脱兎のように
ヴァーミリオンの呪歌による援護で一部蛮族の動きが鈍くなる。
これならば。
近くにいる敵から手あたり次第に投げつける。
「ありがとうございます、ルートさん!、ヴァーミリオンさん!
......1つ、2つッ!」
その異名の由来を、僕は目の当たりにした。
拳が雨のように降り注ぎ銃弾のように打ち砕くさまを。
数だけの手押しではない、一撃一撃が全力で放たれていた。
だが。
それはつまりそれなりの反動があるということで。
体勢を崩した撲殺執事は当然のように蛮族に狙い撃ちされていた。
1人ならばそのまま囲まれて終わりだったろう。
もちろんそうはならない。
先程のヴァーミリオンの呪歌が、ナマの神聖魔法が、アーレイの妖精魔法が、
僅かなりとはいえ僕の投げが。
「私たちに出会った瞬間、あなたた・・・」
「まぐれじゃあ、ないんだな」
「そしてこれで......とど、めッ! くらえ、『主人爆殺拳』!」
僕らの即興の連携が噛み合い蛮族共を打ち砕いた。
「みんなおつかれ。
ルート、ナディン、すごかったよ」
「ありがとうございます。
でも僕は殴るしかできませんし、防御は皆さんに頼り切りでしたし。
『バーチャルタフネス』がなかったらもっと痛かったでしょうし......」
「いえ。ノンケさんやバークさん、ヘイズさんが援護してくれるからこそ
前衛(ぼくたち)は全力で戦えるのです。こちらこそありがとうございます」
皆に礼を言う。
本当はそれよりも「守るべき者が背後にいる」という事実が
臆病な僕にとっては戦意を維持する上で大事なのだがそこまで言うのは恥ずかしい。
・
・
・
「さて、これからどうするかだけど...」
「コイツから話を聞いて、手がかりを探すってのはどうだろう」
「それが良いと思います。偉そうですし。
幸い魔法を使えるわけではないようですから、縛っておけば問題もないでしょう」
「ではそちらはお任せします。僕は周辺の警戒に入りますね」
尋問に心得もないし、性格的に向いていない。
それに一度襲ってきた以上二度目の襲撃の可能性も否定できない。
ならば僕は出来ることをするだけだ。
・
・
・
尋問しても大した情報はなかったようだ。
「まあ、こいつらはある意味おびき寄せられただけだろう。
俺の予感が正しければ、裏にいるのは蛮族でなく......」
む。相手が蛮族ではない論拠があるのか。
「カイルさん、ちょっとこっちに来てください!
ここにこんなものが......!」
途中で切られてしまった。気になるな。
「なんだ、これは......!」
「水でできた......魚?」
「そこから、水の妖精の力を感じます!」
「え?」
何の冗談だこれは。
そうして生まれるのは大きな波だ。
まるで巨大な口を開けた魚の顔のように。
......水魚の大口に捕らわれたら、そのままごくりと川の中だ。
「......っっでりゃぁぁぁぁぁぁ!!」
いつもの逃げ腰がほんの少しだけ早く身体を動かした。
倒れるような前傾姿勢から大きく大きく横っ飛びし、からくもその大口から逃れ切った。
すぐに姿勢を立て直す。
追撃は、他の敵は。
じゃない。他の皆は!
飲まれたのか!?
「頼む、間に合ってくれ...!」
急いでロープを取り出し川へ放り込む。
間に合うかは怪しいが何もしないよりマシだ。
――――――――
PL
(投稿が)間に合わなかった。
場合によってはスケイルレギンスで飛び込む次第です。
00:47:55 初志@ルート 波に対する回避判定 2d6+11 Dice:2D6[3,6]+11=20