戦い終わって。
>「きゃっ」
間一髪でした。
アティファさんは私の腕に無事、抱き抱えられています。
>「ふう......助かったわ、セス。
> うふふ、やっぱり貴女は私の立派な護衛ね」
そろそろ翼が疲れてきたようです。
ゆっくりと着地しましょう。
「いいえ。結局、あなたを危ない目に合わせてしまいました。
どうやら、私はあなたの護衛には相応しくなかったみたいです」
地に降り、アティファさんを降ろした後、
ハフィーズさんの指揮で、
アティファさんのご両親を始めとした方々が中へ運ばれていくのを
私はただ眺めていました。
すべての方が運ばれ、ハフィーズさんも城内へ去った後も、
アティファさんはずっとアラジンさんの方を眺めていました。
「私一人ではあなたを助けることは出来ませんでした。
ここまで来られたのは、
アラジンさんを始めとした皆さんが力を貸してくれたからです」
「特に、アラジンさんはすごく必死だったんですよ。
最初に会った時の彼はあなたを助けようと、脇目も振らず駆け出そうとしていたんです。
とても大切に想われていらっしゃるのですね。羨ましいです」
ふふふと笑いながら、私は続けます。
「あの魔神を倒すことが出来たのは、ランプと、あそこにいるナーゼルさんのお陰です。
でもきっと、アラジンさんはランプが無くても、勝てる見込みがなくても、あなたを助けようとここに来たと思います。
私は彼と出会って間もないですが、何となく分かります」
「さあ、アラジンさんに元気な姿を見せてあげて下さい」
私は愛を司る神の神官ではありませんが、
今だけはその教えを遵守したい気分です。
きっと、アステリア様もお許し下さるでしょう。
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ファッティさんもグレースさんの気付けの魔法で目を覚ましました。
その瞳も声も弱々しく、初めて出会った時のあの姿が嘘のようです。
彼は魂そのものが弱っているようでした。
癒やしを司る妖精でも、心を司る妖精でも、魂そのものを癒やすことは出来ません。
彼はこれからどうなってしまうのでしょうか。
その前に裁かれてしまうのでしょうか。
元のように戻れるのでしょうか。
よそ者にすぎない私達に彼の行く末を定める権限はありません。
>「......ファッティ様」>「生きていれば、私、守れる。
> 必ず、守る」
...そうですね、そうでした。
生きていれば、命さえあれば、何とかなります。
>「イス......ラ......」
弱々しいですが、ファッティさんはイスラさんの名前を呼びました。
イスラさんがいる限り、ファッティさんは大丈夫です。
自分の事を心から想ってくれる方がいる、これ以上心強い事はありません。
「貴方達に、神々の加護がありますように」
私は小さく、祈りを捧げたのでした。
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もう一つ、考えるべきことが残っていました。
ランプの、最後の願いの事です。
もちろんアラジンさんのお好きな願いを叶えるのが一番だと思いますが...
例えアラジンさんが願いの力で王子になったとしても、英雄になったとしても、
知識人になったとしても、誰もが見惚れる紅顔の美男子になったとしても――そこに何の意味もありません。
アラジンさんはその事を分かっているようでした。
そして愛は目で見るものではありません、心で見るものです。
>「まあ、オレなりにも少しは答えは決まりかけてるけど。
> ――聞かせて欲しいんだ。
> みんなの気持ちも」
「ふふ。私も、アラジンさんと同じ考えだと思いますよ」
何でも願いを叶える力なんて、私には重すぎてとても扱いきれません。
私は大きいヒトではありません。
自分の為に願いを使ったならば、何を選んでも満足するし、後悔もするでしょう。
それならば。
「最後の願いは大事な友人の為に。
今まであなたを助けてくれた友人の願いを叶えるのがいい、そう私は思います」
――――――――――
◯PL
進行お疲れ様です。
ここにきてRPをがっつり稼ぎに行ったつもりなのでした。
最後の発言はつまり、
『願いはナーゼル君開放して自由にする事です』って事です。
件の場面でセスシナングはいないのですが、
不思議パワーで色々察してるってことにして下さいませ。