ありのままに生きよ
アメリアさんは、戦いが終わってから呟いた。
>「やっぱり慣れないことは、するものじゃないですね‥‥」
>「そうか?結構いい歌だったぜ」
ルークさんは素直に感想を述べる。
バトルソングは一応、習ってはいたが僕も正直言うと歌う自信はなかった。
ただ、前線にとってはとてもいい効果を持たせられる。
もちろん回復だスキルだと忙しくないことが絶対条件ではあるが。
「やっぱり女性の歌は癒されますね。僕が歌うよりいいでしょう。」
機会があれば、一度くらいはやってもいいと思った。
ルークさんは戦った後のお礼も忘れない。
>「魔法での援護ありがとうな、おかげで体も無傷に近い」
「やっぱり前線は華がありますね。
(小声)ちなみに癒したのは僕じゃないですよ?ドルクーア三世ですから。」
後方回復がメインの僕としては、ルークさんにキュアハートが必要なほど
ダメージを食らっていなかったのだ。
だからあの場はドルクーア三世が癒した。
彼は、実に多彩なスキルを持っている。
とても役にたっているのだ。
ルークさんはアラジンさんに声をかけ、
僕が声をかけたイスラさんはファッティさんと話をはじめた。
ありゃあ絶対トラウマになるだろうな。
夢の中であの魔神は時々出てくる気がする。
でも、そんなときは心の支えになる人の存在が貴重になるだろう。
セスさんが無事に助けた王女はお礼を述べられると共に
セスさんを立てるお言葉をかけられた。
こういう細やかな気遣いのできる王女だった。
そりゃあファッティさんも気に入るだろうな。
* * *
さて、ランプの願い事はあと一つ残っていた。
ナーゼルさんの話によれば、アラジンさんの願いであれば
なんでも叶うのだと言う。
アラジンさんがその権利を譲渡することもできるらしい。
>「まあ、オレなりにも少しは答えは決まりかけてるけど。
>――聞かせて欲しいんだ。
>みんなの気持ちも」
「そうですね...。」
せっかく命がけでランプを見つけたのだから、
普通に考えればアラジンさんに権利はある。
「アラジンさんが納得のいく願い事をされれば宜しいのではないでしょうか?
願い事の3つのうち二つは、危険を回避するためのものでしたし、
おひとつくらいは、我儘を聞いてもらってもバチはあたりませんでしょう。」
僕は言葉を続けた。
「ですが、あまりつり合いについては考えなくても宜しいかなと思いました。
僕が推察するに、アティファ王女は、王宮に居ないタイプの
貴方に惹かれているように思えるからです。
釣り合いを意識するあまり、それが逆に王女の望んだ貴方でなくなってしまっては
意味がございませんからね。」
もし、僕がアラジンさんの立場だったら何を望むかと言われれば、
僕は紙とペンを出して、アラジンさんだけにわかる言葉を伝えるだろう。
少なくとも、自分を慕ってくれる、それなりに好意を持っている人がいる、
生活も不自由はない、
この国が闇に閉ざされるのを救った英雄なのだから、
少なくとも貧乏生活ではなくなるだろう。
王族にもなれる可能性すらある。
いや、逆に、王族になるのならなったで
それなりに大変かもしれない。勉強することは山ほどあるだろうし、
公務、礼儀作法、外交とか、激務だとは思うが、
それは魔法で解決するほどの問題ではない、と僕は思うからだ。
―――――――――――――――――――――――――――――――
コルチョネーラです。
やっぱ最後の願いくらいはアラジンさんの好きにしちゃいなよ
というのがグレースの意見ですが、
グレースがそういう立場なら、
「ナーゼルさんと一生涯の友達になりたい」
という願いをすると思います。
(尋ねられたら、そう書いて見せると思います)
三つめの願いが叶ったら、彼はランプの中に帰っちゃうんですもんね。
ちょっとそれは寂しいかなと。