パンを作って食ったら後は殴るだけだ
本当に美味いパンを作るのに必要なのは、特別な工夫よりも、当たり前の作業をどれだけ確実にやれるか、だ。
パン種を捏ねる。発酵させる。そして焼く。
言葉にすればそれだけの行程が、上を目指せば頂点が見えないほどの難行になる。
そして今は、今の俺にできる最高のパンを作れる。それだけの自信ならあった。
>「ああ、美味いな」
>「ええ、ほんと。
あったかくて、やわらかいわ」
>「思い出すのう、昔のことを。
わしらの傍にはこんなパンのように美味しいものが多くあったんじゃ」
>「このパンおいしい!
おじちゃん、じょうずだね!」
「そうだろうそうだろう!」
実際出来上がったのは、今の俺が作れる最高のパンだった。
そのパンを食べる皆の笑顔を見て確信できた。
>「マジでこのパンはうめえよ。
あんな装置が作るようなパンとは比べ物にならねえ。
オレはデニッシュの作ったパン、すげえ好きだぜ」
ベーグルも気に入ってくれたようで何よりだ。
「まだまだ焼き上がるから食え食え!」
ノってきた俺は次々とパンを焼いて配っていく。危うく自分が食う分までやっちまうところだったよ...
俺はパンが好きだ。
食べるのも好きだが、作るのはもっと好きだ。
こうやって自分が作ったパンを誰かに食べてもらって「美味い」と言ってもらえたらもう最高だ。
ふと振り向いたら、最初に会った白い奴がいた。
「今までどこにいやがったんだよ。...パン食うか?」
>「黒の心はキミの気持ちを悪意的に歪めたんだ。
キミはパンを作るのも食べるのも好きなんだよね?
その心を酷く解釈して生まれたのがさっきまでの世界。
でも、キミはそんな歪んだ世界を行動で正した。
......だからほら、見えてくるはずだよ。
歪みを生み出した正体がね」
白い奴が指し示す方を見れば、そこにあるのは黒い扉だ。
>「あの向こうはキミの心の外。
心と心を繋げるボクとカレの世界。
この世界の住人は向こう側に行くことはできない。
だけど諦めないで、怯えないで。
信じていれば......心と心はきっと触れ合うから」
「相変わらず言ってることはよくわかんねぇけどよ...」
材料を全部使いきって焼いたパンは皆に配り終え、俺の手には最後の一個が残っていた。
一口で食べる。
美味ぇ...
この世界に来てようやく食べたまともなパンの味は、我ながら格別だ。
「要するに、あの先にいる奴をブッ飛ばしゃいいんだな?」
パンを食ったらそれだけで準備は完了だ。
「じゃあな、ベーグル」
俺は迷わず黒い扉を開け、前へ進んだ。
――――――――PL
ベーグルは魔香草持ってないみたいですし、特に準備できることもないんでさっさと入ります。
巧みの指輪を1つ割り、MPは0で3点魔晶石が3つ...
これでいけるのか不安はありますが、行くしかない!