砂の街に咲く花です。

 セスシナング(ニカ) [2016/08/07 01:23:59] 
 

>「くっそ、せっかく上物そうだったのに」

>「次は絶対うまくやるからな。
> 覚えてやがれ!」

 
幸いにも、私の判断はいい方向に向かったみたいです。
彼等はとてもわかり易い捨て台詞と共に逃げて行きました。
ふう。もしも襲いかかって来たらどうしようかと思いました。
もしも私が人間だったなら、体中冷や汗だらけだった事でしょう。

残された女性と向き合います。
やはり、先程の女性です。

>「ありがとう......私の護衛さん?
> さっき大通りでぶつかってしまった方よね。
> 何度もご迷惑おかけして申し訳ございません」

面と向かって護衛と言われてしまいますと、先程の事を思い出してちょっと恥ずかしくなります。
護衛らしく振る舞えていたかしら。

 

「いえいえ、お役に立てて嬉しいです」

 

>「今度お礼をさせて欲しいからあなたの名前を聞いてもいいかしら?
> ――いえ、その前に私の方から名乗るのが礼儀よね」

女性が顔を覆っていた布とヴェールを外すと、先程はよく見えなかった顔がはっきり見えました。
黒い髪と青い海のような色の瞳が褐色の肌に映えています。
リルドラケンの私から見てもとても美しい方、だと思いました。

>「私はアティファ。
> この国の王女よ。
> 改めて、私に貴女の名前を聞かせてくれるかしら?」

あら、王女様だったのですか。
やんごとなき身分のお方だとは思っていたのですが、
私の思っていた以上です。
しかし、どうしてそのような方がこんな所にいらっしゃるのでしょうか。

 
「王女様でしたか、これは失礼致しました。
 私の名前はセスシナングと申します。
 祖の言葉で『揺れる木の葉』を意味するとか」

 
跪き、胸に手を当てながら答えます。
この国の民ではない私にこの国(それとも絵本世界でしょうか)特有の儀礼は分かりません。
無礼がなければよろしいのですが。
そうそう、返さなければいけないものがあったのでした。
立ち上がり、懐を探ります。

 
「ところで、こちらは貴方のものではありませんか?
 あなたとぶつかってしまった後、そばに落ちていたのですが...」

 
私が取り出したのは、もちろん先程拾った首飾りです。
詳しく調べたわけではなく、少し眺めただけですが高価だというのは分かります。
特に王族の方が身に付ける物ともなればその価値は計り知れないのではないでしょうか。

 
「それにしても、アティファ様は何故このような場所にいらしたのですか?
 貴方のような方が訪れるには危険な場所だと思いますが...」

 
私は王族の暮らしに詳しい訳ではありませんが、
王族が城の外に出る際は護衛の騎士や召使が随伴するはずです。
それなのに彼女は一人で身を隠すようにして、裏路地へと向かおうとしていました。

 
「先程のような方々にまた出会ってしまう可能性もあります。
 宜しかったら、このまま『護衛』を続けましょうか?」

 
恐らく、アティファ様は一人でも目的の場所に向かうつもりなのでしょう。
先程の方々が戻ってこないとも限りません。
私は彼女に付いて行くべきでしょう。
恐らくはこの物語もそれを望んでいるはずです。

 

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◯PL
自己紹介をして、首飾りを返して、
何処かに用があるならご一緒しますかーと本当の護衛を申し出ます。