約束です。
私達の祖先は、人と同じ高さに立つ事を願い、代償に自由に大空を飛ぶ力を失いました。
せめてそれが尻尾や牙だったら、よかったのですが。
黒い靄と共に、ファッティさんの感触が少しづつ変化していきます。
柔らかかったはずの体は、硬く。
そこまで重くなかったはずの重量も変化してきたのか、腕が辛くなってきました。
爪が彼の体に食い込んでも構わないばかりに、と力を強めます。
止まる訳には行きません。
このまま、もっと遠くへ―――
不意に。
彼を掴む感触が大きく、変化しました。
ファッティさんの体はここまで大きかったでしょうか。
こんなに硬かったでしょうか。重かったでしょうか。
先程まで私の隣に浮かんでいたパックさんが怯えたようにふっと消えていきました。
>「愚かな女め。
> その程度で俺を止められると思ったか?」
私は既に、ファッティさんを掴んではいませんでした。
あの太った商人さんの姿はもうありません、そこにいたのは、
何かおぞましい姿をした、怪物でした。
>「小賢しい真似をしてくれる。
> そんなに飛びたいなら彼方まで吹き飛んでしまうがいい!」
強烈な衝撃。
もう高度を維持することは出来ません、地面に向かって落ちていきます。
地面と衝突する前に何とか体勢は立て直しましたが、
このまま落ちていたらただでは済まなかったでしょう。
格好付けすぎたでしょうか。
>「ははは、これが俺の力か!
> 今の俺ならば容易に全てを手に入れることができよう。
> まずは、そこからだ!」>「きゃあ!」
>「アティファ様!」
「アティファさん!」
アティファさんは黒い球に閉じ込められ、そのままファッティさんの手元へ。
あれだけ遠くに引き離したはずなのに、
今のファッティさんにはこの程度は造作もない事のようです。
「いけません、ファッティさん!
そのような力には、何の意味もありません!
過ぎた力はいずれ貴方の身を滅ぼしてしまいます!」
思わず叫びました。
彼は、力に溺れてしまっています。
力さえあれば全てを手に入れられるというのは、間違いです。
私はそれを知っています。
>「貴様はそこでそいつらと遊んでいるがいい。
> 俺は今から宮殿を、全てを手に入れに行くとしよう」>「くっ......邪魔だ!
> ――セスシナング殿、貴女に頼みがあります。
> あの魔神を追ってください、すぐに!
> 貴女の命を危険に晒すかもしれませんが、それ以外......ないのです」
ファッティさんはこのまま、宮殿へと向かうつもりです。
ハフィーズさんは護衛に阻まれ、ファッティさんに近づくことができません。
今ここで動けるのは私だけ、か。
「...分かりました!
アティファさんは必ず助け出します。
貴方も、無事でいて下さい」
逡巡は一瞬でした。
ハフィーズさんは手練れですが、護衛には数の有利があります。
ハフィーズさんも無事では済まないでしょう。
しかし。
彼から頼まれ、私もそれに応えた以上、引き下がる訳には行きません。
例え、今の私にファッティさんに対抗する術がないとしても。
私はファッティさんの背を追い、走り出しました。
私は木の葉を揺らす風です。
俊敏さには自信があります。追い付くのはそう難しくないはず。
彼女を、返して頂きます!
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○PL
ニカ 距離 2d6 Dice:2D6[3,1]=4
40m吹き飛ばされました。
4*3=12ダメージ
ダメージは受け身判定で受けます。
ニカ 受け身判定 2d6+9 Dice:2D6[5,1]+9=15
12-15=-3なので0ダメージに抑えることができました。
魔神と化したファッティさんを追いかけます。
アティファさんを助ける見込みも、ファッティをどうにかする見込みもありませんが、
それでも彼女は行くのです。
骨は拾ってください。
指定ダイスは6でした。
ニカ 指定ダイス 2d6 Dice:2D6[5,1]=6
ニカ 魔物知識 2d6+6 Dice:2D6[5,2]+6=13
魔物知識はぎりぎり成功しました。
強い、絶対に強い。