蒼天の水神殿

 バーク(スキュラ) [2016/08/05 12:02:09] 
 

お姫さんとヴぁーミリオンが快諾した後でのオレの答えだ。
一瞬空気が...いや、水か...冷えるのを感じた。
すぐにヴァーミリオンが間に入ってとりなそうとしてくれる。

「バーグ君、今ここの場でそれは悪手だ。
彼女とその眷属がいるのだぞ、しかも周りは水だらけ
私達が何故この場に居るのか忘れたのかい?
彼女らはその気になればこの場の私達程度は好きに出来るのだよ。
だから真意を知るのは後からでも出来る。今は合わせてくれ」

 私は言葉を切ってバーグの肩を抱き
 諌める様に声を上げる。

異邦人であることの不利、そして調和と協調を説くヴァーミリオン。
たしかにオレたちは召喚された身。
無事に帰りたいなら素直に使命を果たすべきだ。
フェアリーウィッシュで呼び出された妖精が、妖精使いの願いを叶えようと健気に働くように。

「ん...」

ヴァーミリオンの手に、そっと手を重ねる。

 「バーグ君、我が同胞よ。
 確かに君の言葉もわかる。
 しかし、彼女らも必死なのだ!
 ここは私の為にも引き受けてくれないか!
 勿論、私は引き受ける」

 そう言ってバーグにウィンクした。

「ありがとうヴァーミリオン。
 そこまで言ってくれて...でも」

そっと。

「でも、ごめん」

それがヴァーミリオンの厚意を傷つけるものだと分かった上で、
それでも出来る限りそっと、ヴァーミリオンの手を払いのける。

「オレは知りたいんだ。
 ファウントの考えも、この世界とあの世界の関わりも、他のことも、なんでも」

視線が足元に下がる。

「気になったら聞かずにはいられないし、そうでなきゃ生きてる意味だってないとオレは思ってる。
 知りたいことは何でも知ろうとするのが自分の役割だって...でなきゃ、
 なんでナイトメアのオレが生まれてきたのかも、わからなくなっちまう」

心のなかにぼんやりとした明かりが見える。
それは曇りの日の太陽のような、あるいはヒトの顔のようなハッキリとしないなにかで、
でも温かかくて、見ているだけで心が安らいだ。

それはきっと、母親の顔なんだと思う。
オレを産んで、オレの角に腹を裂かれて死んだ、顔も知らないおふくろの。

オレが何かを知ろうとするのは、きっと一番知りたいものが永遠に失われているからなんだと思う。
他のことを知ろうとするのは、その代償なんだって。

視界が歪む。
どうやら水中でも涙は出るらしい。
ふと違和感を覚えて頭を触ると角が伸びていた。
きっと右目を覆う青い痣も現れているはずだ。
異貌化なんて何年ぶりだろう。
帽子を深くかぶろうとして、それは水に流されていたことに気づく。

「まぁ、死ぬときゃ一人で死ぬようにするよ。
 変なこと考えてるのはオレ一人だから、センセイ達のことは...ってさ」

心を落ち着けて、ぎこちない笑顔とウィンクをつくる。

..
...
....

ファウント...泉の御方はオレの問いに丁寧に答えてくれた。

オレたちが選ばれたのは、オレたちがギルマンと戦うところを見ていたから。
オレたちを信じるのは、オレたちの心を見通したから。
それが分かるのは泉の御方は水を通して異界を見、ヒトの心まで見通すから。

「......」

じっと、泉の御方の言葉を聞く。

オレたちがしなければ御方が自ら立ち向かう。
でもそれは古の盟約に反することだし、この事件の源にはヒトの姿がある。
ヒトの過ちには同じヒトがあたるべきだ...そう、ファウントは語った。

「わかった。
 疑うようなことを言ってすまなかった、泉の御方」

頭を下げる...おっと、体が浮き上がってくる。
水中を自在に動くってのも、なかなか難しいもんだね。

「あなたの言葉に応える機会を与えてほしい。
 盟約を守るために力を尽くさせてくれ」

姿勢を直し、ひざまずく。
普段から妖精たちには世話になってるし、こういう時に返していかないとね。

..
...
....


 そして水面から顔を上げれば――それはあった。

 水中から中に向かって吹き出し、伸びていく巨大な水柱。
 その中央に剣のようなシルエットがあるような気がした。

「こいつはすごい...」

どこまでも高く伸びる水の柱...帝都の噴水なんて目じゃないその高さ、大きさにオレは圧倒された。
穢れで弱ってもこんなことができるんだから、ファウントの本来の力とはどれほどのものなんだろう。
よく未だに生きてるなと、自分のことが笑えてくる。

 「あれは、蒼の神殿。
  その中央にそびえ立つのは水剣の柱。
  あの中にこの世界の軸となる剣があるのよ」

「...って言ってるよ、ナディン。
 ティファーヌさんが見たら泣いて喜びそうだね」

ラーナを認識できないルーンフォークのナディンに通訳する。
...ナディンはファウントの問いに迷いなく答えていた。
信じられようとそうでなかろうと、変わりはないと。
きっと心のなかに柱があるんだろう。
この水柱のような、太く、おおきな柱が。
すこし羨ましい。

 「あそこでさっき動いている人がいるのを見つけたわ。
  穢れた分際でこの世界の聖地に勝手に立ち入るなんて、ホントに腹が立つ。
  この手で懲らしめてやりたいくらいだわ」

 「えっと、一緒に来ます?
 その手でやつらを懲らしめませんか?」

「お、いいね。
 危ないことがあったらオレたちが守るし、色々教えてくれると嬉しいかも」

オレも穢れを持った身だしね。
神聖な場所に近づくなら、事情を知る案内人が居てくれると安心だ。

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-PLスキュラ-
あんみつGM、めぐりさん、めんどくさい輩にかまっていただき感謝感謝です。
こういうことがあるからTRPGはやめられません。
私が返せるものは文章しかないけど、精一杯書かせてもらいますね。

神殿を目指し、水の柱を登ります。


10:18:52 スキュラ@バーク 予備ダイス1 2d6 Dice:2D6[5,5]=10
10:19:10 スキュラ@バーク 予備ダイス2 2d6 Dice:2D6[2,2]=4