【C-3-3】パン屋と誰かを繋ぐ世界
世界に自然が帰った後。
腹を空かせたベーグルはデニッシュにパンを作ってくれるよう頼む。
>「当たり前だろうが!俺が本物のパンってやつを食わせてやる!腰抜かすなよ?」
デニッシュの返答は勿論、是であった。
「よーし、言ったな?
オレは結構味だけなら美味いパンは結構食ってきたんだぜ?
まあ......その、味だけは、な」
ベーグルは今まで食べてきたパンのことを思い出しているのだろう。
貴重なパンは確かに美味しいものである。
だが、それは形だけの美味しさであった。
>「よし、ベーグル。お前は薪を集めてこい。俺は広場で準備しておく」
「しょうがねえな、その分いっぱいオレに食わせろよ?」
デニッシュがベーグルに薪集めを頼むと。
ベーグルはなんだかんだ言いながらも、集めに向かう。
その間にデニッシュはパンの準備を始める。
街に暮らす全員に配れるくらいの量のパンを。
ベーグルが持ってきた薪を使って、上手に焼けば。
デニッシュの手による――本物のパンがたくさん出来上がる。
>「さあさあ!本物のパンを食いたい奴はいないか!?」
パンの香りに誘われて。
街中から人が数多く集まってきた。
住民たちはデニッシュの作ったパンを受け取り、齧る。
「ああ、美味いな」
「ええ、ほんと。
あったかくて、やわらかいわ」
「思い出すのう、昔のことを。
わしらの傍にはこんなパンのように美味しいものが多くあったんじゃ」
「このパンおいしい!
おじちゃん、じょうずだね!」
疲れ果てた男性も。
痩せこけた女性も。
今にも死にそうだった老人も。
腹をすかせて泣いていた子供も。
皆、パンを食べることで幸せになる。
それはデニッシュのパンがとびっきり美味しかったからだけではなく。
誰かが誰かの為につくるというプロセスの踏まれた。
人が作ったパンを食べられるという幸せに触れたからだろう。
「マジでこのパンはうめえよ。
あんな装置が作るようなパンとは比べ物にならねえ。
オレはデニッシュの作ったパン、すげえ好きだぜ」
どうやらベーグルも大満足なようだ。
* * *
あっという間にデニッシュが作ったパンはなくなってしまう。
ベーグルは相当腹が減っていたらしく、そこそこな量を平らげていた。
そんな中デニッシュがふと気配を感じて振り向けば。
白い光に包まれた少年の姿があった。
「黒の心はキミの気持ちを悪意的に歪めたんだ。
キミはパンを作るのも食べるのも好きなんだよね?
その心を酷く解釈して生まれたのがさっきまでの世界。
でも、キミはそんな歪んだ世界を行動で正した。
......だからほら、見えてくるはずだよ。
歪みを生み出した正体がね」
美しい自然が蘇ってきたはずの世界。
一点だけ、ひどい違和感を覚えるモノがそこにある。
黒く深い闇に包まれた黒い扉。
それはアンデッドどもを呼び出した少年の影によく似た色合い。
「あの向こうはキミの心の外。
心と心を繋げるボクとカレの世界。
この世界の住人は向こう側に行くことはできない。
だけど諦めないで、怯えないで。
信じていれば......心と心はきっと触れ合うから」
黒の闇の扉はぼんやりと見ていると少しずつその姿を消していく。
まるで世界から逃げ去ろうとするかのように。
あまりぼやぼやしていれば、扉を開けることはできなくなるだろう。
それでも準備をする時間が全くないわけではなさそうだ。
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あんみつ@GMより
デニッシュルート進行です。
指輪は割っていただいても構いません。
その場合相当に美味しいパンになったことでしょう。
心の世界を守り抜き、歪みを正したことで黒の扉が現れました。
黒の扉は2時間ほどまでなら世界に存在し続けます。
その間であれば、事前準備を行うことも可能です。
ただすぐ戦闘があるかもわからないので、
あまり効果時間の少ない準備はおすすめしません。
他にも何かございましたら、ご自由にどうぞ!