帰還の前に
>「ナーゼルさん、お誕生日おめでとうございます。
>きっと楽しい日々が続きますよ」
セスさんは、僕の案に対し、ナーゼルさんに言葉で祝ってくれた。
一方で、ルークさんは、
>「ナーゼルの誕生日か、面白いな。しっかしこんな場所か...
>もっとうまいもんが食えるところが良かったんだが、まぁしょうがねぇか」
結構食に拘るタイプなのだろうか、料理のことを気にしているようだった。
かといって、今まで見てきた限り食いしん坊という感じでもない。
であれば作るのが好きなのだろう。
>「ではこれでお疲れさん、だな
>色々あったが最後には....それなりにいい結果となったか?」
「そうですね。物語としては、いい感じにまとまった気がします。
冒険者的にはダメなんでしょうけどね。」
恐らく僕だけじゃないけれど、
ひっかかる部分はあった。
冒険者である以上、死亡者を出すというのは仕事をする上で
やってはいけないとだと、殆どの人はそう意識している。
それは僕らが普段は冒険者として仕事をしているからである。
たとえば、正面から全員で行くという選択もあった。
死者は出なかったかもしれないが、ランプの願いを使った可能性はあっただろう。
そうするとナーゼルさんの自由を犠牲にすることになってしまう。
「最後の願いで、死者を生き返らせることもできたかもしれません。
もしも、そこで願いを使い切ってしまったとしても、
ナーゼルさんの解放はアティファ王女にマスターになってくだされば
できたはずですよね。
冒険者としての仕事であれば、そういうやり方もあったんです。
もちろん、ストーリー的なものを無視しても良いのなら。」
物語そのものをぶち壊しにすることのほうが
依頼人の意向には沿っていないのだとみんなは思った。
だから僕らが選択する上でこれが一番の結末だったと思う。
冒険者としての最高の結果は、作家としての最高の結果とは限らない。
これが僕の出した結論だ。
これらを両立させる最高の結果を求めるのはかなり難しいだろう。