F1-薔薇と文
他の部屋の扉に比べると幾分か豪華で。
そして魔動機の監視もついた特別な部屋。
当屋敷の主モノマニアの居室である。
主が倒れているこの間に三人はこの部屋の中へ入ることにした。
>「私が空けるよ。シオン君は後ろを見ててくれ。
> ・・・無理はするなよ、まだあちこち痛むんじゃないの?」>「毒やら魔法やら散々な目に遭いましたが、痛みは一応は大丈夫です。
> 問題は、自分が開けて、何か仕掛けがあったら作動してから気が付くと思うので、キリエさんが適任かと」
屋敷の主を倒したとはいえども、致命的な罠に引っ掛からないとは限りない。
念には念を入れて、キリエが先導して扉を開き――中へと踏み入った。
* * *
部屋の中はどんよりと薄暗い。
天井の照明が切れているためだ。
だが、その暗さに慣れれば――または照明を灯せば、部屋の美しさに気づくはずだ。
流線型の机と椅子、重厚な衣装箪笥、薄く繊細な花瓶に活けられた薔薇。
これまでの屋敷に点在していたような貴重で高価な調度品がセンス良く並べられている。
中にはかつての文明の遺産らしきものもある。
人族と蛮族との戦いの歴史の果てに、今はこの地に流れ着いているのだろうか。
壁にも絵画などが架けられているが......。
その中でとりわけ目立ち、大きな絵が一つ。
そこには赤い髪の女性が描かれており......どこかエレミアに似たところがある。
だがその風貌は見る者を彼女以上に強烈に惹きつける。
特に全てを包み込むかのように優しげな微笑みが。
「母さんの姿......絵とはいえ見るの久しぶりね......」
この絵のモデルこそ、イネス・バルカロールだ。
一目見れば、彼女がエレミアにとって......。
そしてモノマニアにとってどれほど自慢の女性だったか容易に推測できるだろう。
「......嘘」
イネスの横に飾られていたもう一つの絵画。
そのモデルは紛れもなく――エレミアであった。
今の幾分動きやすい服装とは異なり、気品ある落ち着いたドレスをした彼女。
失われた過去のエレミアであろうか。
それとも――。
* * *
キリエとシオンは気がついただろうか。
エレミアの絵の裏側に文が隠されていたことに。
もし気がつかなくとも、それはふとしたきっかけで床にひらりと落ちてくる。
手紙の中の文面について調べることはできるが......。
二人共書かれた文章を決して理解することはできなかっただろう。
知識があるものであれば、バジリスクの言葉で書かれたものだとわかるはずだ。
想像するに......これは父から娘へと遺された手紙。
* * *
エレミアがそれを読んでいたのはほんの僅かな間のことであった。
「ねえ......キリエ、シオン......」
彼女の声は震えていた。
「あたし......決めたわ」
彼女の決断は――。
「あたし、やっぱり父さんは殺せない」
全てを決めた彼女が瞳から零した涙はいったい......。
誰に向けられたものだったのであろうか。
―――――――――――――――――――――――――――――――
あんみつ@GMより
こちらエンディング用のカテゴリの移動を行いました。
最後の投稿はこちらのカテゴリにご投稿ください。
エンディングからエピローグ、そしておまけの三つのシーンを投稿しておりますが。
他の部屋の扉に比べると幾分か豪華で。
そして魔動機の監視もついた特別な部屋。
当屋敷の主モノマニアの居室である。
主が倒れているこの間に三人はこの部屋の中へ入ることにした。
>「私が空けるよ。シオン君は後ろを見ててくれ。
> ・・・無理はするなよ、まだあちこち痛むんじゃないの?」
>「毒やら魔法やら散々な目に遭いましたが、痛みは一応は大丈夫です。
> 問題は、自分が開けて、何か仕掛けがあったら作動してから気が付くと思うので、キリエさんが適任かと」
屋敷の主を倒したとはいえども、致命的な罠に引っ掛からないとは限りない。
念には念を入れて、キリエが先導して扉を開き――中へと踏み入った。
* * *
部屋の中はどんよりと薄暗い。
天井の照明が切れているためだ。
だが、その暗さに慣れれば――または照明を灯せば、部屋の美しさに気づくはずだ。
流線型の机と椅子、重厚な衣装箪笥、薄く繊細な花瓶に活けられた薔薇。
これまでの屋敷に点在していたような貴重で高価な調度品がセンス良く並べられている。
中にはかつての文明の遺産らしきものもある。
人族と蛮族との戦いの歴史の果てに、今はこの地に流れ着いているのだろうか。
壁にも絵画などが架けられているが......。
その中でとりわけ目立ち、大きな絵が一つ。
