2-魔女と別れて
気絶した男たちを放置して行くか。
それとも見守るか。
>「はい。では、シィノはこれで失礼します」
シィノヴィアの決断は彼らを見守ることであった。
それはゴーテルと決別することも意味していた。
「ふん、お前の勝手にするといいさ。
だが忘れるんじゃないよ......お前はこの森から出ることができない。
そして覚えておくといい。
――あたしはお前に対しても容赦はしないよ」
ゴーテルは少し不機嫌そうな顔をして森の奥へと消えた。
進んでいった方角からしてあの塔の下へと向かったのだろう。
* * *
シィノヴィアが介抱をしていると、黄金色の髪の男がゆっくりと目を覚ます。
「お、お前は......!」
傍にいた仮面をつけているシィノヴィアの姿を見て一瞬だけ怯むが。
近くにゴーテルの姿が見えないこと。
そして自分たちを介抱してくれていたことに気づいたのか。
次第に落ち着きを取り戻していく。
「あんた......一体何者なんだ。
怪しい仮面をしているし、魔女の傍に控えていたから奴の仲間だと思っていたが。
もしかして違うのか。
違うって言うならその仮面を外してくれ」
少し深呼吸をしてから男はシィノヴィアを見据える。
その瞳にはぎらついた敵意は存在していないようだ。
ただ、やはり仮面で隠していることへの不信感は拭いきれていない。
「まあ......もしあんたが顔をどうしても隠したいというなら構わない。
たぶんあんたにはあんたの事情があるだろうしな。
あんたは俺たちを救ってくれた。
それだけでも充分だ」
まあ仮面を外さなくても、介抱してくれたというだけで。
シィノヴィアのことは少なからず信頼しているようだ。
「なあ......あんたが魔女の仲間じゃないなら頼みがある。
魔女の討伐を手伝ってくれないか?
あの子を――俺たちの娘を取り返したいんだ。
俺の妻は病気でな......もしかしたら先は長くないかもしれん。
だからまだ間に合ううちに――あいつに逢わせてやりたいんだ」
この男の焦りや嘆き悲しみや怒りなどが入り混じった言葉、表情などから察するに......。
魔女狩りというものは建前であり、本当の狙いは妻と娘を再会させることだろう。
ゴーテルの語るあの子。
この男が語るあの子。
事情は複雑なようだ。
―――――――――――――――――――――――――――――――
あんみつ@GMより
ゴーテルと別れたところでカテゴリを変えました。
今度からはこちらにお願いします!
このシーンではまたちょっと可哀想なことを聞けたのでTPを1点獲得です。
他の場所についてはご自由な行動をどうぞ!
他にも何かあればご自由に行動ください(*´∀`*)
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>「ふん、お前の勝手にするといいさ。
> だが忘れるんじゃないよ......お前はこの森から出ることができない。
> そして覚えておくといい。
> ――あたしはお前に対しても容赦はしないよ」
「お疲れさまでした」
ゴーテル殿が塔へ向かうのを確認して、男性たちの手当てを始めた。
―*―*―*―
目が覚めたとたんに騒がれても面倒なので武器は取り上げ、まとめてシィノの荷物のわきに置いた。
ほとんど峰や柄でなぐったので、血はそれほど流れていない。
手当てが楽で助かった。
あざはしばらく残るかもしれないが。
>「お、お前は......!」
リーダーらしき男性が目を覚ました。
>「あんた......一体何者なんだ。
> 怪しい仮面をしているし、魔女の傍に控えていたから奴の仲間だと思っていたが。
> もしかして違うのか。
> 違うって言うならその仮面を外してくれ」
怪しい仮面......。
仮面を着けたら着けたで、けっきょくは怪しく見えるらしい。
小さくため息をついて、仮面を外した。
当然だが、着けていないほうが視界がよくなる。
「シィノはシィノ。通りすがりです。
行くあてもないのでゴーテル殿について行ったところ、あなた方に囲まれました」
>「なあ......あんたが魔女の仲間じゃないなら頼みがある。
> 魔女の討伐を手伝ってくれないか?
