妖精とロマンス
ふん、こいつも"外"から来たのか。
それにしては、ずいぶんここに馴染んでいるように見える。
ムリアンたちも懐いてるみてぇだし。
「見た感じボクとは違って、君たちはあまりこの妖精郷にはまだ慣れてないみたいだね。
ボクはもうたぶん、この妖精郷に慣れすぎちゃっていると思うんだ。
だから......ボクは妖精郷から抜け出すことができません。
故郷にも帰ることはできないし......ロッテにだって二度と逢えない。
――ああ、ロッテはボクの婚約者、だったんだ」
なんだって? っつーことは、あんまりのんびりもしていられねぇな。
ここに住むのはかまわねぇけど、それはもとの世界にいるあいつらを呼びに行ってからのことだ。
「もし君たちが妖精郷から抜け出すことができたら......ひとつお願いがあるんだ。
このペンダントを渡して、ロッテに......ボクは死んだと伝えて欲しいんだ。
彼女には、向こうで幸せになって欲しいからさ」
な、なんだよ、オレこういう展開は苦手だぞ......。
「マルキ殿、私たちはまだここに来て日が浅い
マルキ殿がどのくらいの時をここで過ごしたのかは知らぬが.....
今もあなたの帰りを待つ人がいるというのなら少なくとも私は嘘をつくことはできぬ」
「バッカおまえ、マルキの気持ちも考えろよ。
『会えないけどずっとあなたを想っています』なんて真実でロッテを縛るより、
自分のことを諦めて相手の幸せを望んだんだぞ。
安心してくれ、マルキ。ペンダントは必ずロッテに届けるからな」
―*―*―*―
マルキと別れてから、氷の妖精がオレの肩にとまった。
「ほんとにウソつくの? ロッテにウソつく?」
「さあ。それはロッテ次第だな。
すでにマルキのことを諦めてるなら、今さら本当のことを教える必要はないだろ。
けど、どうしてもマルキに会いたいって言うんなら、オレが連れて来てやるよ。
オレはここを出て、またここに戻ってくるつもりだからな」
――――PL――――
ロマンティックな展開がツボなウィステァリオくん。