ランプの精は演出派

 グレース(コルチョネーラ) [2016/08/18 07:10:15] 
 


 


僕の推理は概ね的中した。
アラジンさんには意中のお相手がいたようだ。

>「......へ? 
>な、なんでアティファが王女だって知ってんだよ!
>じゃ、じゃないや!
>違うからな、今の違わないけど、違うんだからな!」

 「え?! 王女様だったんですか? 
  ...って実名出しちゃってますし。
  しかも、先ほどナチュラルに『あいつ』って仰ってましたよ?!」


ツッコミどころはそっちじゃないだろう!?と言われそうだが
思わず入ってしまった。
相手は間違っていないけど、関係は微妙ってことだろうか。


 「王族のお方と直接お話されていたんですか?
  今のお話からすると、フレンドリーにお話できる間柄みたいですね。
  どこで出会われたのか気になりますね。」


普通なら面倒な手続きを経てようやく謁見だろうが、
アラジンさんの場合、接点が思いつかない。
慣れ染めはちょっと気になるところだ。

   *   *   *

誘導尋問にもあっさりと引っかかりやすそうなアラジンさんとは
対照的なイスラさんは、僕が呼びかけても力なく動かない。
アメリアさんからの魔法も効果が出なかった。

>「私、不要......」


アメリアさんは、イスラさんにもう一度ファッティさんに会うことを勧めた。
それも一考だと思う。


彼女のメンタルをどうにかするには、「イスラさんを必要とする誰か」が
必要なんだと僕は思った。


 「貴女を必要とされる方は必ずいらっしゃいますよ。
  というか、貴女の実力でしたら雇いたい方はたくさんいると思うんですけどね。
  貴女がそれを望んでいるのならお手伝いしますよ?」


シャドウらしい契約に献身的な所といい、剣の腕前といい、
余計なことを語らぬ口の固さといい、王族のSPも務まりそうだ。

ただ...一つ彼女には欠点がある。
それは「自分を売り込む」ことができないという点。
それがどうにかなれば、解決できそうな気がする。

それとも、もっと大きな意味で自分を必要とする相手が必要なのだろうか?
それはまだわからない。


イスラさんの意向を尊重しよう。


僕は手を引いて逃げるように促すが、
身体に力がなくなっている。これはまずい。


* * * *


アラジンさんが呼び出したランプの精は、
金髪と褐色の肌の少年。
名前はナーゼルと名乗った。


「アラジンさん助かります。
 ...おや、お若いランプの精とは予想外でしたね。
 黒髪ポニーテールのおっさんあたりかと思っていましたのに。」


アラジンさんがちょっと期待はずれな発言をすると、
ナーゼルさんは指をパチンと鳴らして、石の柱を消してみせた。
かっこよく庇ったルークさんが砂煙を吸い込み咽こんでしまった。


アラジンさんがここからの脱出を最初の願い事として告げると、


>「はいはい、ここから出して欲しいだね。
>マスターの一つ目の願い、受領しました。
>うーん、そうだなあ......脱出の方法はいっぱいあるんだけど。
>どうせなら、面白い脱出法のほうがいいよね。」


 「いえ...普通でいいんですけど...」


この手のタイプは無駄に凝ったりこじゃれる傾向がある。
僕がそう言ったところでマスターじゃないからスルーされる。
出てきたものはアンティークな敷物だ。

>「これはただの絨毯じゃないさ。 
>空飛ぶ絨毯だよ!
>マスターたちが上に乗って飛んでいけば。
>上に空いてる穴から遺跡の外へとひとっ飛び?
>どう、スリルがあって楽しいと思わない?」


普通なら喜んでいた所だろう。
しかしこちらには動けない女性がいる。
普通にテレポートのほうが僕としては有難かったのだが...


 「あれに乗って脱出します。動けますか?」

僕はイスラさんに再び移動するように促したが動かない。


>「さぁ、イスラさんも早く乗って、一緒に行きましょう。まずはそれからです」

アメリアさんも手を差し出した。
が、僕が手を引っ張ってもダメだったのだから、結果は同じ気がする。


「...動けそうもないですね。ではちょっと失礼しますよ?
 ここで瓦礫の下敷きにはさせませんから。」


左腕を取って肩にかけるとヒョイと持ち上げた。
いわいるお姫様だっこというスタイルでの強制搬送である。


「はい、一名様ご案内。...力がないのでできればセンターにお願いします。」

絨毯の端じゃあ落ちるかもしれない。真ん中に座らせることにする。

まだいるようなら僕はナーゼルさんに質問をする。


「あのー、ちょっと質問なんですが、貴方の魔法の力というのは、
 自分自身のために使うことはできるんですか?
 それとも、マスターの願いを聞くためだけしか使えないのでしょうか?」


何となくなんだが、魔神の類って「人のために魔法は使えるけど
自分のためには使えない」ってイメージがあるためだ。


「今後はアラジンさんの就活とイスラさんの婚活になるんでしょうね。」
ぽつりと僕は呟いた。

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コルチョネーラです


CP狙い3点

・アラジンさんにツッコミを入れました。
・「ポニーテールのおっさん」ネタはちょっと厳しいかな
・最後、ちょっとボケが入ってます、というか素で間違えています。


「ポニーテールのおっさん」が気になる人は「大魔王シャザーン」で検索を。
 彼は魔法を使うときに「パパラパー」と言うんですよ。
「親戚です」なんて言われたらどうしようw

イスラさんはグレースが強制搬送しました。

イスラさんに再就職支援も思案中。
ただ、本人がそれを望んでいればの話ですけどね。

(何気に生真面目な近衛隊長と年齢釣り合ってるんですよねー。)

ファッティさんはもはや指輪を回収どころじゃなくなったみたいですね。