緑花領にて

 スプリング(一葉_2) [2016/01/11 22:15:50] 
 

 幼少の頃より師父の傍らにて槍をこの手の延長とし、鎧をこの身の一部とし、学問これ決して怠る事無く、日々精進して年月を重ねてきた。例えその性が陰であろうと、拙なる身が目指すべき場所にわずかの曇りとてない。

 武者修行として諸国を巡り、日々の糧をこの手で稼ぐよう命じられた時も迷いは無かった。
 それが此方に課せられた使命であれば、何を不遇と称すものか。

 課された期間は五年。
 未だ齢にして十四になったばかりの此方にとって、短くない期間である。
 それこそ初めは世間の労苦を知らぬ身にとまどう事も多かったが、積み重ねて来た武芸は確かに此方を裏切らないと気付いてからは、幾許かの余裕も芽生えたものだった。

 そうして故郷を出て一年ほど経ったある日。
 此方はその方と出会った。

> 「僕と冒険に出ないか!」

 此方には大きな目的がある。
 家名を上げ、"菊家槍法"を遍く世に広めなくてはいけない。
 故に、道遠くとも、一歩一歩進んでいく事こそが、此方の成すべき大義に他ならない。

「此方は修行中の身ではございますが、此方の槍をご所望であれば、
 不肖"菊家槍法"の誇りに賭けてお手伝いいたしましょう」


 * * * * *


 アイヤールは《緑花領》ファーニアあの、木造りの小屋の中で一同は介した。

 リード氏が集めてたきた四名を見る。
 いささか変わった条件で集めてきたように思えなくもない。というのも、此方が最長身かもしれないのだ。
 私はドワーフ種故に、テラスティアの第一の剣の勢力に属する中では、小柄である。
 珍しい事もあるものだ。

> 「ふふん、よく集まってくれたね......同志たちよ!
>  今日は記念すべき"リード様をみんなで全身全霊一生懸命褒め称え隊"の顔合わせだ!
>  ――むむ?反応が薄いな。
>  せっかく僕が一週間かけて考えた隊名なのに」

 リード氏は、些か芝居がかった大仰な立ち居振る舞いが特徴だった。
 それぐらいは慣れてしまえば特段問題ではない。
 ネーミングセンスについては、一考の余地があると思わなくもないのだが。

> 「......まあいいや。
>  もし他に名前の案があるなら後でいうこと!
>  とりあえず初めて見る顔もあるだろうし......まずは自己紹介といこうじゃないか!
>  あ、僕は要らないよね。
>  ――え、いる?
>  しょうがないなあ......」
> 「僕はリード・プッチ。
>  君たち五人のリーダーだ!
>  冒険のきっかけは僕の知識と占いでぜ~んぶ見つける!
>  ......あ、僕は戦えないからね!
>  ぜ~んぶ君たちに任せるから!」

 ......冒険のきっかけ、と仰っただろうか。
 此方は目的の為に武芸を買われ、雇われたのでは無かったのだろうか。
 僅かではあるが不安である。

> 「それじゃあ、次は君たちの番だ!
>  順番は好きな感じで構わない!
>  まああんまり堅苦しくはしないで、甘いものでも食べながら明るく行こう!」

 そう、甘い物だ。
 卓上にはパンケーキがある。

 人目さえなければ、蜂蜜とバターをたっぷり乗っけて暖かいうちに食べたいのだけれど、行儀の悪い振る舞いはこの世の理を以てその身に不遇として返ると教えられてきた以上、そのような真似はできない。
 断腸の思いでそれから目を逸らし、まずは礼儀を果たす事に専念する。

> 「初めまして。ボクはファルナです。
>  特技は......給仕かな。料理も軽く出来るよ
>  戦闘での立ち位置は前衛で軽戦士だね。
>  見ての通りコボルドだけど、それでも良ければよろしくお願いします」

> 「えっとね。 名前、忘れちゃった」
> 「だから 好きに呼んでくれれば うれしい。
>  困るなら ナナシ で大丈夫」

> 「元戦車射手(チャリオット乗り)のカレリア・スオミンだよ。
>  仕事柄、飛び道具と乗り物と魔動機術に強いかな。」

 コボルドのファルナ。フィーの名無し。レプラカーンのスオミン。
 三名に続き、残るグラスランナーの前に此方は腰を上げ、お辞儀をしてから名乗りを上げた。
 低音の声質は父譲りで、此方にとっては誇らしい。

「拙、戦場槍術"菊家槍法"二代目当主、我々の言葉で『春の菊』と申します。
 交易共通語ではスプリングと呼ばれております。お見知りおき下さいませ」

 それから......一つ間を挟んで、少し恥ずかしくはあったが提案した。

「リード氏の考案されたお名前ですが、少し通り名としては長く呼び辛く感じました。
 つきましては、『蒼炎の徒花達(リトル・フラワーズ)』というのは如何でしょうか」

 一同を見た時から考えていたのだ。


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PL@一葉より:
 前日譚投稿しまーす。一葉と申します。

 ダークドワーフの春菊です。「スプリング」とか「春」とか「ハル」とかお呼び下さい。
 ダメージソース兼壁兼まさかの脳筋セージとして働いていきます。

 教育の影響により、思考は男性的ですが所作は女性的な脳筋です。
 また、残念属性も付与された模様です。どうしてこうなった。

 よろしくお願いします∩(・ω・)∩