そこには赤い髪の女性が描かれており......どこかエレミアに似たところがある。
だがその風貌は見る者を彼女以上に強烈に惹きつける。
特に全てを包み込むかのように優しげな微笑みが。
「母さんの姿......絵とはいえ見るの久しぶりね......」
この絵のモデルこそ、イネス・バルカロールだ。
一目見れば、彼女がエレミアにとって......。
そしてモノマニアにとってどれほど自慢の女性だったか容易に推測できるだろう。
「......嘘」
イネスの横に飾られていたもう一つの絵画。
そのモデルは紛れもなく――エレミアであった。
今の幾分動きやすい服装とは異なり、気品ある落ち着いたドレスをした彼女。
失われた過去のエレミアであろうか。
それとも――。
* * *
キリエとシオンは気がついただろうか。
エレミアの絵の裏側に文が隠されていたことに。
もし気がつかなくとも、それはふとしたきっかけで床にひらりと落ちてくる。
手紙の中の文面について調べることはできるが......。
二人共書かれた文章を決して理解することはできなかっただろう。
知識があるものであれば、バジリスクの言葉で書かれたものだとわかるはずだ。
想像するに......これは父から娘へと遺された手紙。
* * *
エレミアがそれを読んでいたのはほんの僅かな間のことであった。
「ねえ......キリエ、シオン......」
彼女の声は震えていた。
「あたし......決めたわ」
彼女の決断は――。
「あたし、やっぱり父さんは殺せない」
全てを決めた彼女が瞳から零した涙はいったい......。
誰に向けられたものだったのであろうか。
―――――――――――――――――――――――――――――――
あんみつ@GMより
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エンディングからエピローグ、そしておまけの三つのシーンを投稿しておりますが。
お二方はお好きなところだけ拾い上げて頂ければ大丈夫です。
エレミアの絵の後ろにある手紙に気づくには探索判定が必要となります。
目標値は13。成功すれば、絵の後ろの手紙に気づけます。
また手紙は二人の知らない言語で書かれています。
見識判定で14以上の達成値を出せばバジリスクの言葉で書かれているとわかります。
エレミアはモノマニアを殺さないことに決めました。
詳細はエピローグとおまけで。
このカテゴリに記事を投稿する際は、
カテゴリ『F1-薔薇と文』にチェックを入れて投稿してください。
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エレミアの絵の後ろにある手紙に気づくには探索判定が必要となります。
目標値は13。成功すれば、絵の後ろの手紙に気づけます。
また手紙は二人の知らない言語で書かれています。
見識判定で14以上の達成値を出せばバジリスクの言葉で書かれているとわかります。
エレミアはモノマニアを殺さないことに決めました。
詳細はエピローグとおまけで。
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ある日の火竜の手羽先亭の朝。
キリエとシオンはナゴーヤに呼び出された。
二人宛に手紙が届いているようだ。
差出人の名前は――エレミア・バルカロール。
砂漠での依頼を終えてから久しぶりに聞いたことだろう。
あの時はエレミアは砂漠の家に残ることになった。
報酬相当品として宝石類を受け取って、キリエとシオンはルキスラに帰ったのだ。
* * *
『キリエ、そしてシオンへ
元気でやってるかしら?
あたしは......元気でやっています。
あの日キリエがあたしに後悔するなって言葉をかけてくれたこと。
あの日シオンがあたしにじっくり考えるといいって教えてくれたこと。
――あたしとっても感謝しているわ。
もし二人がいなければ、いろんなものを失っていたかもしれないわね。
思い出も、あたし自身も、父さんも......それに――彼も。
ううん、他にもこうして貴方たちに笑顔で手紙を書く事なんてきっとできなかった。
......本当にありがとう。
あたしは当分の間ルキスラには戻らないでずっとこっちで暮らしていくつもりだわ。
砂漠のど真ん中なんて生きていくには大変だけど。
廃墟になっていた街を探したらまだ使える魔動機が見つかったのよ。
昔の仲間たちも顔を見せて手伝ってくれているし。
次二人が来てくれる頃にはきっといい街になっているわ。
だから絶対また会いに来てよね。
シオンとキリエと会った時、あたしは自分の目を見せたでしょう?