> あの子を――俺たちの娘を取り返したいんだ。
> 俺の妻は病気でな......もしかしたら先は長くないかもしれん。
> だからまだ間に合ううちに――あいつに逢わせてやりたいんだ」
「すぐには返事をしかねます。
シィノにとってあなた方が敵でないように、シィノがゴーテル殿に剣を向ける理由もない」
用心棒をしていたときから、シィノの"正しい"に反する依頼は受けないようにしている。
「それに今は、この文様が消えるまで、森から出られないそうです」
左手の甲を日にさらすと、それはまだ銀色に光る。
「ゴーテル殿は『約束を守ってもらっただけ』と言っていました。
あなたとゴーテル殿は何を約束しましたか」
――――PL――――
ごめんみんな、ゴーテルばあさんとお別れしました(事後報告
この男性をはじめとする村人たちはゴーテルの敵。
ラプンツェル連れ出そうとしてる王子もゴーテルの敵になるのかな。
シィノがあのままゴーテルについて行ってたら、それはそれでおもしろそうだったんですけどね。
なんか合流が遠のいた気がしますが、そっちは3人だからなんとかなりますよね!
物理的に頼りになるのはラキアスだけですが!
王子さまも戦えるのかな?
アルフは魔法ダメージたたき出せるし、回復&参謀のグレースもいるし、心配はしてない。
仮面を外し素顔を晒したシィノヴィアに対して。
娘を取り返すために共に戦ってくれと語る男。
>「すぐには返事をしかねます。
> シィノにとってあなた方が敵でないように、シィノがゴーテル殿に剣を向ける理由もない」
けれどシィノヴィアは、是とも非とも言わなかった。
彼女には彼女なりの信念というものがあるのだ。
>「ゴーテル殿は『約束を守ってもらっただけ』と言っていました。
> あなたとゴーテル殿は何を約束しましたか」
だからこそ、シィノヴィアは知る必要がある。
己が何をすべきかを知る為に。
何が正しいのかを見極める為に。
「話はな......今から十五年くらい前のことだ」
リーダーの男はゆっくりとその口を開いた。
* * *
男が話した内容はこうだ。
二人の愛の証である子供を授かって幸せになれるはずであった二人。
しかし、日に日に妻は不自然に衰えていき、親子揃って命の灯火が消えかけていた。
そんな妻が口にした言葉がこれだ。
「あのノヂシャを......あのノヂシャが食べられなければ私は死にそうだわ」
ノヂシャ――またの名をラプンツェル。
妻はいつの間にか魔女のノヂシャを口に入れてしまっていたのだ。
それ以来彼女はノヂシャの虜となり、他の食べ物では満足できなくなった。
日に日にやせ細っていく妻の姿に見兼ねた男は......。
魔女の庭からノヂシャをこっそり摘み取ろうとした。
しかし、そこを見つかってしまったのだ。
あの恐ろしき魔女ゴーテルに。
――彼女は言った。
「お前の妻のために好きなだけ摘んでいくがいいさ。
だけど、その代わりお前たちの子供は私のものだ」
これこそが魔女と男たちとの間の――約束。
* * *
「俺の行いが悪くなかったとは言わない。
だが、あの子を失ってから俺もあいつもほとんど笑わなくなった。
ついにあいつは心だけでなく体も重大な病に蝕まれちまった。
俺たちはここまで虐げれられなきゃいけないのか?
――あの魔女によって?」
男はもう激昂したりはしない。
静かに......静かに怒っていた。
「俺はそうは思わない――思いたくなかった。
そもそも奴は魔女なんだ。
魔女を討ち滅ぼして何が悪い!」
わからないことへの恐怖、そして偏見。
個人的な恨みと合わさったその負の感情が村の男たちを駆り立てたのだろう。
リーダー以外の男はまだ目覚めない。
しかし彼らもゴーテルを忌んでいることは想像に難くない。
こんな彼らやゴーテルにシィノヴィアがどんな感情を抱くか。
それは彼女の自由であろう。
けれど全てのことから自由になれたわけではない。
シィノヴィアはあの野草を口にした時から。
この物語に飛び込んできた時から巻き込まれているのだ。
――突如森に響く轟音。
それはまるで神の怒りを示す雷が落ちたかのようで。
聞こえてきた方角は、塔の方であろうか。
ぽつりぽつり。
シィノヴィアの体に水滴が落ちる感覚。
一雨、いや嵐が起きるかもしれない。
やり過ごすためには動くしかないだろうか。
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あんみつ@GMより
シィノヴィア進行です!
