遺跡の前で
僕は遺跡の前にいた。
アメリアさん達は別の場所に飛ばされたらしい。
ここまでの展開は想定通りだ。
「ん?」
僕はいつの間にか小さな紙を持たされていた。
黄色い栞のようだ。
黄色い栞には文字が記されている。
系統的にどの言語に属するかは不明だが、その内容を理解できた。
>『物語の登場人物には各々の役割がある。
>黄の栞を手にした者よ。
>世界の中で笑いの物語を紡げ......』
「うわぁ・・・・マジですか?!」
登場人物。僕もその一人だ。
いつからこんなシステムになったのかは知らないが、
この栞が指令だとすると、「お笑い役」を振られてしまったらしい。
思わずうずくまってしまった。
今回はハードルが高すぎる。今更ネタキャラなんて無理だ。
その時...背後から誰かの気配を感じた。
>「そこのお前。
> もしかしてこの遺跡の財宝が目当てか?」
「え?」
遺跡といってもただの遺跡じゃなかったらしい。
振り返ればでっぷりと太った、男性と。
彼とは真逆ですらりとしたスタイルの女性が立っていた。
太った男は、遺跡の財宝をこの女性に取りにいかせると言った。
そして僕について行ってほしいと言うのだ。
報酬無しではないようだが、どうも胡散臭い。
「報酬は頂いても意味がありませんからねぇ。今の僕は。
お断りしますよ。」
そりゃそうだろう。
ここで一山当てて大金持ちになったとしても、僕はここに永住するわけじゃない。
ルキスラに持ちだすことは出来ないだろう。
それができたら、本に入っていくらでも富を得られる可能性が生まれてしまう。
そんな都合のいい世の中は存在しないのだ。
しかし男は笑顔を浮かべながら、とんでも無い事を口走った。
どうやら遺跡に送り込もうとするのは彼女が最初ではなく、
もっと素人で素性もわからない男性を既に行かせたというのだ。
話を聞いているうちに、不快感が沸き上がってくる。
「ちょっと待ってください。」
僕は男が意気揚々と話している態度にいささかムッとして言葉を続ける。
「つまり、ここには財宝があり、
それを取るために、経済的弱者である男性を雇って
彼に見合っていないハイリスクな任務を負わせたわけなんですね。
それで、しくじれば自己責任だから俺は知らないよ?
...そういうことなんですよね?」
僕は言葉を続ける。
「貴方のされていることは雇用主として最低だと思いますよ。
お金で何でも解決しようとしている。
労働者を使い捨てにしているわけですからね。
最初からもっと確実に仕事がこなせる業者を雇うとか思いつかなかったのですか?」
僕は遺跡に向かうことにした。
「貴方が見捨てた男性だって一人の人間です。
こんなことで命を落としても、貴方は全然痛みを感じないでしょうね。
彼を救いに行ってきます。
改めて言いますが、貴方の依頼は請けませんので、そのおつもりで。」
くるりと男に背を向け、颯爽と僕は駆け出した。
そして石につまづいて壮大にずっこけた!!
「・・・・」
* * * * * *
コルチョネーラです。
はい、コメディ一発目狙ってきました。
商人の男性の依頼は断って遺跡に行くことにします。
女性のほうもあんまり信用してないので、一人で先行します。
まってろ罠地獄!
男性の契約に安易に応じてしまうとあとで絶対揉めますよね。
既にダブルブッキング確定していて、
男にしてみれば、どちらがランプを持ってきても問題無し。
この場合、最初に契約していてより弱者である少年に優先権があると
グレースは判断しているわけで、女性に対しては全面的に協力はできないんです。
とんがり帽子にしたのでクーフィーヤはやめました。
白サバイバルコートの普通に旅人スタイルでキャラシ確定です。