後でバレるよりは先に教えた方がいいかと思って言ったんだけど。
――ちょっとだけなんて言われるのか怖かったの。
でも、二人共何も言わなかったでしょう?
ちょっとだけほっとしたわ。
あたし、昔は母さんが誇りで――蛮族であることだって誇りだったわ。
だけど母さんが死んで、少しずつ心が揺らいできた。
そして、父さんからティムの死を告げられたとき、この毒々しい血を呪ったわ。
どうして人間に生まれなかったのかって――母さんのことすらあと少しで嫌いになりそうだった。
そんなあたしだったから......店に依頼を出した。
父さんを殺して欲しかった――あたしを蛮族という柱に縛り付ける最大の楔を壊して欲しかった。
......そして、貴方たちに出会ったわ。
あたしは今あたしのことを誇りに思っているわ。
蛮族とか人族とかそういったものは関係なくて......。
あたし自身のことを、誇りに思っているの。
母さんの娘であるあたしを、仕方ないから父さんの娘であるあたしをね。
勿論貴方たちもあたしにとっての誇りよ。
だからこれからも頑張ってあたしのところまで話が聞こえるくらい立派な冒険者になってちょうだい。
あたしはずっと待っているわ。
またいつか会いましょう。
――追伸
貴方たちに着せた衣装だけどせっかく似合ってるんだから自分のものにしてもいいわよ。
......愛をこめて。
エレミアより』
* * *
手紙を読み終えた後もまだ日は高い。
キリエとシオンの一日がまた始まる。
―――――――――――――――――――――――――――――――
あんみつ@GMより
こちらエピローグになっております。
実質は手紙が来ているだけのシーンですが。
砂漠からの帰還は何の問題もなく完了しております。
描写されていないところはご自由に描写されても構いません(*´∀`*)
この記事に何らかのアクションを起こす記事を投稿して頂ければ解放といたします。
投稿がない場合も1週間後に強制的に解放処理を行います。
報酬については別途冒険の募集欄にまとめておきますのでご参照ください。
この度は本セッションにご参加いただきありがとうございました!
あと一個おまけを用意します。
――父から娘へ一部抜粋
エレミアよ。
これをお前が読んでいるときは――既に私を殺した後であろう。
......それでいい。
イネス亡き後、私とお前はもう昔のようには戻れない。
どちらかが折れるまでは同じ砂の上では咲けないのだから――。
* * *
お前は私を憎んでいることだろう。
それは仕方のないことだ。
私はお前に憎まれるほどのことをしたのだから。
だが、誤解しないで欲しい。
私はお前のことを憎んでいたのではない。
ただ......愛していたのだ。
イネスの面影を残すお前のことを愛していた。
他の者には決して渡したくないと願ってしまうほどに......狂おしく。
お前があの男を連れてきたとき――私は酷く混乱した。
その乱れが私のことを狂気に駆り立て......。
後はお前もよく知っている――。
* * *
私を殺したところで決してお前が全てから自由になるわけではない。
お前に流れている穢れを帯びた血からは決して逃げることはできないだろう。
だが、それでもお前は自分の血を呪うべきではない。
お前に流れているのは気高き私と同じ血なのだから。
そして何よりも我々の誇りであるイネスと同じ血なのだから。
どんな苦境に立たされようとも――お前に通う血を信じるのだ。
私は......お前が――。
* * *
最後に一つ大事な話がある。
私はお前に対して大きな嘘を吐いた。
お前があの男を連れてきた夜。
私はお前が寝静まった頃、その男を殺そうと動き出した。
ただの画家の男を殺すなど私にとっては赤子の手を捻るより容易な......はずだった。
だが、私にはその容易なことができなかった。
今でも何故できなかったのかはわからない。
憶えているのは――お前の顔が浮かんだということだけだ。
ここまで言えばわかるだろう。
お前の愛した男は今でも生きている。
その男は今――。
―――――――――――――――――――――――――――――――
あんみつ@GMより
こちらはおまけになります。
この内容は聞いていたことにしても初めて知ったことにしてもいいです。
おまけなのでそれ以上でも以下でもないです。
あれから数日。
手羽先亭に返ってきた私とシオン君はナゴーヤさんから手紙を受け取った。
