終わらない物語。
私はアラジンさんのお話をただただ聞いていました。
夢は自分で叶えなければ意味がない、
願いを叶えようと力を尽くす事こそが力となり、魔法となりえる。
そう、彼に改めて教わった気がしました。
>「じゃあ、言うから、聞き漏らすんじゃねえぞ。
> ――ナーゼル、オレは願うぜ。
> ランプの精ナーゼルを解放して、オレの友達にして欲しい。
> マスターなんかじゃなくて名前で呼んでくれるようにさ!」>「......え?」
天から光が降り注ぎ、ナーゼルさんの体を包み込みます。
まるで、祝福をしているような優しく、美しい光でした。
>「ど、どうして......マスター?」
天からの光が消えた時、そこにいたのは不思議なランプの魔神ではありませんでした。
ナーゼルさんはひとりの人の子に変化したのです。
使命に縛られることも、次なる契約者を闇の中で待つこともない、一人の自由な人へと。
同時にアラジンさんとナーゼルさんの関係は契約者と従者から、
対等な友達へと変わりました。
最後の願いは叶えられ、ランプの伝説は終焉を迎えたという事でしょうか。
手に入れた者の願いを何でも叶える、強大な力を持つランプ。
しかし、私はそんなモノよりも、目の前の少年の喜びの涙の方が遥かに価値があると思うのです。
グレースさんがナーゼルさんの誕生日を祝おうと、仰っていました。
いいですね、とても。
今日がナーゼルさんの人としての誕生日となるのですね。
ここでは、大それた祝宴は出来ませんが、心からの言葉を贈りましょう。
「ナーゼルさん、お誕生日おめでとうございます。
きっと楽しい日々が続きますよ」
これからのお話を私達が側で見られないのは残念ですが、
すべてのものが新鮮なはずのナーゼルさんにとって、
この世界は驚きと喜びに満ち溢れている事でしょう。
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皆さんに断って、私はお城の中に入りました。
大分混乱していたせいか、部外者である私が入っても特に咎められず、
すぐにハフィーズさんを見つけることが出来ました。
「ハフィーズさん、少しよろしいでしょうか?」
このままお別れは寂しいものです。
せめて一言だけでもと、私はハフィーズさんのお時間を少しだけ頂くことにしたのです。
「お忙しい所すみません。
先程はありがとうございました。
お怪我はありませんでしたか?」
アティファさんを助ける為とは言え、
あの場に一人残してしまった事は申し訳ないと今でも思っています。
「...私達はこの国の者ではありません。
もうすぐここを立ち去らなければならないのです」
恐らく、二度と会うことは叶わないでしょう。
アティファさんにも、アラジンさんにも、ナーゼルさんにも。
ハフィーズさんにも。
「後の始末をお手伝いできないのは心残りです。
そして、それ以上に――」
命を落とした兵士、損傷した城。
残された傷跡は決して小さくはありません。
「魔神を止める事は出来ましたが、結局、被害を出してしまいました。
その事は悔やんでも悔やみきれません」
「これからの事はよろしくお願いします。
それにアティファさんと、アラジンさんも」
特にアラジンさんは重要な部分です。
まずはハフィーズさんに認めて貰う事が、
第一の試練になるでしょう。
頑張ってください、アラジンさん。
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全てが終わり、皆さんの所に帰った頃。
>『物語は......綴られた。
> 役割を全うせしものには......証が送られることであろう』
脳裏に響く声。
私達の世界へ帰る時が来たみたいです。
世界が白く染まって行きます。
この世界の皆さんにとって私達はどう見えているでしょうか。
「ああ。もう、お別れみたいです」
「私達は通りすがりの魔法使いのような者だったと思って下さい。
魔法が解ければ元の場所に戻らないといけないのです。
さようなら、皆さん。どうかお元気で」
どこかで本が捲られ、閉じられる音が聞こえました。
ふわりと体が浮く感触。視界がが白く染まって行く。
初めてこの場所に来たときと同じ感覚です。
本当に、これでお終いなのですね。
私達はこの世界に良いモノを残せたでしょうか――
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◯PL
剣の欠片は3回分降って合計8でした。
微妙です。
ランプはどうなるのでしょうねー。
頂けるなら頂けるなら嬉しいですが、
元の世界に持っていけるものなのでしょうか?
剣の欠片 3d6 Dice:3D6[3,3,2]=8