【E-1-3】冒険者たちの流れる先

 GM(あんみつ) [2016/08/26 00:02:51] 
 

ナマとバークの提案もあり。
四人は大通りまで繰り出すことにしたようだ。

大通りを行き交う人は少なくない。
彼らは幾つかの土産物を眺めながら。
今この瞬間を楽しんで生きている。

この今が妖精によって守られていたことだって。
邪教徒たちの手によって脅かされようとしていたことだって。
何も知らずに。

でも何も知らないからこそいいのだ。
それだから、ちょっとしたことでも気軽に楽しめる。
蛮族やアンデッドなど戦いに明け暮れる冒険者たちだって。
たまには忘れて楽しむのもいい。

「キャンディにビスケット、おいしいお菓子はいかがですか?」

「公園でパンやサンドイッチを食べながらゆっくりするのはどうだい?」

「今日は特別に大通りで開店!
 おしゃれな帽子売ってまーす!」

「一曲、聞いていかないか?」

「妖精の形のアクセサリー。
 指輪にイヤリングに、首飾り。
 あなたにぴったりなのもきっとあります!」

大通りを歩いていればいろんな声がかかることだろう。
そんな声を交わしていきながら、時間は過ぎていく。
お金があってもなくても、それぞれに過ごせばいいだろう。

   *   *   *

しばらくして、ヴォルディーク邸にカイルとミハイルが帰ってくる。
その顔はどことなく真剣味を帯びていた。

「おかえりなさい、カイル」

「ああ、ただいま......姉さん」

優しく迎えるセシリアに少しだけ顔の緊張を緩めるも。
カイルは冒険者たちに難しげな顔で言った。

「正直なところ、聞けたことは多くはなかったが。
 どうやらあの薬はあの時逃げた奴らの一人から受け取ったものらしい。
 そいつは弟の方の薬まで作っていたようだな」

カイルの言うあの時とはきっと。
ナマとセシリアを助けに行った時のことだろうか。
何にせよ、やはり彼らの上に誰かがいたことは事実のようだ。

「この先に何かがあるかもしれない。 
 それは勿論この街かもしれないし、あんたたちの街かもしれない。
 もし何かがあった時、俺はあんたたちを頼ることもあるだろう。
 俺は、俺たちは、あんたたち冒険者という奴らに何度も助けられてきたからな」

これから先冒険者たちはいろんな人と出会い、いろんな敵を倒し、いろんな経験をするだろう。
その中でカイルたちやこの街とまた交差することはあるのだろうか。

ちなみにカイルは今回の事件に関してそれぞれに謝礼を支払ってくれる。
口にすれば、街に繰り出す前に受け取ることもできるだろう。

   *   *   *

一方でルキスラに帰還したヴァーミリオンはセーラに依頼の結果について報告した。

>「問題が解決した際に精霊も新たな道筋を考えている様だった。
>気になるのであればセーラ嬢君も会いに行って来るといい。
>なぁに、道中の案内と精霊への紹介は私がしよう」

「まあ!
 つまりあなたは実際にその妖精と会って話したってことね?
 ......こうしちゃいられないわね。
 水の妖精がいるってことは他の妖精もいる可能性が高いわ。
 それにだとしたらあの伝承も、あの寓話ももしかしたら事実かもしれない。
 うふふ、忙しくなって死んじゃいそうね」

セーラが顔に浮かべたのは驚きと、それを容易に超える喜び。

「よかったら、私も案内して欲しいわ。
 その水の妖精が今まで何を見て、何を聞いて、何を感じてきたのか知りたいの。
 すぐに、とはいかないかもしれないけれど。
 いつかきっと、いえ......必ずよ。
 勿論その時が来たらエスコートしてくれるわよね?」

彼女はヴァーミリオンに願った。
機会があれば、ファウントのもとまで案内して欲しい、と。

   *   *   *

それからいろいろ。

――例えば。
コンチェルティアでもう少し過ごしてみたり。
セーラから予定より上乗せされた報酬を貰えたり。
ファウントに会いに行ってみたり。

いろんなことが冒険者たちを待っていたはずだ。
でもそれはまた、別の話だ。
次の冒険が始まるまでの、繋ぎのお話だ。
まるで川のように時には早さを変えて流れていく彼らの冒険の日々の......。


―――――――――――――――――――――――――――――――

あんみつ@GMより

こちらはエンディングになります。

こちらのカテゴリに投稿が確認でき次第、解放といたします。
また投稿がない場合も一週間後に全員解放とします。

報酬は完全確定後に募集欄にまとめとして上げさせていただきます。

それでは最後の投稿お待ちしております。