さらに踏み込んだ話を聞けたのでTPを1点獲得できます。
あとは説明のシーンですね。
シイノヴィアは次の行動を決定してください。
具体的なものは以下の3つです。
・塔に向かう
・この場を去る
・この場に留まる
他に何かやりたいことがございましたらそちらでも(*´∀`*)
なるほど、妻を救うために子を差し出したわけだ。
悪いとは言わない。
そうしなければ、子だけでなく妻も失っていたかもしれないのだから。
ただ、男性がゴーテル殿の条件をのんだのも事実。
それがどれだけ不本意なものであろうとも。
男性自身もそれをわかっているからこそ、ゴーテル殿を恨む以外に気持ちのやり場がないのだろう。
去年の初夏、蛮族の親子を見送ったことを思い出した。
親が子を思う気持ちというのは、種族にかかわらず同じものだろうか。
シィノは親を知らないし、それにこだわったこともない。
はじめから知らなければ、知らないなりに育つものだ。
だが、所在がわかっていて、会いたいと望まれている。
この親子が会ってはならない道理はないだろう。
子が、会うことを望むかは別として。
「あなたが子に会えるよう、協力しましょう」
ゴーテル殿を倒すか否かは、またそのとき考える。
ゴーテル殿が何を思って子を欲したのかは知れないが、交わしたいくつかの言葉からは、"あの子"に対する害意は感じられなかったから。
シィノひとりで忍ぶのは簡単だが、この方をつれて行くとなると、多少制限される。
どうするか、と考えているところへ、大きな、大きな音がした。
大気が揺れて、腹に響く。
塔の――ゴーテル殿の向かった方角。
「シィノは行きます。
あなたは、お仲間をつれて安全な場所へ。
では、また」
簡単に言い残して、駆けだした。
――――PL――――
男性には残るよう言ってみましたが、ついて来るなら適当に速度を合せます。
>「あなたが子に会えるよう、協力しましょう」
シィノヴィアは男たちに協力する旨を告げた。
「そうか!
あんたが仲間になってくれるなら心強い。
ただまあ......その目は魔女を殺すって決めたわけじゃないんだろう。
俺も小さい集団とは言え、リーダーだからな。
人の気持ちはなんとなくわかるのさ」
男の表情はそれでも嬉しそうであった。
>「シィノは行きます。
> あなたは、お仲間をつれて安全な場所へ。
> では、また」
そんな男と仲間たちを残し。
シィノヴィアは塔の見える方へと向かおうとする。
それはゴーテルの向かった激しい轟音の聞こえた場所。
「わかった......今戦いに行って無謀なだけだろう。
もしあんたが森から抜け出せたなら、集落の北にある家を訪ねてくれ。
見つからないようなら、キャベツの家はどこにあるか聞くといい。
――その家が俺の家だ」
黄金色の髪をした男――キャベツは仲間たちを抱えながら、森の外へと向かっていく。
それはシィノヴィアの目指す方角とは反対側。
彼らの背中は段々と小さくなっていった。
* * *
次第に雨の強さが増していく。
もし対策を施していない場合、シィノヴィアは濡れ鼠のようだったろう。
少し下りの斜面になっている森の道を進んだ先。
そこに――大きな塔が存在していた。
上の方はちょっと顔を上げなければ見れないだろう。
塔の麓に、黒い影が雨に打たれている。
その正体は魔女ゴーテルだった。
突然、彼女はゆっくりと振り返ってきた。
そして素早い動きでシィノヴィアのすぐ傍まで詰め寄ってくる。
「お前......まさかあの子をどこかにやったんじゃないだろうね?」
ゴーテルの顔は激しい怒りで歪んでいた。
瞳はじっとり潤んでいる。
「まあお前の仕業じゃないだろうさ。
奴らだ......さっきの奴らに他に仲間がいたんだ。
許せることじゃないね。
――全て殺してでもあの子を取り返してやるさ」
ゴーテルはシィノヴィアへの興味をあっという間に失ったかのように。
彼女の元から離れ、森の奥へと消えていこうとする。
「......ああ、そうだ。
お前も信用できないからね。
少しこの辺に留まってもらうことにするよ」
幾らかゴーテルがその歩みを進ませたかというところで。
シィノヴィアの体にとてつもない激痛が走る。
見れば――例の呪いの文様が赤く染まっているではないか。
酷い痛みに体がうまく動かない。
「これは私からの情けだよ。
もし止めに来ようというのなら、お前の息の根も止めることになるかもしれない」
刺があるがどこか気遣いのある言葉。
それだけを塔の麓に残してゴーテルは森の中へと消えた。
――時が過ぎれば過ぎるほど、呪いによるその痛みは弱まっていく。
ある程度まで行けば十分我慢できる範囲に収まるだろう。
―――――――――――――――――――――――――――――――
あんみつ@GMより
シィノヴィア進行です。
【NPC:男性】に【キャベツ】を登録しておきます。
キャベツは仲間を連れて拠点へと帰りました。
シィノヴィアは精神抵抗判定をどうぞ。目標値は14/16/19の3段階です。
19以上に至れば、ゴーテルが見えなくなってすぐに動けるようになります。
17以上になれば、ゴーテルが見えなくなってから少しすれば動けるようになります。
14以上であれば、ゴーテルがいなくなっても当分動くことはできません。
14未満になった場合は次のシーンまで一切の動きが取れません。
呪いに対する抵抗判定を振ってから、お好きな行動をどうぞ!
