまま倒れこんでしまう。
デニッシュもしっかりと立ってはいられないだろう。
足元が揺れている、いや突き上がってきているような感覚がある。
自然が戻ったことで地形まで変わっていっているのかもしれない。
ふと先ほどまで動いていた装置の方に目を遣ると、草や蔦に覆われて原型を失くした様が見え
た。
* * *
振動が収まり工房だった場所から外へ出てみれば。
世界はまさに一変していた。
頭上に広がるのは美しい青。
きらめく太陽と爽やかな風。
工房だった場所は小高い丘になっているらしく。
木々や種々の緑色で溢れている。
態々耳をすませなくとも、虫や鳥の鳴き声も聞こえてくるだろう。
あの灰色の街は丘を囲むように広がっている。
建物から出てきた者たちは皆驚きと感銘に満ちた表情をしているような気がした。
そしてどこまでも続いているような灰色の砂漠はというと。
命の煌めきに満ちた黄金の海へと変わっていた。
そう、雄大に広がる小麦畑である。
「オレ、やっと思い出したぜ。
今までどうして忘れてたんだろう。
オレとデニッシュが今こうして見てる景色がさ。
......オレたちがずっと生きてきた場所の姿だったんだ」
共に工房跡から出てきたベーグルは感慨深そうに麦畑を見つめていた。
「そういや、これでデニッシュもパン作れるな。
オレ、今の今までずっと動きっぱなしで腹減っちゃったよ。
さっき美味いパン食わせてくれるって言っただろ?
残念ながらオレは忘れる気はないぜ」
木々が戻ったことで薪を集めるのも難しくはないだろう。
今ならば、デニッシュはパンを焼くことができるかもしれない。
装置が作るような美味しくとも何もないようなパンではなく。
人が手で作るからこそ、味があるパンを。
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あんみつ@GMより
デニッシュルート進行です。
HPはベーグルが全快させてくれますね。
掴みかかってるベーグルに対してはそのまま捕まっても、躱しても殴り返しても構いません。
ベーグルは接近戦能力はありませんからデニッシュの思うがままです。
魔法の装置を破壊したことで世界に自然がカムバックします。
自然が戻ったことで木の枝を拾ったりして、
色々と薪を集めることができるでしょう。
薪が集まればパンを焼くことだってできますね。
勿論パンを焼かなくとも構いませんが。
お好きな行動をどうぞ!