先立つものは大事なもの
合流後。
「ああ、そっちこそ。
お互い無事でなによりだよ」
少々の引け目を感じつつも握手に応じる。
あの時の判断を間違っていたとは思わないが、
それでも僕は助けに向かわなかったのだ。
「ふむ、私は一度帰ろうと思う。
此度の件の結果をセーラに行う必要もあるだろう。
「そっか。
帝都まで気をつけて、センセイ」
ヴァーミリオンが報告に向かってくれるらしい。
今回はお言葉に甘えるとしよう。
「あ、そうだ!」
「お土産です。」
ナマが急に何かを投げ渡してきた。
慌てて受け取る。
奇妙な青い二枚貝。
結界内にいるときに拾ってきたのだろうか...?
「え、あ、はい。頂戴致します」
異界の代物といえど、
僕に放れるということは安全な物と判断してよさそうだ。
「わたしは帰るよ。
もう全部終わったならきっと水は綺麗に戻るから。
みんなのおかげ......ありがとう!」
軽く頭を振って返答とする。
助かったのなら、それでよし。
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2番街の一角。
中でも立派で豪奢な建物がカイルの屋敷――ヴォルディーク邸である。
緊張してきた。
こんな豪奢な屋敷に入るのは父の営業に付き合っていたころ以来だ。
「俺たちは、先ほど引き渡した奴らの元へ行く。
あいつらには聞かなきゃいけないことがまだありそうだからな。
あんたたちにもかかわり合いがない話じゃないから......。
何か聞けたら、聞かせてやる」
カイルの姉の自己紹介もあったが気になるのはここか。
『因縁は糸のように絡まり、縄のように縛る』。
これ以上の厄介事もあり得るというのが実に気が重くなる。
まあ情報もろくに渡されていないような捨て駒。
何もない可能性の方が高いだろう。
今だけはそう楽観しておこう。
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その後。
「私はこれからヴォルディーク大通りに観光にでも行こうと思ってるんですが、
どなたか一緒に行きます?」
「ナディンとルートも行かない?
美味しい店でも探そうぜ」
「はい、僕も一緒に行きます。
いい加減カプセルでない食事もしたいところでしたし」
お誘いが入る。
疲れがないわけではないが、初めて来る街。
興味もある。
「骨休めも必要ですか。喜んでお付き合いしましょう」
美味しい店、か。
この街にも特産品や名物があるのだろうか。
知っている風なナマに聞いてみるのもいい。
未知の街の料理に期待が...。
「あ」
そして思い出す。
まだ報酬を受け取っていないこと。
そして財布の中身を。
「10ガメルしかない」
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PL
10ガメルあれば普通の食事くらいはできた...はず。
エンディングまであと少し。
21:03:42 初志@ルート 剣の欠片 1d6 Dice:1D6[3]=3