燃えろ、そして進め
僕のジョークは笑わすことが目的ではなかった。
予想通り、彼女には通じなかった。
まんまとはどういう意味だと言われたので僕はこう答える。
「名は体を表す、ということです。大柄な方でしたので。
僕も髪色がこうですからグレースと言うように。」
割と正直に理由を言ってしまった。
興味はないだろうから、自己紹介もさりげなくしておく。
名を明かさないと思っていたが、イスラというのが彼女の名前らしい。
とはいえ、斥候をしていたのであれば本名でない可能性のほうが高い。
ついでに言えば、
イスラさんのあの喋り方はコミュニケーションに支障があったわけでもなかった。
シャドウ語で話しかけてみたが、彼女はこう答える。
>「何故、言葉変えた?
>――不必要。
>私はただ、不要なこと、言わず、聞かず。
>それだけ。
>それが、ファッティ様との契約」
「不要なことを言わない、なるほどそういうことでしたか。」
僕は一応納得はした。が、
「だからと言って『て・に・を・は』まで削ることもないでしょう?
てっきり現地語に不慣れなのかと思ってしまったじゃないですか。」
思わずツッコミを入れてしまった。
それにしても言われちゃ困るような情報が満載しているということなら
ファッティさんは相当ヤバい奴なんだろう、という気がする。
まあ、僕に敵意がないというのは伝わったようで、彼女は先に入っていった。
* * *
扉の向こうはやけに熱い。
熱いはずだ。いきなり火柱が僕らを出迎えてくれるのだから。
足を踏み入れれば警告のアナウンスが聞こえてくる。
>「今この遺跡は愚かで強欲な者の処刑場となっている。
>踏み入れようとする者よ、引き返すがよい。
>さもなくば汝も同罪と見倣す」
実際に僕らを見た何者かの発言ではなく、魔法による自動警告アナウンスだ。
いちいち答える必要はない。
>「私は、ファッティ様のため、進むだけ。
>この命、省みはしない」
「命落としたら意味がないでしょう!
それに、自動アナウンスだからそこはスルーです!」
――またツッコんでしまった。
「余計なことは話さない」と言っておいて、自動アナウンスにはまともに答えているのだ。
見方によってはそこそこ面白い人かもしれない。
彼女は火柱を素早い動きで通り抜けていった。
そこはさすがシャドウといったところか。
さて。
今の僕にはそこを通り抜けるだけの俊敏さは持ち合わせていない。
まともに行けばローストされるのは目に見えている。
火はあちこち現れては消え、消えては現れる。
パターンが読めれば突破できそうな感じではある。
今だ!
そう思って踏み出したところに狙ったかのような火柱が襲う。
「うっそだろ!! そんなのアリか!?」
ひどい。読みが裏目に出た。
髪が燃えるにおいがする。
こういう事態の時はさすがに丁寧語ではなくなる。
愚かで強欲な者?...人助けをしようとしていてそれはないだろう!?
本当に融通の利かないシステム...
「...う」
熱いものがまた襲ってくる。熱いというより痛い。
ちなみに僕の記憶は2回までしかない。
あの後また食らったようだ。身体へのダメージがそれを物語っている。
・ ・ ・ ・ ・
微妙に記憶が飛んでいる。
僕は火柱を超えた先で気がついたようだ。
しばし、倒れていたらしい。
どれくらい倒れていたかはわからない。
彼女は目的地に到達しただろうか。
「...った」
やっぱり体のあちこちが痛い。
こんな酷いやけどは初めてだ。
―――――――――――――――――――――――――――――――
コルチョネーラです。
イスラさんにツッコミ2回入れました。
見識失敗。よって火だるま強欲者処刑コースです。
CP狙えるものは狙っていきます。火だるまのリアクションも加点になるといいな。
>23:30:18 コルチョネーラ@グレース ≫ オイヤッサ 見識判定 2d+10 <Dice:2D6[3,1]+10=14>
この呪文(オイヤッサ)流行ってたので乗ってみました。 最強ですね。
それなりに酷い格好で再会すると思いますので、「どうしたの」的ツッコミを期待します。
笑点大喜利風の回答を考えてみます。