新たな出会い
手羽先亭で新たに入った仕事は、エリックさんからのものだった。
依頼に興味のある人はここからエリックさんの家に直接行き、
そこで本人との話を聞いてから出発する。
今回僕は一人だ。
いつも一緒の彼女はいない。
お誘いはあったのだが、より危険な仕事が入り行けなくなってしまったのだ。
だが、それは同時に新たな出会いがあるということでもあった。
僕は、居合わせた人にまずは挨拶をする。
「アメリアさん、ルークさん。ご無沙汰しています。」
「初めまして、グレースと申します。よろしくお願いいたします。」
アメリアさんとは僕が最初の仕事で一緒だった。
冒険者の女性達は強く、逞しい方々が多い印象だが、アメリアさんは違う。
そういう環境からか、とても女性らしい印象が強かった。
ルークさんは、僕よりも後からここに来たエネルギッシュなシャドウの青年だ。
でも既にそれなりの実績を上げているようだ。
アメリアさんに対してそれなりに好意を抱いている。
僕はたまたまそういう局面に初めて彼と出会ったのだ。
...まあ、理解できる。
その後日に図書館で彼と偶然会うことになった。
その時は僕のほうが彼女と一緒だった。
今回の仕事で来られないのは述べた通りだが。
こんな感じで周りに声をかけ、僕が仕事の話を振ることにした。
「エリックさんという絵本の作家からの依頼です。
絵本の中に入って物語を継ぐ、まあ、一言でいえば物語の一員になるんです。
独特の世界観が味わえる素敵な世界ですが、
想定外なモンスターが出る可能性もあります。
宜しければご一緒しませんか?」
ルークさん、アメリアさんは予想通り乗ってくれた。
>「そのお仕事、私もご一緒してよろしいでしょうか?」
見ると白い鱗の竜族の女性のやや控えめな声。
リルドラケンの知り合いは手羽先亭のスタッフ以外は初めてだ。
「興味を持たれましたか?ですよね。もちろん大歓迎ですよ。」
愛称はセスと呼ばれているようだが、僕はセスさんと呼ぶことにした。
* * * * * * * *
ちなみに、本の世界に入った後、いきなり別行動になった。
物語の重要人物の所に振り分けられるのだ。
僕は王子だったが、仲間は姫や魔女に振り分けられた。
今回もその可能性があることを道中話しておこう。
あと、そうだ。ルークさんには大事なことを言っておかなければ。
「額の目は隠したほうがいいです。
物語の住民はシャドウという種族を見慣れていないですから。」
前の仕事ではシィノさんが村人に恐れられた。
仮面を被っても対策にはならなかったのを思い出す。
もちろん住民に敵対していた相手と一緒だったせいでもあったが。
どちらにしても隠したほうがいいだろう。
ルークさんはバンダナで額を隠すようだ。
「肌の色は大丈夫ですよ。暑い地方の出身者ならもっと濃い方もいますから。」
* * *
「エリックさん、ご無沙汰しています。今回も宜しくお願いいたしますね。」
前回と同様に、彼は一冊の本を提示した。
ランプを巡るストーリーだ。
開かれたページの空いている場所。
ここにサインをすると本の中に入れる。
そこから僕らはこの本の登場人物になるのだ。
僕は皆が書いたあと、最後にキッチリとわかりやすい文字でサインをするだろう。
今回も別行動になるのか、みんなと一緒になるのか。
それはすぐに判明することになる。
* * * * *
コルチョネーラです。
皆様宜しくお願いします。
導入は臨機応変に替えられますので、投稿を確認したら直しておきますね。
グレースは周りに声をかけ、興味があった方と一緒に家に向かいます。