差出人はエレミアから。
あの日以来、久々に名前を聞いたけど、どうやら元気にしているようでなにより。
・・・あの日、エレミアはモノマニアを、父親を殺さなかった。
戦闘の後、モノマニアの部屋を調べている最中に部屋に飾られたエレミアの肖像画の裏に隠されていた手紙を見つけた。
私には読めない文字で書かれていたけど、それを読んだエレミアが、父親を殺さないという決心をして、砂漠に一人残ることを決めた。
それが正しかったのかは分からない。
間違った選択をしてしまったかもしれない。
けど、それでいい。
多分、それがエレミアにとって一番、後悔しない選択だったと思う。
さて、当の私はというと、相変わらず手羽先亭でダラダラしたりたまにに入ってくる依頼を受けたりと、変わらない毎日を過ごしていた。
変わったと言えば、また刺青を増やしたことと、借金が少し減ったくらいか。
まだまだ、エレミアが居る砂漠の街まで名前を轟かすのは先になりそうだな・・・
まあ、それでもいい。
私もシオン君もエレミアも、人生に残された時間は沢山あるんだ。
いつか私の武勇伝と美味い酒を手土産に、こっちから会いに行ってやろう。
「お互い、頑張っていこうじゃないの。
・・・なあ、エレミア。」
そうつぶやいて、自室に掛けられた曲芸師の服を眺める。
子供用だとか言ってたけど、なんとなく愛着も湧いてきた。
後でこれ着て一発芸でも考えてみようかな。
そうして今日も変わらない1日が始まる。
砂漠への道はまだ、遠い。
------PL
おつかれさまでしたー!!
2人でバジリスク相手にすると聞いてどうしたものかと焦ってたりしましたけど何とかなる物ですね。(大体平山さんのおかげ)
RPはかなり感情移入できました。
戦闘前とかRPしててすごく楽しかったです。
いつか砂漠舞台のセッションが開かれるならまた参加したいです。
それでは、短いですがこの辺で。
前回も書きましたが平山さん、戦闘では壁役おつかれさまです。
おかげで安心して前を狙えました。ありがとうございます。
あんみつさん。複数セッション抱えている中でのGMおつかれさまです。
途中で判定間違えたり無理言ってしまったりしたのも聞き入れてくれて、本当にありがとうございました。
それでは、また次の機会があればご一緒できることを楽しみにしています。
ありがとうございました!
エレミアさんからの手紙、あちらも元気なようだ。
僕は冒険者としての目標は未だに無いが、自由を存分に楽しもう。
あの時、名目上の警戒で、部屋には入らなかったが、モノマニアさんから娘のエレミアさんへの手紙が出て来たらしい。
内容は気になったが、そこまで覗くのは野暮だろうし、少なくともエレミアさんの中の問題は一応の解決はしたらしい。
エレミアさんがあの家に残ると言った時は驚いた。問題や課題はまだまだ山積みだろうが、歩み寄る姿勢ならば問題は無いだろう。モノマニアさんは恐らく、愛情表現が不器用なので、そこは妥協と諦めは必要だろうが......
最終的な報酬は死ぬ思いした割りには安め......まあ、指輪を三つも壊せば損失が大きくなるので半分は自分のせいだが、もう少し後先を考えるべきだったが、あの場では最善だったと思いたい。
それとは別に石化を治す水を魔術師ギルドに持って行ったが、石化を治す明確な説明が出来なかったが、マナが豊富に含まれていたので、小遣いには成った。
「......うーん。人に見せられるようになるのはいつになるかな」
その小遣いで、ダンスの教本を買ってみた。折角、黒い踊り子の衣装を貰ったのだから、少し練習してみようと思い立ったのだ。
大まかには動けるが、別の動作や表現を組み込むと、他の人の意見を貰うまでも無く、駄目なのが分かる。
踊り手として、あの衣装に袖を通すのは当分先になりそうだ。
いつの日か、出会ったときに驚かせて見せようと、頭の片隅で思う。
____________________
平山です。
石化対策を一つも使わないで終わるとは思わなかった......石化の抵抗の出目が異様に高くて驚いた。
シイナさん、後衛からの射撃と回復は助かりました。おかげでシオンが死なずに済みました。
あんみつさん、GMお疲れ様でした。自分もまだまだ初心者のGMなので、勉強になりました。
そして、石化を治す水は売って、ダンスの教本を買わせてみました。一般技能のダンサーでも取ろうかな?
またご一緒することがあれば、よろしくお願いします。