雨が強い。
マントにフードがついているが、走ればすぐに脱げるだろうから、かぶるのは諦めた。
近づいた塔は、遠目に見ていたより大きなもの。
その下に、ゴーテル殿がいる。
ふり返ったその顔は怒りを隠そうともせず、シィノを責めた。
>「お前......まさかあの子をどこかにやったんじゃないだろうね?」
意味がわからない。
返事をする前に、ゴーテル殿が踵を返す。
>「まあお前の仕業じゃないだろうさ。
> 奴らだ......さっきの奴らに他に仲間がいたんだ。
> 許せることじゃないね。
> ――全て殺してでもあの子を取り返してやるさ」
よくない。
むき出しの殺気に、肌が粟立つ。
落ち着けと、声をかけようとした。
>「......ああ、そうだ。
> お前も信用できないからね。
> 少しこの辺に留まってもらうことにするよ」
「なにを――」
最後まで言うことは叶わなかった。
代わりに、声にならない悲鳴が漏れた。
思わず膝をつく。
上体を支えるためについた左手の甲に、文様が毒々しく浮かんでいた。
>「これは私からの情けだよ。
> もし止めに来ようというのなら、お前の息の根も止めることになるかもしれない」
ようやくそれだけを聞き取った。
情け? よく言ったものだ。
あとで後悔しても知らない。
この呪い、森から出られないだけならまだしも、やはりロクでもない代物だった。
そうやって、力を振るうことしか知らないから恐れられるのだ。
恨まれ、疎ましがられるのだ。
うずくまり、痛みに歯を食いしばる。
どれだけそうしていただろうか。
雨にうたれ続けた体は、すっかり冷えた。
痛みは徐々に弱まるが、それに反して怒り――そう、怒りは、増すばかりだった。
シィノは、怒っている。
――――PL――――
実はシィノ怒るの初めて。
ついでにPLもおこ。
ダイスくっそ!
どうせなら! 1ゾロれと! 何度言ったら!!!
21:13:37 紫乃@シィノ ≫ 呪い抵抗 2d6+11 <Dice:2D6[2,1]+11=14>
シィノヴィアは自らを襲う呪いの痛みに耐えるのに時間がかかった。
魔女の姿は既になく、塔の麓で雨に打たれる彼女がいるだけだ。
ようやく動けるようになった彼女に追いつくことは難しい......。
――雨?
雨に濡れた地面はもちろんぬかるんでいる。
先ほどゴーテルが立っていた場所を見れば。
少し水分でぐにゃりとなりながらも足跡のようなものが残っていた。
長い時間をかければ水の勢いで崩されてしまうかもしれない。
けれど、まだ間に合うかもしれない。
雨雲と森のコンビネーションががもたらす暗さだって。
シィノヴィアにとっては些細なこと。
ゴーテルの痕跡を見落とさず追っていけば――彼女のもとまでたどり着けるだろうか。
―――――――――――――――――――――――――――――――
あんみつ@GMより
シィノヴィア進行です。
割と短めですが大事なポイントですのでこの辺で。
シィノヴィアは足跡追跡判定を試みることができます。目標値は10/13。
13以上になれば最後まで足跡を追いかけられます。
10以上になれば途中までたどりつけます。
10以下になった場合は全然追いかけることができず、塔まで戻ってきます。
それぞれによってイベントが変わる大事なポイントです。
ようやく痛みが治まった。
深呼吸して、立ちあがる。
だいぶん時間をくってしまった。
止まっている場合ではない。
シィノは約束した。
子に会えるように助けると。
残されているのは、ぬかるみについた足跡だけ。
迷わず走りだす。
――――PL――――
21:13:23 紫乃@シィノ ≫ 足跡追跡 2d6+8 <Dice:2D6[5,5]+8=18>