【C-1-5】絨毯越しに見えるのは
冒険者たちやアラジンたちを乗せて。
魔法の絨毯は遺跡の外へと飛び出すことに成功した。
しかし、そんな彼らを待っていたのは獅子の姿をした遺跡本体。
獅子の口から燃える火球が絨毯を燃やさんと飛び出してくる。
ランプを使うか。
自分たちの力で切り抜けるか。
冒険者たちの決断は決まりきっていた。
>「炎のダメージを抑えていきます。ここは逃げ切りましょう。」
>「決まっている....」
>「切り抜ける他ないだろう」>「まずは絨毯を飛ばすことに専念しましょう。火の玉も私達で対処できる筈です」
冒険者たちが選んだのは、自分たちの力で切り抜ける道だった。
だがそんな冒険者たちの決断をあざ笑うかのように。
いつの炎の球がイスラめがけて飛んでくる。
イスラは少し避けようとするが、動けない。
――そこに飛び込んできたのは。
>「.....ッ!」
ルークだった。
「何故?」
ぼんやりとルークの顔を見つめるイスラ。
彼女の問いにはルークはしっかり答えてくれる。
>「お前はもう俺の敵じゃない、敵対しても敵でなくなって今みたいに一緒に動いてればそれは仲間だ」
>「だから生きろ、茫然とするな。今を生きろ、俺は俺が仲間だと認めた奴が傷つくのを許容できるほど心は大きくない」
ルークはイスラのことを仲間として判断したのだ。
その彼の言葉はどうやらイスラの闇を少し照らしたのか。
「仲間だから、生きろ?
......わからない。
でも――わかる、かもしれない」
ほんの少し彼女の目に命が宿ったように見えた。
三人がそれぞれ声をかけたこその賜物だろう。
そんなルークの炎で受けた痛みは、仲間たるアメリアが癒す。
アメリアもまた、うっかり炎に命中こそしてしまうが。
ドルクーア3世やグレースのサポートもあり、大した被害にはならなかった。
――そして冒険者たちを乗せた絨毯は。
遺跡から十分な距離をとることに成功する。
脱出には成功したのだ。
* * *
「よっしゃあ!
オレたち生きて出られたんだよな!
風が気持ちいいぜー!
高いから見晴らしもいいしな」
アラジンは無事脱出できてかなり嬉しそうだ。
彼の言う通り横切る風が気持ちいい。
まあ同じくらい、砂漠の熱気が暑いのだが。
「うん、そうだね。
僕もこんな景色を見たのは何年、いや何十年。
――もしかしたら何百年、何千年ぶりかもしれない」
絨毯の速度に合わせるように飛びながらナーゼルは言う。
「そうなのか?
お前は何でも願いが叶えられるから景色なんて見放題だと思ってたけど」
首をかしげるアラジンに対し。
ナーゼルは残念そうな顔をしながら首を左右に振る。
「ううん、確かに僕はマスターたちの願いを三つまで叶えられる。
けど、僕自身の願いは叶えられないんだ。
だから僕が自由になれるのはマスターがこうして出してくれている間だけ。
三つの願いを叶え終えたら次のマスターに出会うまでまたランプの中だから」
ナーゼルが願いを叶える力を行使できるのはマスター。
現在であればアラジンだけであるという。
自分がどれだけ自由を願おうと叶わないということだ。
「僕はこの役目が不幸だとか感じてはないよ。
マスターたちに幸せを届けられる仕事だからさ。
......でも、やっぱり、自由に生きられたら幸せだなって思う時もあるよね」
今のランプの精としての彼が不幸せでないということ、それもまた事実なのだろう。
だが、同時に今の状態では得られない自由を求めているのもまた事実。
果たして、どっちが幸せなのだろうか。
「そっか......お前も大変なんだな」
アラジンもそんなナーゼルの境遇に同情しているようだ。
「ううん、マスターはそんなこと気にしなくていいのさ。
マスターはあと二つ自分の幸せを僕に願えばいい。
そうなることが僕にとっての幸せでもあるんだから」
アラジンとナーゼルたちがそんな会話をしていると。
「――忘れてた」
イスラがルークに後ろから話しかけてくる。
「お礼、言ってない。
......ありがとう」
ほんの少し彼女の顔には笑みがあった。
* * *
街を目指して空中を旅する最中。
急激に周囲の景色が変わっていく。
灼熱の太陽と青い空が。
月も星もない漆黒の宇宙へと変わっていくのだ。
その中心はどうやた向こうの方に見えてきた宮殿のある街らしい。
まだ詳しいところは分からないが。
「な、なんだよこれ......!
街は、城はどうなってるんだ?
――アティファ、アティファは無事なのか!」
彼は街を見て愕然とする。
最後に読んだ名は王女の名。
王女であればおそらくあの街の中にいることだろう。
「......ファッティ様」
イスラも自分を捨てたはずの主のことを気にかけているようだ。
だが、ナーゼルは少しだけ違った。
「この感じ、まさか......」
ナーゼルは何かを感じ取ったらしく。
真剣な眼差しでこちらを見る。
「マスター、街に近づかない方がいいかもしれない。
きっと、危険な状態にある。
僕はマスターには幸せになって欲しいから」
どうやらナーゼルはアラジンに街に向かって欲しくないようだ。
だが、アラジンは違う。
「やだね、オレは帰るぜ。
だってあの街には仲間が思い出が、それにアティファがいるんだ。
黙って壊されてたまるかっての。
残り二つの願いを使ったって、それ以外に何かを失ったって!」
アラジンは街へ向かいたいようだ。
そんなアラジンの心に目を背けるようにナーゼルは冒険者たちを見る。
「マスターが言うならば、僕はマスターを連れて行かないといけない。
でも、この絨毯を操るのはマスターだけじゃない。
君たちの心が街に行きたくないというなら、それは......」
ナーゼルはそれ以上言わなかった。
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あんみつ@GMより
脱出ルート進行です。
ルークがイスラをかばったことでHPを1点差し上げましょう。
また、ナーゼルの淋しい気持ちを聞けたことでTPを1点あげます。
長々なシーンになりましたが重要な点は以下です。
皆さんは次の行動を選択してください。
具体的なものは以下の2つです。
・街に向かう
・街に向かわない
どちらを選んでも構いません。
気の向くままにどうぞ。
他の部分についてもご自由に!