愛って何でしょう
白い光に包まれて、気が付くと私は――
「あら、あら」
ここはどこでしょうか?
グレースさん、アメリアさん、ルークさんの姿は見えません。
皆さんどこに行ったのでしょうか?
とても熱いですが、夏のルキスラのような湿った暑さではなく、
からりとした乾燥した暑さです。
まるで砂漠みたいですね。
足にも、さらさらとした砂が絡みついてきます。
周りを見回すと、ゆったりとした服装の方々が行き交っています。
確かああいう服は砂漠地帯に住む人々が好んで着る衣装だと私は記憶しています。
ということは。
みたい、ではなく本当に砂漠にいるようですね。
人も多いという事は街の中なのでしょうか。
私、砂漠に来るのは初めてです。
リーゼンにも、ザルツにもこういった場所はありませんでした。
足に砂が絡みつく感覚も、照りつける太陽も、遠くに見える宮殿もすべてが新鮮です。
ここには他にどういう物があるのかしら。
砂漠にはころころ転がる不思議な草があるって聞いたこともあります。 また、背中にこぶのついた運搬用の動物もいるとか。
一度見てみたいものです。
そうだわ、折角だから妖精さん達も出してあげようかしら。
そんなことを考えている間にも、往来する人々は私を邪魔そうに避けて行きます。
あら、流石に道の真中で立ち往生しているのは迷惑でしたね。
尻尾を踏まれる前に目立たない場所に行きましょう。
―ドン。
もうちょっと早くどいているべきでした。
私の背中に誰かがぶつかってしまったようです。
幸い尻尾は踏まれていません。
振り返ると、そこには黒い布を纏った女性がいました。
>「すみません、急いでいたもので」
「こちらこそ道の真中でぼうっとしてしまってすみません」
本当に急いでいたようで、簡単なお辞儀でしたが、
何となく気品を感じる振る舞いでした。
彼女はそのまま往来の中へと消えていきました。
「...あら?」
足元に何か落ちています。さっきまでは何もなかったはずです。
今の女性が落としていってしまったのでしょうか。
拾い上げてみると、それは首飾りみたいでした。
青い宝石が埋め込まれた、高価そうな物です。
彼女が消えた方向を見ても、黒い服は見えません。
路地裏の方へと向かったのでしょうか。
早く彼女を探しに行かなければいけませんね。
そしてもう一つ、手に何かを持っていることに気が付きました。
これは私も拾った記憶がありません。
桃色の、本に挟む栞のような物です。
見たこともない文字が書き込まれていますが、
何故か私はその内容を理解することができました。
>『物語の登場人物には各々の役割がある。
> 桃の栞を手にした者よ。
> 世界の中で愛の物語を紡げ......』
「......」
そういえばここは絵本の世界でしたね。
決して、初めて見る砂漠に浮かれて忘れていた訳ではありませんよ。
愛、愛ですか。
一言に愛と言っても沢山の種類があります。
男女間のそれを始め、隣人愛、親子愛、親愛。
全てが尊く、美しい感情です。
ここで語られているのは、男女間の愛、恋愛なのでしょう。
とある唄には愛とは悔やまないこと、躊躇わないことと謳われています。
迷いなく悔いのない選択をしていけば、必ず皆が望む愛へと辿り着ける。そう信じましょう。
まずはあの女性に首飾りを届けましょう。
これも親切という名の愛です。
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◯PL
宝物鑑定しようか迷いましたが、
10分も時間かけて鑑定するよりもすぐに届けに行くほうがセスらしいので、
ささっと女性が消えた方に向かいます。
あとやっとセッション用データできました。
改訂版妖精使いのややこしさはすごいですね。